公益財団法人 大原記念労働科学研究所
公益財団法人
大原記念労働科学研究所
The Ohara Memorial Institute for
Science of Labour

労働科学の動き、新宿百人町から(第1回)

坂本恒夫
(大原記念労働科学研究所所長)

 大原記念労働科学研究所は、2019年4月1日、渋谷区千駄ヶ谷から新宿区百人町へ移転した。桜美林大学新宿キャンパスのオープンに伴い、その一角に引っ越してきたのである。ローケーションも素晴らしいが、研究所のスペースも広くなった。

 新宿百人町は、江戸時代には伊賀組百人鉄砲隊の屋敷があったこともあり、この町名になった。もともとここは、昔からつつじの花の名所で、日比谷公園ができてつつじが移されるまでは、花見電車が繰り出すほどの賑わいを見せていた。現在もかなりのつつじが残っていて、桜の花の季節の後、美しい姿をみせてくれている。そう言えば新宿区の花はつつじである。11月に入り、中央病院通りは並木の銀杏がかなり色づいてきた。新宿百人町は四季おりおりの風情があり、武蔵野の入り口の面影を現在も残している。

 さて、研究所も移転して心機一転スタッフも張り切っているが、労働科学の分野にも新しい風が吹いてきた。安倍内閣が「働き方改革」を掲げ、労働生産性の向上を重要政策の一つにしたからである。日本の労働生産性は国際的なランキングで27位である。1位のルクセンブルグ、2位のノルウェイ、3位のアメリカにはかなわなくても、せめて上位10位ぐらいにはなってもらいたい。この働き方改革の「サービス残業を無くす」、「有給休暇の積極的消化」などは、20代、30代の若手社員に好評で、安倍内閣支持率の下支えになっていると言う。

 また、アメリカでは、大企業のトップ181人でつくるグランドテーブルでJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは、これまでの株主第一を見直し、従業員配慮を言い出した。株主価値経営を標榜してきたアメリカの代表的経営者の発言とは聴く耳を疑いたくなるが、忍び寄る資本主義社会の危機とも読み取れる。格差と貧困が無視できなくなってきたのではという話もある。

 大原記念労働科学研究所は長きにわたって「労働の安全と衛生」の向上について取り組んできた。日本や欧米の動きは間違いなく研究所には追い風である。
しかし、たとえ風が向かい風になっても、働く人々の安全と安心、生き生きと働くことが出来る環境を求めて、日々研究に精進していきたい。立冬を迎え、新宿百人町の風は少し冷たくなってきたが、われわれスタッフの意気込みは少しも変わることはない。

(2019.11.8)