人々が健康で安心して働ける労働環境を目指して96年…

労働の科学 72巻7号 安全運行力を高める労務・健康管理最前線

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目次

  1. 巻頭言 俯瞰
    「事業用自動車総合安全プラン2020」への期待 平井 隆志 [国土交通省]
  2. 特集
    安全運行力を高める労務・健康管理最前線
    1. 安全運行サポーター協議会が目指すもの 酒井 一博
    2. 「体調予報®」に取り組む ドライバーの体調を加味した事故防止モデルの構築に向けて 北島 洋樹
    3. 安全運行を支えるドライバーの健康・未病対策 新藤 幹雄
    4. デジタコを活用した労務管理のこれから 増田 一英,佐保 博樹
    5. 貸切バス事業の安全・安心の向上を目指して 船戸 裕司
    6. 危機に瀕する物流業界 急務のトラックドライバー労働環境改善 藤原 秀行
  3. Graphic
    1. CSRがつなぐ地域社会と中小企業 43[見る・活動](78)
      さいたま市CSRチャレンジ企業認証企業 有限会社プラナエンジニアリング
  4. Series
    1. 凡夫の 安全衛生記(10)「耳の孔」騒音は悩ましい 福成 雄三
    2. にっぽん仕事唄考(46)炭鉱仕事が生んだ唄たち(その46) 北海盆唄番外編 前田 和男
  5. Column
    1. ACED2017/日本人間工学会第58回大会 2つの学会併催で活発な交流 前田 和男
    2. 第52回人類働態学会全国大会 広い視点から生活の改善を図る 中世 景三
    3. 織という表現(7)
      ジャカード織機とコンピュータ 阿久津 光子
    4. BOOKS
      1. 『小倉昌男 祈りと経営』  相越 かける
      2. 『これも修行のうち。』  長須 美和子
    5. Talk to Talk
      敬うは(2) 肝付 邦憲
    6. Information
    7. 勞働科學のページ
    8. 次号予定・編集雑記

巻頭言 俯瞰
「事業用自動車総合安全プラン2020」への期待 平井 隆志

国土交通省自動車局は、2009年、事業用自動車の総合的な安全対策をとりまとめた「事業用自動車総合安全プラン2009」(以下「プラン2009」という)を策定しました。事業用自動車に特化した総合的な計画は、このプラン2009が最初であり、また、世界的にも例を見ないのではないかと思われます。

プラン2009は、各種対策をとりまとめただけでなく、10年間で事業用自動車が原因となる交通事故死者数と人身事故件数を半減・飲酒運転ロという定量的な目標を設定するとともに、PDCAサイクルにより定期的にフォローアップを行い、必要に応じて対策の見直しを行うという組みを構築したことに大きな意味があると考えています。特に、フォローアップについては、国土交通本省のみならず、地方運輸局を中心とした各地域でも、また、バス、タクシー、トラックといった業界団体においても独自に実施しており、関係者が継続的に事業用自動車の安全対策に取り組んでいくという仕組みをつくったという意味でも非常に価値のある計画であったと思っています。プラン2009により、事業用自動車が原因となる交通事故死者数は154人減少(2008年517人↓2016年363人)、人身事故件数は約2万3千件減少(2008年56、305件↓2016年33、336件)するなど一定の効果をあげているものと考えています。

その一方、根絶を期すべき飲酒運転が未だ数多く発生していること、走行中の携帯電話・スマートフォン操作等の危険行為も依然として散見され、さらに、2016年1月の軽井沢スキーバス事故や3月の山陽自動車道八本松トンネルにおけるトラック追突事故など、社会的影響の大きい重大事故が発生しています。2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催され、訪日外国人の増加等に伴う人流や物流の一層の活発化も予想される他、自動運転の実現のために必要となる先進安全技術の進展、超高齢化社会を背景とした高齢運転者対策の必要性など、交通社会を取り巻く環境変化が急速に進んでいます。

このようなことを背景に、国土交通省自動車局では、プラン2009に代わる新たなプランとして「事業用自動車総合安全プラン2020」(以下「プラン2020」という)を策定し、本年6月30日に公表したところです。このプランは、第10次交通安全基本計画と同様、平成32年度(2020年度)を計画期間とし、2020年までの死者数・人身事故件数について、新たにバス、タクシー、トラックといった業態毎の目標を設定しました。プラン2020は、副題にもある通り「行政・事業者・利用者が連携した安全トライアングルの構築」により事業用自動車の安全性の一層の向上を図ることを目的としています。今まで実施してきた行政、事業者の安全対策を一層促進することは勿論のことですが、歩行者や自転車利用者を含めた道路利用者の方にも、積極的に安全対策に協力していただこうという考え方です。

安全対策の取り組みは一朝一夕にその効果が目に見えない場合も多く、すべての関係者が不断の努力を続け、その積み重ねが相互に連携することで大きな効果をもたらすことになると思います。「すべての関係者が不断の努力を続ける」よう、関係者に継続的に働きかけ続けることも行政の重要な役割ではないかと考えています。プラン2020が世界一安全で安心な自動車交通社会の実現に寄与することを期待しつつ、本稿の結びとさせていただきます。

平井 隆志(ひらい たかし)
国土交通省 自動車局安全政策課長
1990年4月運輸省入省、地域交通局陸上技術安全部自動車整備課、自動車基準認証国際化研究センタージャカルタ事務所長を経て2015年7月より現職