人々が健康で安心して働ける労働環境を目指して96年…

労働の科学 72巻10号 次世代の働き手に向けた安全衛生教育

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書誌情報

  • 定価: 1,200円
  • 体裁: B5判

目次

  1. 巻頭言 俯瞰
    未来の働き手は何を必要とするのだろうか? [江口労務安全衛生サポート]江口 剛史
  2. 特集
    次世代の働き手に向けた安全衛生教育
    1. 社会人になる前の若者に対する安全教育 [株式会社JPハイテック]川野 政彦
    2. 「教育・人材育成方法の研究」における新規プロジェクト試行 [大原記念労働科学研究所]池上 徹
    3. ゲーム要素を取り入れた若年者向け安全教育の取り組み [大原記念労働科学研究所]松田 文子
    4. 新入社員研修で得られる効果と役割とは? 新入社員育成の実践現場より [未来楽舎]平山 淑子
    5. “次世代の働き手”に向けた安全・衛生教育 小学校における発達段階に応じた安全・衛生への意識強化の取り組み [武蔵野大学通信教育部]山崎 浩一
    6. 水難事故を科学するとUITEMATE:ういてまてにたどり着く [一般社団法人水難学会]斎藤 秀俊
  3. Graphic
    1. CSRがつなぐ地域社会と中小企業 46[見る・活動](81)
      さいたま市CSRチャレンジ企業認証企業 株式会社北伸
  4. Series
    1. 労研アーカイブを読む(32)作業の評価から職務の評価へ 1 働のエネルギー代謝に関する研究とその現代的意義(その1) 岸田 孝弥
    2. GP 広がる良好実践(27)ビル総合管理における事故・災害の低減さらに撲滅への挑戦 すべての現場に「安全文化」の定着を目指して 前田 充康
    3. 凡夫の安全衛生記(13)「シミュレーション」予防志向の健康管理 福成 雄三
    4. にっぽん仕事唄考(49)炭鉱仕事が生んだ唄たち(その49) 戦争と炭鉱社歌② 前田 和男
  5. Column
    1. BOOKS
      『「中だるみ社員」の罠』 キャリア停滞の克服を考える良い契機に 水野 基樹
    2. 織という表現(10)
      アンニ・アルバース 阿久津 光子
    3. 第42回日本超音波検査学会学術集会
      超音波検査者が健康に働くための環境改善の取り組み 鈴木 一弥
    4. KABUKI
      『極付 幡随長兵衛』 歌舞伎で生きる人たち ― 人は一代 名は末代 湯淺 晶子
    5. Information
    6. 次号予定・編集雑記

巻頭言 俯瞰
未来の働き手は何を必要とするのだろうか? 江口 剛史

定年を過ぎて思うことは、これからの働く場において、今の安全衛生の取り組みがそのまま通用するのかということである。私たちは、次世代を担う人材に、何を伝え、どう貢献できるのだろうか。

安全衛生と一口に言うが、安全と衛生では、多少、特色に違いがある。よく、安全に比べ衛生は難しいといわれるが、安全の問題は外観を見れば分かる場合が多いのに対して、衛生の問題は見た目では分かりにくく、すぐには症状が出ずに何年も経過したのちに発症する場合も少なくない。仕事場を離れての私的な生活も要因として関係してくるばかりか、影響への個人差も大きい。また、安全は経験がかなり支配的という印象があるが、衛生は経験に加えて予防医学を中心とした医学的知識、化学や物理を中心とした工学的知識も必要となる。

こうした違いを認識しつつも、いざ、労働災害防止対策となると、安全と衛生は、切っても切り離せない関係にある。私は、労働科学研究所が2005年から約10年にわたり育成してきた「産業安全保健エキスパート養成コース」を第7期生として修了した。そこで強く印象に残ったことは、安全と衛生と環境は一体だということである。働く場で発生する事故やヒヤリハットなどの事象は、多くの場合、その原因に安全、衛生、さらには環境のそれぞれの要素が絡み合っている。よって労働災害防止対策を考える上でも、これらを一体に捉えていく必要がある。

この前提に立って、改めてこれからの安全衛生を考えてみる。わが国における今日の産業界は、女性を活用することや、雇用延長などでベテランを活用することに積極的に取り組んできた。業種によっては、多くの外国人が活躍している。それでも労働力不足は解消していない。今後は、疾病を抱えている人、障害者などの雇用も、ますます促進されることだろう。そのような時代にあって、安全衛生への取り組みは、このままでよいのだろうか。

私が思う働く場における理想の姿は、「いつも活き活き働きがいのある状態」である。そのために安全、衛生、環境面から必要な視点として、私なりに整理すると、

  1. 1 安全衛生の大切さを良くわかっている。そしてそれを失うことがどのようなことかをよく理解している。
  2. 2 自ら安全衛生の確保ならびに向上を目指して積極的に取り組む情熱を持っており、対策および対応を講じられる。
  3. 3 安全・衛生・環境を総合的に捉え判断できる。
  4. 4 得られた知識と経験を周囲に拡げられる。
  5. 5 国内外の社会情勢に目を向け情報収集を怠らずそれらを踏まえた対応ができる。
の5点に集約できる。このことは、時代が移り変わっても、普遍なのではないかと思う。

 

今は、多様性の時代でもあり、「個」を大事にする時代でもある。この様態は、まだまだ続くであろう。その時代性に適合するために、あるいは、先取りするために、安全衛生に関しても普遍的な事柄を意識しながら、必要とされる今どきの方法を加味して取り込んでいく必要がある。

今号の本誌の特集は、次世代に向けた安全衛生教育である。学齢期からの新入社員まで、その世代に応じた安全衛生の取り組みが紹介されている。こうした新しい手法によって、未来の働き手が「いつも活き活き働きがいのある状態」であり続けることを期待したい。

江口 剛史(えぐち たけふみ)
江口労務安全衛生サポート
産業安全保健エキスパート(7期)