新型インフルエンザA(H1N1)についての最近の知見(7/15)
和田耕治さん(北里大学医学部衛生学公衆衛生学教室)提供
新型インフルエンザについての暫定エビデンス集(医療従事者向け)
2009年7月15日22:00更新(アップは7月21日09時)
詳しくはこちら→ (420K:PDF)ファイル
新型インフルエンザについての暫定エビデンス集
(医療従事者向け)
2009年7月15日22:00更新
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1.潜伏期 |
1~7日(中央値3から4日)と考えられる。 |
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2.感染可能期間 |
発症前1日から発症後5日から7日程度感染させる可能性があると推定される。小児ではやや長く10日程度の可能性がある。これらをもとに日本では、解熱後2日までまたは、症状が始まった翌日から7 日目までのいずれか長い方は外出しないように求められている。 |
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3.属性 |
患者の年齢の中央値は12歳から20歳と若年に多かった。全体の患者の年齢の範囲は0歳から97歳であった。男女差は無い報告が多い。 |
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4.臨床症状 |
1)80%以上の患者に認められた症状 発熱、咳 2)60から80%未満の患者に認められた症状 熱感、悪寒、咽頭痛 3)40から60%未満の患者に認められた症状 全身倦怠感、頭痛 4)20から40%未満の患者に認められた症状 鼻汁・鼻閉、関節痛、筋肉痛、下痢または嘔吐 5)20%未満の患者に認められた症状 下痢、呼吸苦、嘔吐、痰、腹痛、結膜炎 |
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5.検査所見 |
23人を対象(神戸市)にRT-PCRを行った結果とインフルエンザ迅速診断キットを比較したところ、迅速診断キットでは、発症日の陽性率57%、1日後は88%、2日後は57%であった。迅速診断キットは、偽陰性になることがある。 |
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6.入院適応患者 |
諸外国においては、確定例の2 から9%が入院適応(報告された国の医療機関へのアクセスは我が国と異なることに注意)。 入院患者のうち8%から25%がICU での治療を必要とした。人工呼吸器管理を必要とした入院患者は、10-14%であった。ニューヨークの909人の入院患者の調査では、43%が18 歳未満、中央値は21 歳であった。23%が5 歳未満、77%が50 歳未満、65 歳以上は5%であった。100 人の入院患者がいた場合には、8 人から25 人がICU での治療を必要とし、10 から14 人に人工呼吸器管理が必要であった。また、2.4 人から5.0 人が死亡した。 <入院患者の基礎疾患の割合> 喘息 27-41% その他の慢性呼吸器疾患 11% 免疫低下 9-20% (免疫抑制する薬の内服、悪性腫瘍、先天性の免疫低下) 慢性心疾患 12-17% 糖尿病 11-13% 肥満(過度な肥満) 13% てんかん等(seizure disorder) 10% 妊娠 6-28% 2歳未満 12%-18% 65歳以上 5% リスクなし 21% 入院を必要とした患者は、脱水と急速に進行する重症の肺炎があった。合併症は、ウイルス性肺炎、ARDS、細菌性肺炎、腎不全を伴う横紋筋融解症、心筋炎、基礎疾患(例えば、喘息や心血管疾患など)の増悪、流産。 |
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7.治療 |
新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスは、オセルタミビル(タミフル)やザナミビル(リレンザ)といったノイラミニダーゼ阻害薬には感受性をもつが、アマンタジンには耐性がある。タミフル耐性のインフルエンザも報告されている。 |
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8.致死率 |
入院患者の2.4%から5.0%が死亡していた(カナダ、ニューヨーク市)。ニューヨークでの45 人の死亡者の70%に基礎疾患があり、それらは、喘息またはその他の呼吸疾患29%,糖尿病31%,心疾患18%,免疫低下22%であった。過度な肥満もリスクと考えられている。年齢の中央値は44歳(範囲2 ヶ月から83 歳)
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9.ワクチンの効果 |
従来の季節性インフルエンザのワクチンは現段階では新型インフルエンザA(H1N1)には効果が期待できないと考えられている。 |
新型インフルエンザA(H1N1)についての最近の知見の暫定報告(07/15)
2009年7月21日09時にアップしたPDFファイルを参照
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2009年6月21日22:00更新の情報は以下
新型インフルエンザについての暫定エビデンス集(医療従事者向け)
新型インフルA(H1N1)の最近の知見(06/22)
1)潜伏期
2)感染可能期間
3)属性
4)臨床症状
5)入院症例30人 検査所見
6)入院適応患者
7)治療
8)致死率
9)ワクチンの効果
10)編集後記
新型インフルA(H1N1)の最近の知見(05/29)
新型インフルエンザについての暫定エビデンス集(医療従事者向け)
新型インフルエンザについての暫定エビデンス集
(医療従事者向け)
2009年6月21日22:00更新
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1.潜伏期 |
1~7日(中央値3から4日)と考えられる。 |
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2.感染可能期間 |
季節性インフルエンザの知見を根拠に、発症前1日から発症後5日から7日程度感染させる可能性があると推定される。小児ではやや長く10日程度の可能性がある。免疫不全者や重症患者では長くなると考えられる。不顕性感染や、抗インフルエンザウイルス薬によって治療された患者の感染性については不明である。 |
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3.属性 |
患者の年齢の中央値は12歳から20歳と若年に多かった。全体の患者の年齢の範囲は1歳未満から86歳であった。 男女差は諸外国では差が無い報告が多い。 |
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4.臨床症状 |
1)80%以上の患者に認められた症状 発熱、咳 2)60から80%未満の患者に認められた症状 熱感、悪寒、咽頭痛 3)40から60%未満の患者に認められた症状 全身倦怠感、頭痛 4)20から40%未満の患者に認められた症状 鼻汁・鼻閉、関節痛、筋肉痛、下痢または嘔吐 5)20%未満の患者に認められた症状 下痢、呼吸苦、嘔吐、痰、腹痛、結膜炎 |
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5.検査所見 |
23人を対象(神戸市)にRT-PCRを行った結果とインフルエンザ迅速診断キットを比較したところ、迅速診断キットでは、発症日の陽性率57%、1日後は88%、2日後は57%であった。迅速診断キットは、偽陰性になることがある。 |
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6.入院適応患者 |
諸外国においては、確定例の2から9%が入院適応。報告された国の医療機関へのアクセスは我が国と異なることに注意が必要。 入院患者のうち8%から36%がICUでの治療を必要とした。人工呼吸 器管理を必要とした入院患者は、10-18%であった。入院患者の年齢の中央値は17歳から27.5歳であった。 基礎疾患は、入院患者の41-82%があった。 <入院患者の基礎疾患の割合> 慢性肺疾患 27-41% (喘息、COPD、BOOP、シェーグレン症候群、睡眠時無呼吸症候群など) 免疫低下 9-20% (免疫抑制する薬の内服、悪性腫瘍、先天性の免疫低下) 慢性心疾患 12-17% 糖尿病 11-13% 肥満 13% てんかん等(seizure disorder) 10% 妊娠 17-28% 2歳未満 12%-18% 65歳以上 5% 入院を必要とした患者は、急速に進行する重症の肺炎があった。合併症は、二次性の細菌感染症、腎不全を伴う横紋筋融解症、心筋炎、そして基礎疾患(例えば、喘息や心血管疾患など)の増悪、流産。 |
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7.治療 |
新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスは、今のところ、オセルタミビル(タミフル)やザナミビル(リレンザ)といったノイラミニダーゼ阻害薬には感受性をもつが、アマンタジンには耐性がある。 抗ウイルス薬は特に次の群において有益であると考えられている。 ・妊婦(患者に説明同意のうえ、投与が勧められる) ・進行性の肺炎 ・基礎疾患のある患者 サリチル酸(アスピリンやアスピリン含有薬剤など)はライ症候群のリスクがあるため、小児や若年成人(18歳以下)には使用すべきではない。解熱には、アセトアミノフェンまたは非ステロイド性抗炎剤(我が国では、ボルタレン、ポンタールの使用が禁止されている)を使用する。 診察、トリアージ、入院患者の酸素飽和度を測定する。酸素投与は90%以上の酸素飽和度を保つ。臨床的状況を加味し、妊婦などでは、92~95%までに増やすことも検討する。 抗菌薬の予防投与は行うべきではない。肺炎には、市中感染による肺炎に対するエビデンスに基づいて治療を行う。 コルチコステロイドは、新型インフルエンザA(H1N1)患者の治療の際には、日常的に使用されるべきではない。低濃度のコルチコステロイドは、昇圧剤を必要としたり、副腎不全が疑われたりするような場合の敗血症性ショックの患者には考慮して良い。 |
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8.致死率 |
2009年6月19日現在の報告によると、WHOには44,287人の感染例と180人の死亡が報告されている(死亡者は米国、メキシコ、カナダ、コスタリカ)。致死率は0.41%と計算できる。しかし、多くの軽症例が報告されていないことを考えると実際の致死率はこの値よりも低い値になると考えられる一方、重症集中ケア中の患者の死亡が次第に報告される可能性もある。死亡者総計が74人の段階では、ほとんどの死亡者は60歳未満であった。 入院患者の2.4%から4.2%が死亡していた(カナダ、ニューヨーク市)。 |
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9.ワクチンの効果 |
従来の季節性インフルエンザのワクチンは現段階では新型インフルエンザA(H1N1)には効果が期待できないと考えられている。 |
新型インフルエンザA(H1N1)についての最近の知見の暫定報告(06/21)
新型インフルエンザA(H1N1)に感染した患者について臨床疫学的な特徴について、我が国や諸外国で公開されている報告をもとに暫定的なレビューを行う。これは、患者数、入院適応症例や重症化しやすい基礎疾患に関する知見などを示し、我が国での臨床現場での判断材料の一つを提供するものである。なお、本暫定報告はあらたな知見が追加され次第随時更新されるものである。
1)潜伏期
潜伏期間は様々な文献より1日から7日(中央値3-4日)と考えられる18)。
米国での臨床所見では2日から7日と考えられる1)。スペインでは中央値3日(範囲:1から5日)イギリスでは4から6日と報告がある15)。
2)感染可能期間
季節性インフルエンザでは発症1日前からウイルスを排出し、発症後5日から7日程度感染させる可能性があると推定される。小児ではやや長く10日程度。免疫不全者、重症化した患者では感染可能期間は長くなると考えられる1)。不顕性感染の患者、抗インフルエンザウイルス薬によって治療された患者の感染性については不明である1)。
3)属性
殆どの国での感染した患者の年齢の中央値は12歳から20歳と若年に多いのが特徴である。
男女差はないとする報告が多い18)。
国内での2009年5月31日現在の患者数は370人で、男性が65%であった19)。80%が10代であった。
神戸市の患者43人(2009年5月19日現在)では、年齢の中央値は17歳(範囲:5から44歳)で、殆どが10代後半であった6)。男女比は1:1.3であった。
大阪市のK中学・高等学校の生徒1,942人、職員143人に(2009年5月19日現在)おいて、64人が確定診断された7)。確定診断された人の年齢中央値は16歳(範囲:13-53歳)で、男性が49人、女性が15人であった。大阪府においては小学校での感染事例として5月19日現在の5人の小学生の感染が確認されている7)。
米国での642人の報告では、患者の年齢の中央値は20歳(範囲:3ヶ月から81歳)であった1)。患者の年齢で10から18歳が40%を占め、19から35歳が35%であった。51歳以上は5%であった。
カナダでは、患者の年齢の中央値は17歳(範囲:1歳未満から86歳)であった8)。
基礎疾患は神戸市の患者43人のうち、気管支喘息のある者が6人(15.8%)であった。女性の妊娠の可能性や、その他の糖尿病、心疾患、免疫不全、悪性腫瘍などの基礎疾患のある者はいなかった6)。大阪市での調査では小学生5人については特に既往歴はなかった7)。
基礎疾患と重症化については我が国では現段階では明らかな関連については報告されていない。
英国での252人の確定した患者のうち118人(47%)が女性であった。年齢は中央値は12歳、平均値は20歳(範囲:0-73歳)であった22)。
4)臨床症状
以下に感染した際の症状のそれぞれの頻度について報告されている文献の数に応じて分類した
① 80%以上の患者に認められた症状
発熱(発熱94%1)、97%5)、38度以上約90%6)、38度以上82.8%7)、87%-97%10、91%20)、90%22))
咳(92%1)、77%5)、81%7)、77-92%10)、82%20)、75%22))
② 60から80%未満の患者に認められた症状
熱感、悪寒(71%7)、28-80%10)、65%22))
咽頭痛(66%1)、65%6)、33-82%10)、25%20)、80%22))
③ 40から60%未満の患者に認められた症状
全身倦怠感(58%7)、35-80%10))
頭痛(50%7)、38-81%10)、75%22))
④ 20から40%未満の患者に認められた症状
鼻汁・鼻閉(60%6)、27-30%10)、40%20))
関節痛(32%7)、13-56%10))
筋肉痛 (18%6)、35%10)、33%20))
下痢または嘔吐(38%1))
⑤ 20%未満の患者に認められた症状
下痢(25%1)、10%5)、10%弱6)、12.9%7)、5-28%10)、27%22))
呼吸苦 (43%(入院症例にて)5)、14%10))
嘔吐(25%1)、46%5)、6.5%7)、15-25%10)、40%22))
痰 (16%10))
腹痛 (10%7))
結膜炎(10%5))
5)は入院症例30人
数例の確定症例には発熱がなかったことから季節性インフルエンザと同様に無症候性及び非常に軽症の感染例がある可能性がある15)。
5)検査所見
神戸市の調査では、23人を対象にRT-PCRを行った所、インフルエンザ迅速診断キットでは、発症日の陽性率57.1%、1日後は87.5%、2日後は57.1%であった。
カリフォルニアの入院症例のうち24人で16人は病院において迅速診断キットで陽性、5人は陰性、3人は別の方法(2人は直接免疫蛍光法、1人は培養)であった。
発症の初期においては、偽陰性になることがあるため注意が必要である。
6)入院適応患者
これまでの諸外国での報告によると、確定例の2から9%が入院適応となっている1),5),8),10),23)。
入院患者のうち8%24)、16%25)、36%1)がICUでの治療を必要とした。人工呼吸器管理を必要とした患者は、18%1)、13%10)、10%24)であった。
入院患者の年齢の中央値は17歳から27.5歳であった。
基礎疾患については、米国では入院患者の40-70%が、メキシコでは死亡した45人のうちの46%
がなんらかの基礎疾患があった1),5),10)。
入院を必要とした患者は、急速に進行する肺炎がみられた。新型インフルエンザA(H1N1)感染による重症例の中で、合併症は、二次性の細菌感染症、腎不全を伴う横紋筋融解症、心筋炎、そして基礎疾患(例えば、喘息や心血管疾患など)の増悪などがあった14)。
病状悪化に対するリスクが高いことを予見するような特異的な危険因子は十分に分かっていない。臨床的な症状悪化の可能性のある所見(例えば、呼吸困難、胸痛、色のある痰を伴う咳、意識状態の変化、混迷など)を観察し、そのような場合はすぐに医療機関を受診させる。基礎疾患(免疫不全状態、前から存在する慢性的な肺あるいは心血管系疾患、糖尿病等)に配慮すべきである。
妊婦は、致死的な結果を含み、何人かの入院症例が報告されている。
米国での調査では399人の感染が確定した患者のうち36人(9%)が入院を必要としていた1)。詳細なデータのある22人の入院患者のうち4人(18%)は5歳以下、1人は妊婦であった。9人(41%)は基礎疾患があった。
① 41歳の女性、自己免疫疾患により免疫を抑制する薬を内服
② 35歳の女性、ダウン症と先天的心疾患
③ 33歳の女性、喘息、リウマチ性関節炎、乾癬のある35週の妊娠女性
④ 1歳の新生児重症筋無力症、嚥下障害、慢性の低酸素症
⑤ 残りの5人は喘息のみ
入院した患者の11人(50%)は胸部レントゲン写真で肺炎が認められた。8人(36%)はICUに入院し、4人(18%)が人工呼吸器管理となった。5月5日現在、18人(82%)の患者が回復し、2名の基礎疾患のない23ヶ月の子供と30歳の女性はまだ重篤であった。33歳の妊娠女性と1歳の重症筋無力症の患者は死亡した。
米国カリフォルニアで確認された553人患者(333人確定症例、220人感染の疑いが濃厚な症例)のうち30人(5.4%)が入院をした。この集団において報告された際の死亡者は確認されていなかった5)。23人は5月17日現在退院をしている。入院期間の中央値は4日(範囲:1-10日)であった。入院した30人のうち、21人(70%)が女性であり、年齢の中央値は27.5歳(範囲:生後27日から89才)であった。入院時診断で最も多かったのは、肺炎と脱水であった。
入院した人のうちなんらかの基礎疾患のあるものが19人(64%)であった。基礎疾患については、慢性肺疾患11人(37%)、免疫が抑制される疾患6人(20%)、慢性心疾患(先天性心疾患、冠動脈疾患)5人(17%)、糖尿病4人(13%)、肥満4人(13%)であった。5人の妊婦のうち2人は自然流産(13週)や前期破水(35週)が見られた5)。
25人中の患者のうち15人(60%)が胸部レントゲン写真で肺炎を呈し、4人(13%)が人工呼吸器管理を必要とした10)。
米国では、妊娠女性の20人の感染例(5人の感染の疑いが濃厚の症例を含む)が報告され、そのうち情報の入手可能な13人のうち3人が入院し、1人がARDSを発症して死亡した4)。
メキシコでも入院した17%から33%の患者が人工呼吸器管理を必要とした10),15)。
カナダでは6月17日現在4906人の確定例のうち284人(5.8%)が入院し、12人(0.24%)が死亡した8)23)。初期の症例においては、15歳から44歳に重症肺炎が認められた15)。5月30日現在のカナダでの入院患者84人の年齢の中央値は17歳(範囲:1歳―78歳)であった。そのうち13人(15.5%)はICUに入院した25)。40人(47.6%)がなんらかの基礎疾患があった。
チリでは、1.7%の患者が入院を必要とした25)。
ニューヨーク市では新型インフルエンザA(H1N1)に感染して入院を必要とした症例は2009年6月2日現在341人であった20)。28人(8%)の入院患者が人工呼吸器管理を必要とした。入院患者の年齢の中央値は19歳で、半分以上が18歳未満であった。19%の入院患者が5歳以下で66%が50歳以下、わずか3%が65歳以上であった。82%がなんらかのインフルエンザの重症化のリスク因子を一つ以上持っていた。最も多いリスク要因は喘息(41%)、2歳以下(18%)、免疫低下(13%)、心疾患(12%)であった。37人の子供がいる年齢の女性のうち14人(38%)が妊娠していた。
2009年6月11日現在では、567人の新型インフルエンザの診断が確定した入院患者がおり、そのうち117人(21%)がICUでのケアを必要とし、59人(10%)が人工呼吸器管理を必要とした24)。567人のうち14人(0.02%)が死亡している。入院患者では、259人(46%)が、18歳未満であり、入院患者の年齢の中央値は26歳であった。入院患者で5歳未満は20%、50歳未満は79%、65歳以上は5%程度であった。
80%の入院患者が一つ以上のハイリスクとなる要因があった。もっともよくみられたリスクは、入院患者の41%にみられた喘息または、そのほかの慢性肺疾患であった。そのほかに重要なリスクファクターは妊娠であった。142名の妊娠可能年齢の女性の入院者の28%が妊婦であった。2歳未満(12%)、糖尿病(11%)、免疫低下(9%)、心疾患(9%)であった。
我が国では、第2段階(国内発生早期)ですべての患者の入院措置がとられるため、臨床的に入院が必要となった件数については明らかにされていない。神戸市からの報告では1例のみ入院が必要と考えられた20歳代女性の例が示されているが、人工呼吸器管理を要する対象者はいなかった6)。
―入院患者の基礎疾患の割合―
慢性肺疾患 37%5)、喘息が27%1),41%20),24)
(喘息、COPD、BOOP、シェーグレン症候群、睡眠時無呼吸症候群など)
免疫低下 9%1),13%20),20%5)
(免疫抑制する薬の内服、悪性腫瘍、先天性の免疫低下)
慢性心疾患 12%20),17%5)
糖尿病 11%24)、13%5)
肥満 13%5)
てんかん等(seizure disorder) 10%5)
妊娠 17%5),28%24)
2歳未満 12%24)、18%20)
65歳以上 5%24)
7)治療
①一般的な治療の注意点
新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスは、今のところ、オセルタミビル(タミフル)やザナミビル(リレンザ)といったノイラミニダーゼ阻害薬には感受性をもつが、アマンタジンには耐性である。
ノイラミニダーゼ阻害薬の早期投与は、疾患の重症度と有病期間を減少させるかもしれない。さらに、重症化や死亡への進行を予防することにもまた寄与することが期待される。
抗ウイルス薬は特に次の群において有益と考えられている。
• 妊娠中の女性(患者に説明同意のうえ、投与が勧められる16))
• 進行性の肺炎の患者
• 基礎疾患のある患者
サリチル酸(アスピリンやアスピリン含有薬剤など)はライ症候群のリスクがあるため、小児や若年成人(18歳以下)には使用すべきではない14)。解熱には、アセトアミノフェンまたは非ステロイド性抗炎剤(我が国では、ボルタレン、ポンタールの使用が禁止されている)を使用する17)。
②酸素投与
診察、トリアージ、入院患者の酸素飽和度を測定する。酸素投与は90%以上の酸素飽和度を保つ。臨床的状況を加味し、妊婦などでは、92~95%までに増やすことも検討する。
重症の低酸素血症の患者はマスクによる高流量(例えば、10L/min)の酸素投与が必要である。
③抗菌薬療法
抗菌薬の予防投与は行うべきではない。肺炎には、抗菌薬による治療は市中感染による肺炎に対するガイドラインを参照する。
④コルチコステロイド
コルチコステロイドは、新型インフルエンザA(H1N1)患者の治療の際には、日常的に使用されるべきではない。低濃度のコルチコステロイドは、昇圧剤を必要としたり、副腎不全が疑われたりするような場合の敗血症性ショックの患者には考慮して良い。長期にわたる、あるいは高濃度のコルチコステロイドの使用は、日和見感染の可能性等、インフルエンザウイルス感染の患者において重症の副作用を起こすことがある14)。
8)致死率
2009年6月19日現在の報告によると、WHOには44,287人の感染例と180人の死亡が報告されている(死亡者は米国、メキシコ、カナダ、コスタリカ)。致死率は0.41%と計算できる。しかし、多くの軽症例が報告されていないことを考えると実際の致死率はこの値よりも低い値になる。
死亡者が総計74人の段階でほとんどの死亡は60歳未満であった13)。
国別の致死率でみると、メキシコでは1.93%、米国では0.17%と大きな値の差が見られる。Fraser らの推計では、23,000人(6,000人から32,000人の幅)がメキシコで4月末までに感染し、その時までに報告された確定例と疑い例の死亡数から、症例毎の致死率(CFR)は0.4%(0.3%から1.5%の幅)と推計された3)。
メキシコでの年齢階層別の致死率は、50歳以上で5.5-5.9%、30-49歳で3.9-4.1%、20-29歳で2.8%、10歳未満で0.4-0.6%であった。メキシコで死亡した45例のうち54%は基礎疾患のない患者で殆どが20から59歳であった。そのうち一人は妊娠34週であった。
メキシコでの2009年3月から5月の感染者においては、97人が検査でも新型インフルエンザA(H1N1)の感染が確定した死亡者のうち0-4歳が5%、5-14歳が7%、15-29歳が27%、30-59歳56%、60歳以上5%であった21)。
入院患者の2.4%から4.2が死亡していた(カナダ、ニューヨーク市)。
カナダでは6月17日現在4906人の確定例のうち284人(5.8%)が入院し、12人(0.24%)が死亡した8)23)。
ニューヨークでは14人の死亡が確認されている。88%が65歳未満であった。死亡者の年齢の中央値は45歳(範囲2ヶ月から83歳)であった20),24)。75%になんらかの基礎疾患がみられた。4人は肥満のみであった。
9)ワクチンの効果
従来の季節性インフルエンザのワクチンは現段階では新型インフルエンザA(H1N1)には効果がないと考えられている。
カリフォルニアで入院した患者30人のうち6人(27%)は季節性インフルエンザのワクチンを受けていた。
10)編集後記
2009年6月19日現在で入手可能な新型インフルエンザA(H1N1)に感染した患者の疫学データについてまとめた。特にまん延している米国では、患者に対して軽症なら家にいるようにと指示していることから、実際の患者数については現段階では推定できない。
入院する可能性が高いのは、呼吸器系の基礎疾患のある患者、免疫が抑制されている可能性のある人、妊婦などがあげられた。しかしながら、基礎疾患のない人においても重篤化する症例もあることには今後も注意は必要である。
諸外国においては確定例の2から9%が入院適応となっているが、我が国での現状に当てはめる際には医療機関へのアクセスとの違いを考慮する必要がある。
ニューヨーク市での報告では、2009年6月11日現在で、567人の新型インフルエンザの診断が確定した入院患者がおり、そのうち117人(21%)がICUでのケアを必要とし、59人(10%)が人工呼吸器管理を必要とした24)。567人のうち14人(2.4%)が死亡している。これらの数値は入院患者のサーベイランスを行っていることからもある程度信頼にあたいすると考えられる。
カナダでは6月17日現在4906人の確定例のうち284人(5.8%)が入院し、12人(0.24%)が死亡した8)23)。入院患者の4.2%が死亡している。以上より、入院患者の2.4%から4.2%が死亡していた(カナダ、ニューヨーク市)。
以上より、100人の入院患者がいた場合には、41から82%に基礎疾患がある。8人から36人がICUでの治療を必要とし、10から18人が人工呼吸器管理が必要である。2.4人から4.2人が死亡した。
今後の報告によってある程度の数に収束すると考えられる。これらの数値は、病床数の算定や治療の効果にあたって、参考になるデータであろう。
問い合わせ:和田耕治(kwada-sgy@umin.ac.jp)
4.参考文献
1) Novel Swine-origin Influenza A (H1N1) virus investigation team. Emergence of a novel swine-influenza A (H1N1) virus in humans. N Engl J Med. May 7 2009.
http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMoa0903810
2) CDC. Update: Novel influenza A (H1N1) Virus infections- Worldwide, Morbidity and mortality weekly report (MMWR) May 6, 2009. Vol 58 (17), 453-458. May 8 2009.
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3) Fraser C et al.Pandemic potential of a strain of influenza A (H1N1): Early findings. Science 2009.
4) CDC. Novel influenza A(H1N1) virus infections in three pregnant women-United States, April-May 2009. Morbidity and mortality weekly report (MMWR).Vol 58(18)497-500.
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5) CDC.Morbidity and mortality weekly report (MMWR) Hospitalized patients with novel influenza A (H1N1) virus infection. California, April-May 2009. Vol 58(19), 536-541. May 18,2009. http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5819a6.htm?s_cid=mm5819a6_x
6)国立感染症研究所感染症情報センター,神戸市保健所.2009年5月19日現在の神戸市における新型インフルエンザの臨床像(暫定報告).2009年5月20日http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009idsc/clinical_epi_kobe.html
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http://www.kansensho.or.jp/news/090522nishikoube_report.pdf
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http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/index.html
13)World Health Organization. Summary report of a high-level consultation: new influenza A(H1N1).18 May 2009. http://www.who.int/csr/resources/publications/swineflu/High_Level_Consultation_18_May_2009.pdf
14)World Health Organization.Clinical management of human infection with new influenza A (H1N1) virus:initial guidance.2009年5月21日
http://www.who.int/csr/resources/publications/swineflu/clinical_managementH1N1_21_May_2009.pdf
(日本語:http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009who/WHO_clinical_management.html)
15) WHO Technical Consultation on the severity of disease caused by the new influenza A(H1N1) virus infections.
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(日本語http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009who/090506tech_consult.html)
16)日本産婦人科学会.妊婦もしくは褥婦に対しての新型インフルエンザA(H1N1)に対する対応Q and A
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/02-03-01.pdf
17)CDC. Interim Guidance for Clinicians on the Prevention and Treatment of Novel Influenza A (H1N1) Influenza Virus Infection in Infants and Children.
http://www.cdc.gov/h1n1flu/childrentreatment.htm
http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009cdc/CDC_children_treatment.html
18) World Health Organization.Considerations for assessing the severity of an influenza
Pandemic.29 May 2009.http://www.who.int/wer/2009/wer8422.pdf
19)厚生労働省.新型インフルエンザ患者数.2009年5月31日
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/houdou/2009/05/dl/infulh0531-04.pdf
20) Department of health and mental hygiene, The City of New York. Health Alert #21: Novel H1N1 Influenza Update. June 2 2009. http://www.nyc.gov/html/doh/downloads/pdf/cd/2009/09md21.pdf
21)World Health Organization. Human infection with new influenza A (H1N1) virus: Mexico, update, March-May 2009. 2009年6月5日http://www.who.int/wer/2009/wer8423.pdf
22)Health protection agency et al. Epidemiology of new influenza A (H1N1) virus infection, United Kingdom, April-June 2009. Eurosurveillance 14 (22)1-3.
http://www.eurosurveillance.org/ViewArticle.aspx?ArticleId=19228
23)Public health Agency of Canada.
http://www.phac-aspc.gc.ca/alert-alerte/swine-porcine/surveillance-archive/20090617-eng.php 2009年6月17日
24) Department of health and mental hygiene, The City of New York. Health Alert #21: Novel H1N1 Influenza Update. June 12 2009. http://www.nyc.gov/html/doh/downloads/pdf/cd/2009/09md22.pdf
25) New Influenza A(H1N1) virus:global epidemiological situation, June 2009.
http://www.who.int/wer/2009/wer8425.pdf
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新型インフルエンザA(H1N1)についての最近の知見(05/29)
2009年5月29日17:00更新
新型インフルエンザA(H1N1)に感染した患者について臨床疫学的な特徴について、我が国や諸外国で公開されている報告をもとに暫定的なレビューを行う。これは、患者数、入院適応症例や重症化しやすい基礎疾患に関する知見などを示し、我が国での臨床現場での判断材料の一つを提供するものである。なお、本暫定報告はあらたな知見が追加され次第随時更新されるものである。
1)潜伏期
潜伏期間は様々な文献より1日から7日(中央値3-4日)と考えられる18)。
米国での臨床所見では2日から7日と考えられる1)。スペインでは中央値3日(範囲:1から5日)イギリスでは4から6日と報告がある15)。
2)感染可能期間
季節性インフルエンザでは発症1日前からウイルスを排出し、発症後5日から7日程度感染させる可能性があると推定される。小児ではやや長く10日程度。免疫不全者、重症化した患者では長くなると考えられる1)。不顕性感染の患者、抗インフルエンザウイルス薬によって治療された患者の感染性については不明である1)。
3)属性
殆どの国での感染した患者の年齢の中央値は16歳から20歳と若年に多いのが特徴である。男女差はないとする報告が多い18)。
神戸市の患者43人(2009年5月19日現在)では、年齢の中央値は17歳(範囲:5から44歳)で、殆どが10代後半であった6)。男女比は1:1.3であった。
大阪市のK中学・高等学校の生徒1,942人、職員143人に(2009年5月19日現在)おいて、64人が確定診断された7)。確定診断された人の年齢中央値は16歳(範囲:13-53歳)で、男性が49人、女性が15人であった。大阪府においては小学校での感染事例として5月19日現在の5人の小学生の感染が確認されている7)。
米国での642人の報告では、患者の年齢の中央値は20歳(範囲:3ヶ月から81歳)であった1)。患者の年齢で10から18歳が40%を占め、19から35歳が35%であった。51歳以上は5%であった。
カナダでは、患者の年齢の中央値は17歳(範囲:1歳未満から86歳)であった8)。
基礎疾患は神戸市の患者43人のうち、気管支喘息のある者が6人(15.8%)であった。女性の妊娠の可能性や、その他の糖尿病、心疾患、免疫不全、悪性腫瘍などの基礎疾患のある者はいなかった6)。大阪市での調査では小学生5人については特に既往歴はなかった7)。
基礎疾患と重症化については我が国では現段階では明らかな関連については報告されていない。
4)臨床症状
以下に感染した際の症状のそれぞれの頻度について報告されている文献の数に応じて分類した
① 80%以上の患者に認められた症状
発熱(発熱94%1)、97%5)、38度以上約90%6)、38度以上82.8%7)、87%-97%10))
咳(92%1)、77%5)、81%7)、77-92%10))
② 60から80%未満の患者に認められた症状
熱感、悪寒(71%7)、28-80% 10))
咽頭痛(66%1)、65%6)、33-82%10))
鼻汁・鼻閉(60%6)、27-30%10))
③ 40から60%未満の患者に認められた症状
全身倦怠感(58%7)、35-80%10))
頭痛(50%7)、38-81%10))
④ 20から40%未満の患者に認められた症状
関節痛(32%7)、13-56%10))
下痢または嘔吐(38%1))
⑤ 20%未満の患者に認められた症状
筋肉痛 (18%6)、35%10))
下痢(25%1)、10%5)、10%弱6)、12.9%7)、5-28%10))
呼吸苦 (43%(入院症例にて)5)、14%10))
嘔吐(25%1)、46%5)、6.5%7)、15-25%10))
痰 (16%10))
腹痛 (10%7))
結膜炎(10%5))
5)は入院症例30人
数例の確定症例には発熱がなかったことから季節性インフルエンザと同様に無症候性及び非常に軽症の感染例がある可能性がある15)。
5)検査所見
神戸市の調査では、23人を対象にRT-PCRを行った所、インフルエンザ迅速診断キットでは、発症日の陽性率57.1%、1日後は87.5%、2日後は57.1%であった。
カリフォルニアの入院症例のうち24人で16人は病院において迅速診断キットで陽性、5人は陰性、3人は別の方法(2人は直接免疫蛍光法、1人は培養)であった。
陰性であっても、発症の初期においては、偽陰性になることがあるため注意が必要である。
6)入院適応患者
我が国では、第2段階(国内発生早期)ですべての患者の入院措置がとられるため、臨床的に入院が必要となった件数については明らかにされていない。神戸市からの報告では1例のみ入院が必要と考えられた20歳代女性の例が示されているが、人工呼吸器管理を要する対象者はいなかった6)。
これまでの諸外国での報告によると、確定例の2から9%が入院適応となっている1),5),8),10)。基礎疾患については、米国では入院患者の50-70%が、メキシコでは死亡した45人のうちの46%がなんらかの基礎疾患があった1),5),10)。
入院を必要とした患者は、急速に進行する肺炎がみられた。新型インフルエンザA(H1N1)感染における重症の疾患の中で、合併症は、二次性の細菌感染症、腎不全を伴う横紋筋融解症、心筋炎、そして基礎疾患(例えば、喘息や心血管疾患など)の増悪、などがあった14)。
病状悪化に対するリスクが高いことを予見するような特異的な危険因子は十分に分かっていない。臨床的な症状悪化の可能性のある所見(例えば、呼吸困難、胸痛、色のある痰を伴う咳、意識状態の変化、混迷など)を観察し、そのような場合はすぐに医療機関を受診させる。基礎疾患(免疫不全状態、前から存在する慢性的な肺あるいは心血管系疾患、糖尿病等)に配慮すべきである。
妊婦は、致死的な結果を含み、何人かの入院症例が、新型H1N1ウイルスに感染した妊婦の中から報告されている。
米国での調査では399人の感染が確定した患者のうち36人(9%)が入院を必要としていた1)。データのある22人の入院患者のうち4人(18%)は5歳以下、1人は妊婦であった。9人(41%)は基礎疾患があった。
① 41歳の女性、自己免疫疾患により免疫を抑制する薬を内服
② 35歳の女性、ダウン症と先天的心疾患
③ 33歳の女性、喘息、リウマチ性関節炎、乾癬のある35週の妊娠女性
④ 1歳の新生児重症筋無力症、嚥下障害、慢性の低酸素症
⑤ 残りの5人は喘息のみ
入院した患者の11人(50%)は胸部レントゲン写真で肺炎が認められた。8人はICUに入院し、4人(18%)が人工呼吸器管理となった。5月5日現在、18人(82%)の患者が回復し、2名の基礎疾患のない23ヶ月の子供と30歳の女性はまだ重篤であった。33歳の妊娠女性と1歳の重症筋無力症の患者は死亡した。
米国カリフォルニアで確認された553人患者(333人確定症例、220人感染の疑いが濃厚な症例)のうち30人(5.4%)が入院をした。この集団において報告のされた際の死亡は確認されていなかった5)。入院した30人については、21人(70%)が女性であり、年齢の中央値は27.5歳(範囲:生後27日から89才)であった。入院時診断で最も多かったのは、肺炎と脱水であった。
入院した人のうちなんらかの基礎疾患のあるものが19人(64%)であった。基礎疾患については、慢性肺疾患11人(37%)、免疫が抑制される疾患6人(20%)、慢性心疾患(先天性心疾患、冠動脈疾患)5人(17%)、糖尿病4人(13%)、肥満4人(13%)であった。5人の妊婦のうち2人は自然流産(13週)や前期破水(35週)が見られた5)。
25人中の患者のうち15人(60%)が胸部レントゲン写真で肺炎を呈し、4人(13%)が人工呼吸器管理を必要とした10)。
入院患者30人のうち23人は5月17日現在退院をしている。入院期間の中央値は4日(範囲:1-10日)であった。
米国では、妊娠女性の20人の感染例(5人の感染の疑いが濃厚の症例を含む)が報告され、そのうち情報の入手可能な13人のうち3人が入院し、1人がARDSを発症して死亡した4)。
メキシコでも入院した17%から33%の患者が人工呼吸器管理を必要とした10),15)。
カナダでは5月25日現在921人の確定例のうち29人(3.1%)が入院し、1人(0.1%)が死亡した8)。初期の症例においては、15歳から44歳に重症肺炎が認められた15)。
―入院患者の基礎疾患の割合―
慢性肺疾患 37%5)、喘息が27%1)
(喘息、COPD、BOOP、シェーグレン症候群、睡眠時無呼吸症候群など)
免疫低下 9%1)-20%5)
(免疫抑制する薬の内服、悪性腫瘍、先天性の免疫低下)
慢性心疾患 17%5)
糖尿病 13%5)
肥満 13%5)
てんかん(seizure disorder) 10%5)
妊娠 17%5)
7)治療
①一般的な治療の注意点
新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスは、今のところ、オセルタミビルやザナミビルといったノイラミニダーゼ阻害薬には感受性をもつが、アマンダジンには耐性である。
ノイラミニダーゼ阻害薬の早期からの投与は、疾患の重症度と有病期間を減少させるかもしれない。さらに、重症化や死亡への進行を予防することにもまた寄与することが期待される。
抗ウイルス薬は特に次の群において有益と考えられている。
• 妊娠中の女性(患者に説明同意のうえ、投与が勧められる16))
• 進行性の肺炎の患者
• 基礎疾患のある患者
サリチル酸(アスピリンやアスピリン含有薬剤など)はライ症候群のリスクがあるため、小児や若年成人(18歳以下)には使用すべきではない14)。解熱には、アセトアミノフェンまたは非ステロイド性抗炎剤(我が国では、ボルタレン、ポンタールの使用が禁止されている)を使用する17)。
②酸素投与
診察、トリアージ、入院患者の酸素飽和度を測定する。酸素投与は90%以上の酸素飽和度を保つ。臨床的状況を加味し、妊婦などでは、92~95%までに増やすことも検討する。
重症の低酸素血症の患者はマスクによる高流量(例えば、10L/min)の酸素投与が必要である。
③抗菌薬療法
抗菌薬の予防投与は行うべきではない。肺炎には、抗菌薬による治療は市中感染による肺炎に対するガイドラインを参照する。
④コルチコステロイド
コルチコステロイドは、新型インフルエンザA(H1N1)患者の治療の際には、日常的に使用されるべきではない。低濃度のコルチコステロイドは、昇圧剤を必要としたり、副腎不全が疑われたりするような場合の敗血症性ショックの患者には考慮して良い。長期にわたる、あるいは高濃度のコルチコステロイドの使用は、日和見感染やウイルス複製を延長させる可能性等、インフルエンザウイルス感染の患者において重症の副作用を起こすことがある。
8)致死率
2009年5月27日現在の報告によると、WHOには13,398人の感染例と95人の死亡が報告されている11)。致死率は0.71%と計算できる。しかしながら、多くの軽症例が報告されていないことを考えると実際の致死率はこの値よりも低い値になると考えられる。
死亡者が総計74人の段階でほとんどの死亡は60歳未満であった13)。
国別の致死率でみると、メキシコでは1.92%、米国では0.14%と大きな値の差が見られる。Fraser らの推計では、23,000人(6,000人から32,000人の幅)がメキシコで4月末までに感染し、その時までに報告された確定例と疑い例の死亡数から、症例毎の致死率(CFR)は0.4%(0.3%から1.5%の幅)と推計された3)。
メキシコでの年齢階層別の致死率は、50歳以上で5.5-5.9%、30-49歳で3.9-4.1%、20-29歳で2.8%、10歳未満で0.4-0.6%であった。メキシコで死亡した45例のうち54%は基礎疾患のない患者で殆どが20から59歳であった。そのうち一人は妊娠34週であった。
9)ワクチン
季節性インフルエンザのワクチンは現段階では新型インフルエンザA(H1N1)には効果がないと考えられている。
カリフォルニアで入院した患者30人のうち6人(27%)は季節性インフルエンザのワクチンを受けていた。
10)編集後記
2009年5月29日現在で入手可能な新型インフルエンザA(H1N1)に感染した患者の疫学データについてまとめた。特にまん延している米国では、患者に対して軽症なら家にいるようにと指示していることから、実際の患者数については現段階では推定できない。
入院する可能性が高いのは、呼吸器系の基礎疾患のある患者、免疫が抑制されている可能性のある人、妊婦などがあげられた。しかしながら、基礎疾患の内人においても重篤化する症例もあることには今後も注意は必要である。
諸外国においては確定例の2から9%が入院適応となっているが、我が国での現状に当てはめる際には医療機関へのアクセスとの違いを考慮する必要がある。
今後は入院した人の割合のなかから死亡した割合が明らかになると医療機関の必要な病床数の推定も可能になると考えられる。
4.参考文献
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3) Fraser C et al.Pandemic potential of a strain of influenza A (H1N1): Early findings. Science 2009.
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