産業安全エキスパート養成コースの再起動
大原記念労働科学研究所が実施している人材育成事業の一つに「産業安全保健エキスパート養成コース」がある。このコースは産業現場における安全、健康、職場環境にかかわる課題を的確に把握し、問題解決に導く能力を持つとともに経営トップなどに提言できる力を持つ、安全衛生を推進する中核人材を育成するコースである。20年にわたる歴史を持ち、コースの修了者は248名を数える。
産業安全エキスパート養成コースは2005年に科学技術振興機構(JST)による競争的資金を使って始まった。2009年まで5年間続き、206名が受講した。続いて株式会社クラレより支援をいただき、2011年から2015年まで実施し32名が受講した。そして2019年には労働科学研究所の独自事業として実施し、10名が受講した。時あたかもコロナパンデミックに遭遇し対面による教育が難しくなったこともあり、残念ながら事業は中断を余儀なくされ今日に至っている。
この間エキスパート養成コースの受講者の中から自発的にOB会であるエキスパートネットワークの会が生まれ、エキスパートの継続的な能力アップのため様々な活動を行っており、エキスパート養成コースの運営にも支援をいただいている。
このコースの特徴は、会社などの組織の中では安全・健康・職場環境のセクションが縦割りになりがちなところ、複合的な視点(三位一体)と実践力の獲得を目指し、グループワークを取り入れ、現場実習とワークショップを行うところにある。
2019年に労働科学研究所の独自事業としてエキスパート養成コースに取り組んだ経験からみて、現在の研究所の事務処理能力では事業の企画から広報宣伝、集客、運営まですべてを一気通貫で研究所が担うことには無理があることを痛感した。そこで、労働科学研究所はコンテンツ作成や講師の選定・派遣等得意分野に集中し、広報宣伝や集客などはその分野に実績を持つ民間企業の力を借りるといった形の協業によってエキスパート養成コースの再起動が図れないかを検討中である。
産業現場における安全・健康・職場環境に問題があれば企業の経営リスクに直結する時代になった。安全衛生を推進する中核人材を育成するこのコースは労働科学研究所しかできないプログラムであり、知恵を絞って再起動させたい。(了)。
(2026年4月 理事長 浜野潤)

