人々が健康で安心して働ける労働環境を目指して97年…

労働の科学 73巻4号 労研アーカイブを読む(2)

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書誌情報

  • 定価: 1,200円
  • 体裁: B5判

目次

  1. 巻頭言 俯瞰
    職場実践の変遷に学ぶ研究の進展  [大原記念労働科学研究所]小木 和孝
  2. 特集
    労研アーカイブを読む(2)
    1. 後ろを向いて,前に進め! ‐アーカイブで漕ぎ出す,労働科学の海へ‐ [ひらの亀戸ひまわり診療所]毛利 一平
    2. [生活時間調査]社会科学的労働科学? 生活時間調査研究をめぐって [中央大学]鷲谷 徹
    3. [労研の社会科学研究]労研社会科学の軌跡から見えてくるもの(下) [大分大学経済学部]石井 まこと
    4. [工場災害]何を思って論文にしたのだろう ‐工場災害の原因‐ [大原記念労働科学研究所]福成 雄三
    5. [農業労働]労研の農業労働研究 ‐その軌跡と社会的意義‐ [明治大学]井上 和衛
    6. [産衛]労働科学と産業衛生 [中央労働災害防止協会 大阪労働衛生総合センター]圓藤 吟史
    7. [睡眠を測る]労働科学者,睡眠の質を「見える化」する ‐『労働科学』誌における睡眠測定の変遷といま‐ [大原記念労働科学研究所]佐々木 司
    8. [労働衛生工学]労働環境の有害物の測定 [早稲田大学理工学術院]村田 克
  3. Graphic
    1. 安全な運行とドライバーの健康のために 4[見る・活動](87)‐輸送事業者の取り組み
       島村中京陸運株式会社
  4. Series
    1. 産業安全保健専門職と活用③衛生工学衛生管理者 谷 直道
    2. にっぽん仕事唄考(55)炭鉱仕事が生んだ唄たち(その55)‐炭鉱城下町の「校歌」と戦争の影③‐ 前田 和男
  5. Column
    1. 第9回 日韓参加型産業安全保健ワークショップ(蒲田)
      近代のモノづくりの原点である町工場で 富樫 恵美子
    2. 織という表現(16)
      安息の地を求めて 阿久津 光子
    3. Information & News
    4. 次号予定・編集雑記

巻頭言 俯瞰
職場実践の変遷に学ぶ研究の進展 小木 和孝

健康に安全に働く職場づくりに改善を積み重ねていくのが、今の産業現場の共通課題になっている。研究誌としての『労働科学』誌アーカイブは、そのユニークな推移からうかがえるように、この共通課題に向けての学際視点からの研究の変遷とあり方を知るよい手立てとなる。

『労働科学』誌は当初から民間研究機関の報告誌としてスタートしたこと、研究所の提唱で結成された日本産業衛生学会前身の日本産業衛生協議会(すぐのちに協会)の機関誌的性格を一時期有した経緯を経ていること、また戦後すぐから産業労働現場の学際研究誌として多彩な現場調査と改善研究交流の場となってきたことから、このアーカイブは、職場実態とその改善のための取り組みを跡づけるのに役立っている。

この産業労働についての広い視野からの実態把握とその改善に役立つ実践討究の両面についての90余年にわたる変遷から、学際的な産業現場研究の現状をみる視点がいくつか見えてくる。とりわけ大切な視点として、(1)働き方の一環としての安全で健康的な職場づくりの共同努力の方向付け、(2)その職場づくりに不可欠な現場で働く人たちの参画、(3)現場の実践経験に基づく有効な手順の3つを挙げることができる。このいずれもが、時代の変遷を反映しながら、労研アーカイブにみる研究報告の基軸に組み込まれている。産業現場の実態からみた有害条件とその予防事例の検討歴から、こうした視点が次第に明瞭になってきたとも、みることができる。

これらの視点は、当初の報告集の時期から戦時中の苦難の時期にかけても、また戦後の経済成長に伴なって多岐にわたる深刻な労働関連健康障害に社会的関心が集中してきた時期をつうじても、大切な原点としてはぐくまれてきたとみたい。特に、近年の過重労働、メンタルヘルスへの関心に触発された広域にわたる職場予防策研究で現場実践に焦点を合わせる視点として重視されている。

産業現場の安全と健康の実態は、じつにさまざまである。実態把握には現場条件にしたがって大きなギャップもあり、現場の取り組みの成否もまた多様に認められる。この多様な実態と取り組みの報告についても、また予防努力とその手順の成果についても、力点のおき方自体に移り変わりがあり、史実としてその変容を学ぶことができる。

労働科学分野の研究誌史に学ぶ上で重要なのが、引き続く視点を生かした現場における良好実践の諸事例から、時代を経て伸びてきた研究の力点のおき方と、現場に応用されている実践手順の解明成果を見てとることであろう。多様化する職場条件に応じた予防策の解明について、その現場労使による参画手続きに及ぶ良好実践の解明とその応用成果が、学際研究誌にも重要な位置づけをもつようになりつつある。こうした多様な職場条件における良好実践を研究テーマとして重視するのは、それぞれの職場条件における包括的予防マネジメントを中核とする国際標準が確立されて以降の国際共通の進展である。労研アーカイブ上のそうした進展を国際共通課題と対比して確かめ検証していくことができよう。この意味の良好実践の位置づけとその応用手順の解明に注力することがこれからも研究誌のあり方として注目される。

小木 和孝(こぎ かずたか)
大原記念労働科学研究所 主管研究員
元ILO労働条件環境局長
主な著書:

  • 『産業安全保健ハンドブック』(編集代表)労働科学研究所、2013年.
  • 『メンタルヘルスに役立つ職場ドック』(共著)労働科学研究所、2015年.

 

今号以前の労働の科学

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