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労働の科学 73巻7号 地域のものづくりと公設試験研究機関

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書誌情報

  • 定価: 1,200円
  • 体裁: B5判

目次

  1. 巻頭言 俯瞰
    地域のものづくりと公設試験研究機関の役割  
    [三重県工業研究所]松岡 敏生
  2. 特集
    地域のものづくりと公設試験研究機関
    1. 人間生活工学機器データベースDHuLEへのお誘い [地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター]島田 茂伸
    2. 地域の産業と環境に応じた生活と作業の改善対策 北海道における研究開発事例を例に [地方独立行政法人 北海道立総合研究機構]中島 康博
    3. 福祉用具・生活支援用具関連のISO規格およびJISの開発とものづくり [埼玉県産業技術総合センター]半田 隆志
    4. 人間・製品・環境の特性を包括した高付加価値な生活製品の開発・評価の支援拠点を目指して [地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター]大島 浩幸,山田 巧
    5. 医療・福祉機器・製品開発と産学官連携 [長野県工業技術総合センター]北野 哲彦
    6. 地域産業の発展と住民生活の向上に寄与する人間生活工学関連の技術支援 [地方独立行政法人 大阪産業技術研究所]山本 貴則
  3. Graphic
    1. 安全な運行とドライバーの健康のために 7[見る・活動](90)‐輸送事業者の取り組み
       カリツー株式会社
  4. Series
    1. 労研アーカイブを読む(38)失敗を学びに変えよう 椎名 和仁
    2. 凡夫の安全衛生記(18)「敢行性はなくならない」真正面からのアプローチ 福成 雄三
    3. 産業安全保健専門職と活用⑥健康運動指導士 山村 昌代
    4. 産業安全保健専門職と活用⑦社会保険労務士 山口 恵美子
    5. 産業安全保健専門職と活用⑧特定社会保険労務士 山口 恵美子
    6. にっぽん仕事唄考(58)炭鉱仕事が生んだ唄たち(その58)‐炭鉱城下町の「校歌」と戦争の影⑥‐ 前田 和男
  5. Column
    1. GfA2018:ドイツ語圏人間工学会春季大会
      濃い密度,層の厚みを感じたアットホームな雰囲気の学会 小山 秀紀
    2. 織という表現(19)
      バスケタリー 阿久津 光子
    3. BOOKS
      『よくわかる未払い残業代請求のキホン』 法律と数字を苦にせず読める残業代のイロハ 山下 恒生
    4. Talk to Talk
      知をしぼれども 肝付 邦憲
    5. Information & News
    6. 勞働科學のページ
    7. 次号予定・編集雑記

巻頭言 俯瞰
地域のものづくりと公設試験研究機関の役割 松岡 敏生

全国には公設試験研究機関(公設試)と呼ばれる地方自治体が設置する公的な試験研究機関があります。公設試の業務分野は、工業系をはじめ、農業や林業など第一次産業から第三次産業系の試験場があり、三重県では、工業研究所、農業研究所、畜産研究所、林業研究所、水産研究所、保健環境研究所があります。工業系の公設試は、地域の産業をはじめとした産業支援、産業振興が主な業務であり、企業等からの技術相談、試験研究、依頼による試験分析、試験機器の開放、研修等の人材育成などを行っています。公設試は各地域の地場産業に密着しており、三重県では、工業全般を対象とした工業研究所の他、鋳物に代表される金属を専門的に扱う金属研究室、萬古焼、伊賀焼など陶磁器を扱う窯業研究室があります。他地域でも、繊維試験場、セラミック研究所、インテリア研究所など技術分野に特化した公設試があります。いずれの機関も概ね職員数は少なく(三重県は約50名)、各専門分野で数名、分野によっては近い専門の職員が協力して対応しています。

公設試はそれぞれの自治体により独立に運営されていますが、一方で、技術面を主とした全国や近隣地域の公設試のネットワークが構築されており、専門性が弱い分野ではこのネットワークを活用しています。例えば、医療福祉分野では、産業技術連携推進会議(産技連)のライフサイエンス部会・医療福祉技術分科会により、医療・健康・福祉技術に関する情報交換、技術交流を行っています。その中でも、人間生活工学研究会では、人的なネットワークに加え、東京都立産業技術研究センターが中心となり、全国の公設試の人間生活工学機器のデータベース化を図り、公設試の活発な横連携で企業からの相談、課題に対応しています。他に、公設試が中心となり日本人間工学会でのシンポジウム「地域におけるものづくりと人間工学」等を企画して、情報交換、技術交流を行っています。

さらに、公設試だけでは解決できない課題では、大学等の研究機関と連携して課題の解決を図ります。大学の大規模な設備、高いレベルの研究は魅力的ですが、企業にとってはハードルが高く、また、研究の専門性が高いために、企業のニーズをうまく伝えないと、大学の技術が活かされません。そこで、公設試が大学と企業の橋渡しを行い、企業の技術課題を整理して大学に伝え、また、大学の研究シーズを噛み砕いて企業に伝え、さらに公設試の技術シーズも加え、産学官連携による課題解決、新製品開発を支援します。例えば、静岡県工業技術研究所では、一般社団法人日本人間工学会の専門家と協働して、地域企業が人間工学を取り入れた福祉機器等の新製品開発を支援した取り組みがあります。

日本のものづくりは、地域の中小企業が支えているといわれていますが、そのものづくり技術を有する中小企業、地域産業を支援することが、公設試の役割です。公設試と大学や国立研究所を病院に例えると、大学、国研は高度な総合病院で、公設試は地域のかかりつけのクリニック(町の開業医)とよく言われます。われわれ公設試は、地域の企業の身近なクリニック(公設試)として相談を受け、総合病院や専門分野の技術ネットワークを活用して、さまざまな課題の解決の糸口をつかんでいただけるよう取り組んでいます。ぜひ、公設試をご利用ください。

松岡 敏生(まつおか としお)
三重県工業研究所 プロジェクト研究課 主幹研究員兼課長

三重県工業研究所
http://www.pref.mie.lg.jp/KOUGI/
〒514-0819 津市高茶屋5-5-45

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