公益財団法人 大原記念労働科学研究所
公益財団法人
大原記念労働科学研究所
The Ohara Memorial Institute for
Science of Labour

慢性疲労研究センター

センターの概要

慢性疲労の研究・対策の提言や、労研式疲労リスクマネジメントシステム(R-FRMS)の提供、疲労の科学に立脚した労働安全、健康組織、ワークーライフ・マネジメント講習を行っております。

研究者

Ⅰ.疲労は過労を防ぐ生体の防御作用です

世間一般では「疲労」が悪者にされていますが,働く人の疲労の科学では,疲労が問題だとは考えていません。その理由は,疲労は必ず回復するという性質を持つからです。疲労の時間の経過を追って調べますと,急性疲労,慢性疲労に分けられますが,これらの疲労には,問題となるような「過労」の姿があります。ですから,疲労は過労を防ぐ生体の防御作用と言えるのです。しかし実は,その過労であっても,適切な回復機会があるならば,かならず回復するという性質があります。働く人の心身は,ホメオスタシス機構と生体リズム機構によって,二重にも三重にも守られています。もし回復しない疲労や過労があるとするならば,それは疲労現象ではなく,もはや疾病ということになります。

 

Ⅱ.現代人の疲労の多くは慢性疲労と言われます

現代人の疲労の多くは慢性疲労と言われます。慢性疲労とは,睡眠でも回復しづらい疲労のことです。どうして,そのような疲労が問題となっているのでしょうか。それは,これまでと違って働く場面にパソコンなどのIT機器が入り,長時間過密労働,24時間労働,感情労働という新しい特徴が生じて,それらに対して有効な対策が講じられていないためです。

 

1.長時間過密労働

パソコン作業は,負荷としては決して大変なものではありません。でも1つ1つの負荷が軽いために,ついつい手休めなどの疲労が回復する機会を見逃してしまうのです。そのため,仕事が長時間になってしまい,それも単位時間あたりに換算しますと過密な働き方になってしまうのです。

2.24時間労働

また働く場面にパソコンなどのIT機器が入りますとどこでも仕事ができるようになります。ということは,昼でも夜でも仕事ができることになります。そのため,人間に本来備わっている昼間に働き,夜間に休息する生体リズムに反した時刻帯に働くようになってしまうのです。

3.感情労働

さらには,IT化にともなって大企業と中小企業,都市と地方の差が小さくなり,これまで働くことが少なかった女性,老人や障碍者の就業機会が大きくなってきています。とろころが,いろいろな人が働くことは,労働市場を広げ,今度はモノが売れない状況を作り出すことになります。そのため新しい働き方として,これまでの身体(筋労働),精神(記憶を用いる労働)に加えて自分の感情をも売ることを強いられることになります。つまりしたくないのに,ニコニコしなければいけない状況も多くなり,感情的なバランスが崩れてしまいます。

Ⅲ.慢性疲労研究センターは働く人が慢性疲労にならないようにお手伝いします

慢性疲労研究センターは,当研究所が創立以来培ってきた働く人の疲労研究の歴史を踏まえて労働組織,労働者個人の疲労を評価し,必要と判定されれば対策を講じます。

1.労研式疲労マネジメントシステムを行います

航空業界が行っているFRMS(Fatigue Risk Management System)をベースにした,現場で使える労研式疲労マネジメントシステム(Roken-Fatigue Risk Management System;R-FRMS)を提供します。R-FRMSは組織,個人の安全性だけでなく,健康性,生活性の点から,労研が設立90有余年の疲労研究の歴史で培った科学的知見によって作られたテーラーメイド・システムです。

R-FRMSの特徴は,現場で生じる疲労を事業者,労働者に加えて労働科学者が加わることによって,科学的知見に立った疲労管理ができることです。

R-FRMS概念図

ステージ0.疲労の科学の知見を学習します

当研究所では,1921年の設立以来,労働者の疲労に関する知見を多く持っています。それらの知見を事業所に水準にしたがって,学習していただくことができます。たとえば,夜勤・交代勤務職場では,夜勤・交代勤務検定である「シフト・ワークチャレンジ」の実施についてご好評をいただいております。お気軽に相談ください。

ステージ1.長期的疲労測定を行います

慢性疲労状態は,量的な疲労の亢進状態であると同時に,疲労が質的に変化した状態です。したがって,長期的に1ヶ月単位で疲労を測定する必要があります。

疲労は,ストレスを通して生じます。そこで,長期的疲労の背景には,身体的,精神的な過剰ストレスが生じていることになります。それを時間に沿って調査します。

ステージ2.疲労の回復過程を捉えます

慢性疲労は睡眠によって回復しづらい疲労なため,睡眠評価を行って適切な対策を講じます。

ステージ3-1.疲労カウンセリングを実施します

疲労は生理的なストレスを基礎とする心身現象ですが,きわめて心理的な現象であります。したがって個人的な疲労対策には疲労カウンセリングが有効です。疲労カンセリングによって「職業適性」が判別できます。職業適性は,職業適性traitと職業適性stateの関係で生じます。それらを捉え,職場診断を通じた疲労カウンセリングを行います。

ステージ3-2.健康生成論に立脚した対策を講じます

同じ組織に従事していても疲労を感じる人と感じない人は存在するものです。その時,疲労を感じない人こそ重要です。疲労を感じない人の生活行動様式を明らかにすることで,組織全体の疲労対策を行います。

R-FRMS実施の流れ