公益財団法人 大原記念労働科学研究所
公益財団法人
大原記念労働科学研究所
The Ohara Memorial Institute for
Science of Labour

「働き方の未来を50人が読む」調査

 創立100周年の記念事業として、コロナ禍の2021年度にスタートした「働き方の未来を50人が読む」調査は4年目を迎えました。この調査はトピックス調査と定点観測調査から構成されています。トピックス調査では第1回、第2回では「リモートワーク」を、第3回では「AIの普及」を取り上げ、今回は「人手不足・人材不足」をテーマとして有識者のご意見をいただきました。今回も調査結果は直近の「労働の科学」誌で公開し、維持会サロンでも議論しました。
 この調査の狙いは、①専門家が集まり政策提言が可能なフォーラムを形成する、②現場の知見を集め広く発信する、③専門家の先見力を引き出す、の3点にあります。本稿では調査の狙いに即して、これまでの4回の調査を振り返って成果と課題を考えます。

 「専門家を集める」については、安全衛生・人間工学・心理学などの労働科学になじみの深い専門家はもちろんのこと法律・経済・経営や情報など多用な分野から素晴らしい有識者の皆様に参加していただくことができました。回答者にとっては面倒な調査にもかかわらずほとんどの方が「世の中のお役に立つのなら」と労をいとわず参加していただけました。本当にありがたいことだと思います。この調査では労働科学研究所の研究に対するご注文やご意見も書いていただいていますが、労働科学研究所に対する期待の高さとともに我々の研究の今後の方向性を示唆するご意見ばかりであり、回答を読むたびに身の引き締まる思いがします。

 「現場の知見を活かす」については、労働科学研究所を支えてくださっている維持会会員を中心に、労働現場の実態に精通し、人事・労務、総務、安全衛生に携わっておられる実務家の方にご協力をお願いしています。毎回現場の実態を知る方ならではの見方を教えていただき、各分野の研究者のご意見と合わせこの調査のユニークさを示しています。調査結果を読み解き読者の皆様の執務の参考に供するだけでなく、調査の企画段階から維持会と労働科学研究所のコラボレーションを進めていけば、いずれはフォーラムとしてさらに充実した機能を発揮できるようになるのではないかと期待しています。

 「専門家の先見性」については、毎回の「トピックス調査」のみならず「定点観測調査」においても大いに発揮されています。「定点観測」も年を重ね、「1年後」、「5年後」の予測値と実績値のデータも積み上がってきました。もとより各分野の専門家の意見が一致する項目もあれば分かれる項目もあります。我々がこれらのデータをわかりやすく分析してお示しすることにより、専門家の先見力を読者にも広く味わっていただけるのではないかと考えています。

 「働き方の未来を50人が読む」調査は毎回有識者の皆さまのご意見を伺っていますが、有識者の皆さまのポテンシャルをいかに引き出せるか労働科学研究所の分析能力や問題提起力が試される場でもあります。労働科学研究所の研究を基盤として、有識者の皆さまのお力を借りて将来何らかの政策提言に結びついていくようなフォーラムにしていければと考えています。

(2025年5月 理事長 浜野潤)