公益財団法人 大原記念労働科学研究所
公益財団法人
大原記念労働科学研究所
The Ohara Memorial Institute for
Science of Labour

安全文化向上プログラム

あなたの組織の安全文化は醸成されていますか?

昨今、日本において発生している産業事故は、技術的な問題や個人の問題を超えて、組織システムの不具合にその主因を求めるべきケースが少なくありません。そのため、今日、組織の「安全文化」を醸成することが、ひときわ重要視されています。しかし、対策としての「安全文化」だけでは曖昧で、どういう方策なのかか、何をすれば文化が向上するのか分かり難いという声をよく聞きます。
そこで、安全文化を「見える化」し、その文化を向上させるプログラムを開発しました。

プログラムの詳細については、こちら(PDFファイル;513KB)
プログラムの実践例については、こちら(日本応用心理学会第78回大会(2011)ポスター;PDFファイル;153KB)

安全文化を評価します《安全文化評価ツール;SCAT(Safety Culture Assessment Tool)の略称》

安全文化評価ツールは質問紙調査形式です。

  • 安全を大きく10の側面(全36項目)に分類しています。
  • 自己を評価する一般のアンケート方式とは異なり、下左図のような方式で相互に評価をします。
  • 安全文化の評価指標の1つは、「評定値得点(下右図の横軸)」で、安全の仕組みや体制・活動に積極的に関わっているかを示します。
  • もう1つの評価は「共有性得点(下右図の縦軸)」です。管理者、現場責任者、作業者それぞれの自己評価、他者評価が一致している度合いを示します。
  • 「安全の10の側面・36の質問項目結果がどこに位置するのか」を見れば、安全文化の現状が把握できます。
評価構造.jpg           安全文化の評価方法.jpg

 

評価の一例

評価MAP(下左図)から、

  • 評価が低く(図左側)、評価が不一致傾向(図下側)のge型に多くの項目が属している組織です。
  • 特に、ボトムアップ経路(管理者は現場の意見を吸い上げているか)の指標はは、情報を吸い上げていないことを現しています。

相互評価(下右図)から、

  • 管理者に対するボトムアップ経路は、自己評価は50(全国平均)を上回るが、現場責任者、作業者からは厳しい評価になっている。
  • つまり、管理者は「自分達は現場の意見を吸い上げている」と評価している。
  • 一方、現場責任者、作業者は「管理者は自分たちの意見を吸い上げてくれていない」と評価している。

これらの結果から、この組織のボトムアップに関する仕組みが機能していないことが読み取れます。

評価MAP.jpg           相互評価.jpg

 

豊富な実績

原子力業界のデータ取得からスタートしましたが、2000年以降、様々な業種に展開し、4万強(2016.1.1時点)のデータを有しております。
これらのデータを基準(偏差値50)にして(これを全国平均と呼んでいます)、あなたの企業・組織の安全文化を評価いたします。

scat対象数.jpg

新たな安全文化評価の取り組み - 組織間(発注、受注、協力会社)評価 -

業務の一部をより高い技術力を有している専門企業に委託・外注する構造を採る企業が増加しています。したがって、安全文化の醸成には発注元だけでなく、受注、協力会社が一体となって取り組むことが重要視されています。このような情勢に合わせて、組織間の安全文化評価にも取り組んでおります。

  • 組織間の安全文化評価ツールも質問紙調査形式です。
  • 質問内容は全12項目(安全文化評価ツールの各側面から抽出)です。
  • 下左図のように発注者、受注者、協力会社で相互に評価します。
  • 結果は安全文化評価と同様、1)評定値得点、2)共有性得点で図示します。
評価構造組織間.jpg           組織間調査結果例.jpg

安全文化の課題を具体化・対策の方向性を提案します

評価ツール(SCAT)で現状の「安全文化レベル」が把握されたら、次は対策のための問題解決です。
なぜ、

  • 従業員が安全の仕組みや体制・活動に積極的に関わっていないのか
  • 管理者・現場責任者・作業者(発注者・受注者・協力会社)の自己評価と他者評価がなぜ一致しないのか

を明確にする必要があります。
そこで、システム安全研究グループでは職場の階層毎にヒアリング調査を実施し、結果の背景要因を探り、対策の方向性を提言します。

安全文化向上に向けて

我々のサポートは安全文化を診断するだけに留まりません。対策提案の後、実際に活動を実施される際のサポートも行っております。なぜならば、対策を「お任せ」すると、たちまちの内に「古い組織文化」が頭をもたげて来て、新しい活動を阻害してしまうからです。

PDCAサイクルのサポート

PDCAサイクルが自分達で回わせるようにするために活動開始後もサポートするわけです。
現場層、管理層の双方を交えて共に活動を回していく仕組みをサポートしています。その具体的な方策のステップが以下です。

  1. Plan:対策を具体的な案に立案するプロセスを支援
  2. Do:対策実行の方法やツール、さらにはそのノウハウについて技術支援
  3. Check:対策実行中に進捗のチェック(進捗具合)を行います(いわば監査です)。
  4. Act:進捗具合によって対策方針の修正を支援します(多くの場合計画通りにはゆきません)。
  5. 最後に、どんな小さな事柄でもゴールに達するよう支援します。

「達成感」を持つことが重要です。この「達成感」が生まれますと、組織全体のメンバーに自信が生まれ、次の活動にスムースに取り組めます(これを我々は「副次効果」と呼んでいます)。

プログラムの紹介.jpg

安全文化醸成活動の評価

安全文化評価ツールを再度、実施して頂き、活動前の結果と比較することで、実行した対策の有効性検討ができます。

  1. 文化が醸成されたのか?
    管理者・現場責任者・作業者の評価が一致したのか、離れたのか(下図の上側に移動したのか、下側に移動したのか)を検証します。
  2. より安全になっているのか?
    管理者、現場責任者、作業者の各評価が高くなったのか、低くなったのか(下図の右側に移動したのか、左側に移動したのか)を検討材料とします。

    安全文化醸成活動の評価.jpg

  3. このような取り組みを、いわば「定点観測」のように(例えば、2年毎、あるいは特定のプロジェクトの前後に)行えば、組織の成長の度合いを常にチェックする事が出来ます。最も注意したいのは、「風化作用」です。安全活動の「マンネリ化」にはどこの企業も苦しんでいるのではないでしょうか・・・。