公益財団法人 大原記念労働科学研究所
公益財団法人
大原記念労働科学研究所
The Ohara Memorial Institute for
Science of Labour

運営方針

当研究所は、産業界の健全な発展、中でも働く全ての人の安全と健康、や「働きがい」のある人間らしい仕事の在り方を研究の核としています。この目的のために、学術・技術応用分野におけるニーズを的確に捉え、基礎データの把握、解決ツールの開発、対策系の立案等々を継続して行い、安全・安心で、豊かな労働生活への貢献を目指しています。

具体的には、創立時より、生理学、心理学、医学、衛生学等の方法によって労働に関する基礎的な研究と現場への成果普及に取り組んで来ました。労働に起因する生体負担を生理学・心理学を用いて心身機能評価によって捉えることを原点とし、時代の進展と労働の多様化と軌を一にして領域を拡大してまいりました。

方法論的には、諸関連科学の方法を駆使し、(1)現場における労働者個人のデータ収集を基本とする調査研究の実施、(2)複数分野の研究者による学際的研究連携、(3)職場で役に立つ実践的・具体的な対策提言、等々を推進し高い評価を得ています。

このような研究と実践を、今日では「安全」、「健康」、「職場環境」という三位一体の取組として、以下の5事業において推進しています。

Ⅰ.教育研修事業

産業安全保健を担う、各企業の担当者を主な対象として、最新の学術的知見および、現場における実践的知識や技術の向上を図り、企業内における産業安全保健の専門家の育成を目指しています。

1.産業安全保健エキスパート養成講習

企業の安全環境保健の中核を担う人材を主たる対象として、講義とグループワーク、ケーススタディ、実習、演習などの形式で構成した体系的な教育講座を実施し、実務的スタッフの育成を図っています。

2.労働科学セミナー

産業安全保健分野を中心として、労働科学、ヒューマンファクター、人間工学、社会科学、産業医学などに関するセミナーを年6回開催しています。また、産業界の要請に呼応して特別セミナーも随時企画・開催しています。

 

Ⅱ.学術調査研究事業

日々刻々と変化する働く人々を取り巻く環境変化に対応して、産業界・労働界との連携を基盤に、現場の実態把握・実施された改善策の効果検証などを主たる目的としたフィールド調査や実験を行なっています。研究活動は大きく以下の四つに整理されています。

  1. 安全・安心・快適を確保するための人と環境のインタラクション
  2. 健康とワーク・ライフ・バランス
  3. リスクアセスメント・リスクマネジメント
  4. 教育・人材育成

 

「安全・安心・快適を確保するための人と環境のインタラクション(安全)」

これまで例えば「機器・装置のユーザビリティ」や「作業場の安全対策」などと呼ばれる研究課題について、共通する要素「人と環境の相互作用」に着目し、医学・心理学・生理学、工学など、労働科学を構成する様々な学術分野の連携による学際的なアプローチを基に、現場から提起される課題の総合的な理解と、それに対する包括的な対策の提案を目指した研究です。

「健康とワーク・ライフ・バランス(健康)」

労働と生活の実態の中から生じる健康問題についての調査研究が中心です。
賃金、労働時間、正規・非正規などの雇用形態に関わる様々な問題の解決を志向しています。また、慢性疲労、メンタルヘルスなど、生活の中の労働だけを切り取るだけでは解決しきれない課題を意識しながら、その健康への影響を考える研究を進めています。

「リスクアセスメント・リスクマネジメント(職場環境)」

職場に存在するリスクについて、物理・科学・生物学的なものから組織体制に潜むリスクまでを対象とし、その評価とマネジメントに関する一連の課題について取り組んでいます。
組織リスクとしては、特に、「安全文化」に関する研究活動が、最近のトピックスとして注目を集めています。

以上の3つのテーマに加え、教育・研修事業の基礎として、現場における新しい教育方法や、研修の開発を学術的にも進めています。

 

Ⅲ. 国際協力活動事業

産業安全保健分野においてこれまで蓄積し来た知見を基に、海外の職場や研究機関との連携を進め、先進国のみならず発展途上国における活動も展開しています。また、海外における先進的な取組の国内企業への提供や関連スタッフの紹介も行っています。

1.研究者の海外派遣

発展途上国(ブルンジ、ウガンダ、東欧諸国、東南アジア諸国、中国などで実績)における産業安全保健活動の支援のために研究者を派遣しています。

2.国際的学会活動推進

海外におけるシンポジウム『国際産業保健会議(ICOH)、アジア労働衛生会議(ACOH)、夜勤交代シンポジウム(Working Time Society)など』での研究成果のプレゼンや、参加型対策指向国際研修に関する日韓シンポジウムなどの国際カンファレンスの企画協力などを行っています。

 

Ⅳ.出版・情報サービス事業

教育研修事業、調査・研究事業、国際協力事業等々における活動を通して得、労働科学、産業安全保健等に関する最新の知見や職場改善の好事例を、出版物として広く公開し、我が国の産業安全保健のレベルの向上を図っています。

1.出版刊行

  • 学術誌「労働科学」、普及誌「労働の科学」を定期刊行しています。
  • 学術誌「労働科学」はJ-STAGEにより電子公開されています。
  • 単行本を随時刊行しています。
  • 啓発的なパンフレット、リーフレット等を随時刊行しています。
  • 2013年に労働科学分野のバイブルとも言うべき「産業安全保健ハンドブック」を刊行しています。

2.情報サービス活動

  • Webページによる情報提供を進めています。
  • 学術誌「労働科学」の古典的文献を題材としたインタラクティブなデータベースの作成を進めています。

 

Ⅴ.公益(共通)事業

当財団の公益目的事業(産業安全保健・労働安全衛生の向上)の維持に賛同し、その目的の達成に協力し援助する個人又は団体を会員組織(維持会と呼称)として構成し情報共有や個別研究活動を行っています。会員組織の活動は以下です。

  1. 会員同士の交流の促進
  2. 会員と当研究所との共同研究の促進
  3. 会員の学術活動の支援
  4. 会員企業への講師派遣や研修指導