人々が健康で安心して働ける労働環境を目指して96年…

労働の科学 73巻3号 労研アーカイブを読む(1)

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書誌情報

  • 定価: 1,200円
  • 体裁: B5判

目次

  1. 巻頭言 俯瞰
    労研遺産の継承とその活用・発展  [大原記念労働科学研究所]斉藤 進
  2. 特集
    労研アーカイブを読む(1)
    1. [水銀]水銀3題 [ILO南アジアディーセントワークチーム]川上 剛
    2. [労働衛生学史]職業性の疾病はいつ頃から [昭和大学医学部]山野 優子
    3. [高温労働]労研の高温労働研究 [大原記念労働科学研究所]鈴木 一弥
    4. [人間と機械の関係:人間工学,VDT作業]人間と機械は上手くやってゆけるのか? ‐VDT作業に関する研究を例として‐ [大原記念労働科学研究所研究部]北島 洋樹
    5. [労働を測る]エネルギー代謝率の確立 [大原記念労働科学研究所 ]岸田 孝弥
    6. [海上労働]身近で遠い職場の健康管理 [大神労働衛生コンサルタント事務所]大神 あゆみ
    7. [労研の社会科学研究]労研社会科学の軌跡から見えてくるもの(上) [大分大学経済学部]石井 まこと
  3. Graphic
    1. 安全な運行とドライバーの健康のために 3[見る・活動](86)‐輸送事業者の取り組み
       島村運輸倉庫株式会社
  4. Series
    1. 凡夫の安全衛生記(16)「次に備えたい」新型インフルエンザ対応  福成 雄三
    2. 産業安全保健専門職と活用①第一種,第二種 衛生管理者 谷 直道
    3. 産業安全保健専門職と活用②人間工学専門家 松田 文子
    4. にっぽん仕事唄考(54)炭鉱仕事が生んだ唄たち(その54)‐炭鉱城下町の「校歌」と戦争の影②‐ 前田 和男
  5. Column
    1. BOOKS
      『「働き方改革」で過労死はなくなるか 労働現場の取材から』 問われる経営者の意識改革と労働組合への信頼 西山 和宏
    2. KABUKI
      スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』 歌舞伎で生きる人たち その弐―ひとつなぎの大秘宝 湯淺 晶子
    3. Talk to Talk
      世相は鏡 肝付 邦憲
    4. 織という表現(15)
      四方耳(2) 阿久津 光子
    5. Information & News
    6. 次号予定・編集雑記

巻頭言 俯瞰
労研遺産の継承とその活用・発展 斉藤 進

関西における異色の実業家である大原孫三郎により、1921年に岡山県倉敷市にある自社の紡績工場のなかに倉敷労働科学研究所(以下、労研)が設立されました。大原は、労働者のための慈善的な事業ではなく、近未来に即した新しい立場で労働を研究する必要性を認識していました。その後、労研は、わが国における政治や社会情勢が大きく変化し、産業構造が激変するという時代の影響を受けてきました。一民間研究機関が、労働科学という特定の使命を100年近く果たし続けてきた足跡には、驚かざるをえません。今日も、内閣府に認定された公益財団法人大原記念労働科学研究所として東京都で元気に活動を続けています。

労研の設立と研究について、31歳で初代所長となった若き生理学者の暉峻義等が、1936年に発行された『労働科学研究』13巻5号に「回顧十五年」と題して次のように記しています。長くなりますが、「労働科学」の誕生を自ら記した貴重な資料なので以下に抜粋します。

「……大正9年2月余は大原氏に招かれて倉敷に来た。……未だ若かりし研究者にとっては……工場と労働の現実は、餘りにも陰惨なものであった。……余は自らの使命をここに見出し得た。余は大原氏の提言に直ちに従ふの決意をなすことが出来た。科学は現実に培はれて生れる。……かくて産業活動の現実に関する精細なる資料の獲得と、生命機序の自然性の認識のための研究とは、余の使命の遂行に関しての二つの重要なる研究目標とならざるを得なかったのである。(……は筆者が省略した個所)」

所長としての明確な目標と実践する能力を有した暉峻義等は、研究所の機関誌『労働科学研究』を1924年に創刊しました。同誌はその後『労働科学』として刊行が続いており、2018年の今日まで94巻を数えています。

労研では、国の科学研究費補助金を得て、1924年の創刊号から2010年(86巻)までの『労働科学』に掲載された3,000編近くの論文を、デジタルアーカイブとして労研サイトで公開しています。労研のトップページをご覧いただき、右端中段のバナー「労研デジタルアーカイブ―歴史的研究論文から学ぶ」から各論文を検索し閲覧することができます。続く2011年(87巻)から最新号までは、わが国の総合学術電子ジャーナルサイト「J-STAGE」で公開されています。

労研デジタルアーカイブについては、主要な開発者である労研特別研究員の毛利一平氏が2014年の本誌『労働の科学』69巻5号で「労研デジタルアーカイブが目指すもの―文化遺産からサイエンスプラットフォームへ」と題して解説しています。毛利氏が解説記事にサイエンスプラットフォームと副題した理由が、埋もれていた昔々の研究論文を回顧的にみることがアーカイブの目的ではなく、長年にわたり蓄積されてきた膨大な「知」から学び、今に生かせる多くの教訓が得られることにあることだと分かります。実際、『労働の科学』では、2014年(69巻)から最新号の2018年(73巻)まで、「労研アーカイブを読む」と題し、多くの読者がアーカイブ掲載論文を紹介し、現在の視点に基づき再評価するとともに活用し発展させる約40編の記事をシリーズで執筆しています。労働の科学』3月号と続く4月号では、特集号として「労研アーカイブを読む(1)及び(2)」を取り上げます。みなさまに、ご覧いただければ幸いです。

斉藤 進(さいとう すすむ)
大原記念労働科学研究所 主管研究員、理事
認定人間工学専門家(CPE)、国際人間工学連合フェロー
2012年まで一般社団法人日本人間工学会理事長を務める.
最近の論文:・「働き方を科学する人間工学―エルゴノミクス」『労働の科学』68巻1号、2013年.

今号以前の労働の科学

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