公益財団法人 大原記念労働科学研究所
公益財団法人
大原記念労働科学研究所
The Ohara Memorial Institute for
Science of Labour

労研デジタルアーカイブ 現状と課題

労働科学研究所には100年を超える研究活動により、我が国における労働の歩みの記録、医学・生理学・心理学等の学際的な調査研究によって得られたデータなど膨大な資料が蓄積されており、これらは現代日本社会における労働を評価し、未来の日本社会における労働を展望する際の学術的な基盤となるものである。

労研では、2011年度から2020年度にかけて文部科学省特定奨励費により、資料のデジタルアーカイブ化と活用を進めてきた。現在、学術誌『労働科学』の3,4375論文、普及誌『労働の科学』631号を「労研デジタルアーカイブ」に収納しており、誰でも利用できる知の貯蔵庫として活用を図るとともに、デジタル化した資料をデータベース化することにより目的とする資料を正確かつ容易に取り出せるようにすることで、労働科学の蓄積をこれからの知的活動に生かすことのできる環境を整備してきた。

「労研デジタルアーカイブ」の活用の例として、『労働の科学』誌に掲載を続けている「労研アーカイブを読む」を挙げることができる。これは現在直面する社会問題に関連する労働科学の過去の論文を現代的に解釈し、解説するものであり、労研の研究者、外部研究者、企業の安全衛生専門家など多様な著者による労作揃いである。単に昔の論文を紹介するのではなく、現在の問題から過去を調べる、過去の論文が現在の問題にどう結びつくかを考察するものであり、現在115本の記事が掲載されている。「労研アーカイブを読む」の記事には働き方の未来を示唆するものも少なくない。

労研デジタルアーカイブの整備活用事業は、コロナパンデミックに伴い2021年度から3年間中断を余儀なくされたが、2024年度からは文部科学省特定奨励費を獲得し、向こう3年間にわたって活動を再開することになった。活動内容としては、総合科学である労働科学の多様性を表わすシリーズである『労働科学叢書』全111巻等のデジタル化を計画している。

「労研デジタルアーカイブ」の更なる活用にむけては、アーカイブ掲載論文の英語化が乗り越えなくてはならない大きな課題である。

ご関心をお持ちの方は「労研デジタルアーカイブ」を是非ご覧ください。
(本文の内容は第57回公益財団法人大原記念労働科学研究所理事会における北島洋樹副所長によるプレゼンテーション「日本人の労働と生活の歴史における労働科学的学術記録の「総合知」としての展開」によるものです。)

(2024年5月 理事長 浜野潤)