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労働の科学 73巻2号 ビル管理と安全衛生

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書誌情報

  • 定価: 1,200円
  • 体裁: B5判

目次

  1. 巻頭言 俯瞰
    病院職場における災害防止と委託業務従事者との連携  [市立豊中病院]入江 基宏
  2. 特集
    ビル管理と安全衛生
    1. ビル管理職場に安全文化の確立を! [日本管財株式会社]前田 充康
    2. ビルメンテナンス業の清掃業務の安全衛生 [公益社団法人 東京ビルメンテナンス協会]島田 良雄
    3. 「ビルを,まるごと,心地よくする。」をコンセプトに多様な安全衛生活動と利用者の安全 [三菱電機ビルテクノサービス株式会社]小川 正寿
    4. 警備業務における危機管理と人材育成 [近畿警備保障株式会社]松尾 浩三
    5. いいコミュニケーションが支える従業員の安全健康とマンション居住者の信頼 [第一カッター興業株式会社]安達 昌史
    6. 防火・防災管理体制の充実で安全なビル管理安全・安心な職場と地域づくり [全国消防職員協議会]村上 直樹
  3. Graphic
    1. 安全な運行とドライバーの健康のために 2[見る・活動](85)‐輸送事業者の取り組み‐
       株式会社ボルテックスセイグン
  4. Series
    1. 局所排気装置の活用が支える職業性疾病の予防(3)最終回社会的な技術基盤構築のために望まれる局所排気装置に関する技術及び法制両面の整備 小野 宏逸
    2. 労研アーカイブを読む(36)現場調査で最も大事なこと 椎名 和仁
    3. 凡夫の安全衛生記(16)「次に備えたい」新型インフルエンザ対応  福成 雄三
    4. にっぽん仕事唄考(53)炭鉱仕事が生んだ唄たち(その53)‐炭鉱城下町の「校歌」と戦争の影①‐ 前田 和男
  5. Column
    1. BOOKS
      『「はたらく」を支える! 女性のメンタルヘルス』80名の専門家が女性のメンタルヘルスを検討することで,心身の健康について包括的に理解できる名著 荒井 稔
    2. 織という表現(14)
      四方耳 ―アンデスの染織 阿久津 光子
    3. Information & News
    4. 次号予定・編集雑記

巻頭言 俯瞰
病院職場における災害防止と委託業務従事者との連携 入江 基宏

労働安全衛生法第1条に法の目的は、「この法律は、労働基準法と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする」と謳っている。ここでいう「労働者」とは労働基準法第9条に規定する「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」とされている。

当院における「労働者」は職員約1,100名いるが、これ以外にも医療事務、清掃、警備、給食、設備管理、物品搬送、滅菌洗浄等業務委託契約により当院で勤務する労働者(以下、委託業務従事者)が約300名いる。この約300名の委託業務従事者との連携を通じた当院の労働安全衛生にかかる取り組みを紹介したい。

当院は、地域の急性期医療を支える医療機関として機能しているが、職員の通勤災害を含めた公務災害・労働災害は例年40件以上発生している。このうち医師・看護職といった医療従事者の災害の特徴として、全体の概ね8割が注射・採血・手術・点滴等の医療行為の中でB型肝炎ウイルス等血液汚染の危険性を伴う針刺し、切創、粘膜曝露事故となっている。

ところが2012年度に、床に落ちている針や、誤ってごみ箱に捨てられた針等により委託業務従事者の針刺し等事故が過去から年間10件程度発生していたことがわかったが、その情報はこれまで病院の安全衛生委員会に報告されていなかった。そこで、2013年度に委託業務従事者の労働災害等の実態の把握及び作業環境の改善を図り、院内における労働災害を未然に防止することを目的として、病院の安全衛生委員会とは別に安全衛生委員会の委員・事務局と一部委託事業者の代表者とで構成する「市立豊中病院業務委託事業者安全衛生連絡会議」を設置し、3ヵ月に1回会議を継続し現在に至っている。

市立豊中病院業務委託事業者安全衛生連絡会議の取り組みとして、①災害発生状況を含めて病院の安全衛生委員会に内容報告をし、委託業務従事者との情報共有を図る、②委託業務従事者の災害発生状況の把握・確認・各現場への情報提供により、教育・再発防止対策を行う、③清掃事業者に各病棟ナースステーションや病室で床に放置されている針の発見報告を依頼し、その結果を安全衛生委員会及び各現場へ情報提供を行うことで自浄作用としての再発防止につなげる等を継続して行っている。

その結果、委託業務従事者の針刺し等災害件数が年10件程度から2件以内に減少、床に放置された針の発見報告が月3件程度から1件以内に減少といった数字上の効果が生まれた。それと共に、医療スタッフの針刺し等事故の減少にまでは至らないが、針等の廃棄に対する意識の向上に繋がり、何より課題は多いながらも僅かながらでも委託業務従事者とお互い顔の見える関係が構築でき、委託業務従事者を含めた「労働者」の安全と健康の確保に一緒に取り組むことができることが、大きな喜びとなっている。

入江 基宏(いりえ もとひろ)
市立豊中病院 事務局 総務企画課 課長補佐

今号以前の労働の科学

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