財団法人労働科学研究所ホー ムページ出版労働科学第79巻
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79巻1号表紙

勞働科学 79巻(2003年)

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79巻1号掲載論文抄録

鶴原亜紀,井戸啓介,北島洋樹.
高年齢 VDT 作業者の作業実態と疲労自覚症状
労働科学,79(1),1〜16,(2003)
Tsuruhara, A. et al. Work Conditions and Subjective Fatigue Symptoms of Aged Visual Display Terminal Workers.
 20 歳から 64 歳の VDT 作業者 168名に対し,疲労自覚症状,作業時間,使用機器などに関する質問紙調査を行った。その結果,疲労自覚症状の多くは,50歳以上の高年齢群よりも 50歳未満の群で訴えが高かったが,VDT作業に伴う要因によって訴えが高くなる傾向は,高年齢群でより多くの自覚症状について明らかだった。また,「近くの物が見えにくい」という症状は高年齢者特有と考えられた。全体として,高年齢群では,目だけでなく,筋骨格系,神経・精神的な疲労自覚症状に対しても画面や表示の状態が関係することが示された。また,高年齢群は,文字の小ささや見づらさ,技術的な困難を感じていることが明らかになった。(図1・表 7)(自抄)
小松英海.
睡眠不足と安全の関係についての文献的資料
労働科学,79(1),17〜29,(2003)
Komatsu, H. Reference Data about the Relationships between Sleep Loss and Safety.
 睡眠と関連した事故による労働者の身体・生命の安全,経済的損失の関連性が指摘されている。本論文では,睡眠不足がこれまでどのように規定されてきたか,睡眠不足と安全の関係がどのように扱われてきたかを概観している。睡眠不足のために生じた眠気により,作業者のパフォーマンスが低下する。夜間の作業中に眠気を感じている労働者は多く,事故リスクも高い。多くの部分断眠実験では,通常の睡眠時間を基準として,睡眠不足の「不足」量ではなく,睡眠時間自体(4,5時間)を設定していた。結果として,2時間以上の不足で,眠気が高まり,パフォーマンスを低下させた。睡眠は生活全般にかかわる総合的な問題であり,労働を含めた生活のサイクルの中でできる限り総合的にとらえなければならない。(図4・表 2) (自抄)

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79巻2号掲載論文抄録

金原清之,福原 驍,辻 克彦.
プッシュプルブース換気装置の換気性能
労働科学,79(2),73〜80,(2003)
Kanehara, K. et al. Performance of a Push-Pull Booth Ventilation System.
 人が出入りできる建築ブース型局所排気フードの天井に,空気の吹出し口を設けた換気装置をプッシュプルブース換気装置と呼ぶことにする。このような装置は,法規上開放式プッシュプル型換気装置に分類され,一定の構造・性能要件を満たすことが求められている。本報では,この装置における吸込み口の位置や吹出し・吸込み風量比を変化させて,ブース内の気流の様子を基に,装置の適正な形状,風量比等を追究した。この結果,適正な設計を行うことにより,現行の告示で定められている性能要件の換気区域の範囲を超えた部分についても,有効な換気を行うことができることがわかった。(図11) (自抄)
栗田明良.
介護保険制度と農山村の高齢者福祉問題 ─新介護システムは如何にして「社会保障改革の橋頭堡」たり得たか─
労働科学,79(2),81〜101,(2003)
Kurita, A. Nursing Care Insurance System and Welfare Issues for The Aged in Rural and Mountainous Areas.
 制度発足までの「長い道程」を経て導入された介護保険ではあったが,周知のごとき発足直後の混乱を除いて,第1期3年間の事業運営は「概ね順調」に推移してきたかに見える。本稿は,導入直前まで「頑強に」抵抗していた市町村,とりわけ施設介護基盤の整備が相対的に進んでいた中山間地域の市町村が何故に,また如何にして保険方式による制度の導入を受容するようになったのか,その確たる根拠をめぐって,可能な限り制度設計に係わる具体的・実証的な分析を試み,保険料率の高騰が伝えられる第2期事業期間を展望してみたものであり,私にとっては拙著『中山間地域の高齢者福祉』の延長線上に位置する,介護保険事業第1期のいわば私的総括でもある。(図6・表10) (自抄)

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79巻3号掲載論文抄録

松元 俊.
夜勤時の覚醒水準維持に必要な仮眠の取得時間と時刻条件
労働科学,79(3),139〜146,(2003)
Matsumoto, S. Length and Timing of a Nocturnal Nap in Maintaining Alertness during a Night Shift
 本研究は夜勤全体を通した覚醒水準の維持に必要な仮眠の取得条件を探ることを目的とした。特 に仮眠時間と時刻の効果について調べた過去の知見より考察を行った。その結果,仮眠時間と時刻条件の関係は夜勤の前半にとる仮眠でその後の覚醒水準を維持するためには120分以上必要であることが示唆された。また,夜勤の後半にとる仮眠でその後の覚醒水準を維持するためには60分程度でも足りることが示唆された。しかし,夜勤全体の覚醒水準の維持を考えた場合は,夜勤の前半で60分程度の仮眠しかとれない場合の仮眠後の覚醒水準と,夜勤の後半に仮眠がとられる場合の夜勤開始から仮眠までにおける覚醒水準の程度について考えなければならない。(表1)(自抄)
吉川 徹, 小木和孝, ラムジー・クマール, 川上 剛.
ネパール王国の労働組合における対策指向型労働安全保健トレーニングプログラムの開発と実践
労働科学,79(3),147〜160,(2003)
Yoshikawa, T. et al. Development and Practice of the Participatory Action-Oriented Training Programme of Occupational Safety and Health for Trade Union in Nepal.
 労働組合における対策指向型労働安全保健トレーニングプログラム(POSITIVE : Participation Oriented Safety Improvements by Trade Union InisistiVE)をネパール労働組合連合とともに開発し,開発途上国における参加型の安全保健改善研修手法について検討した。地元の改善事例を収集して教材とマニュアルを作成し,4日と1日の2種類の短期研修とトレーナー教育プログラムを実施した。自主的な安全保健活動実践トレーナーが育成され,労働組合主導による多くの改善事例が報告された。この経験から,1)現場改善実例に基づく改善通則の習得,2)低コスト改善視点の対策指向型チェックリストの活用,3)グループ討議を多用した短期研修とトレーナー教育の組み合わせ方法が有効であることが確かめられた。(図2・表10)(自抄)
<訂正とお詫び>(79巻4号掲載)
79巻3号所収の吉川徹ほか「ネパール共和国の労働組合における対策指向型労働安全保健トレーニングプログラムの開発と実践」の表題および本文中に「ネパール共和国」とあるのは「ネパール王国」の誤りでした。訂正してお詫び申し上げます。

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79巻4号掲載論文抄録

赤堀正成
『新時代の「日本的経営」』における構想と実践
労働科学,79(4),199〜218,(2003)
Akahori, M. Current Employment Practices and Their Implications for Improving Working Conditions in Japan.
 旧日経連『新時代の「日本的経営」』は「終身雇用慣行」と「年功賃金制度」を廃して非正規雇用のこれまで以上の活用と成果主義の導入を唱えたことで注目された。この報告書は企業統治論レベルの構想は打ち出したものの社会統合レベルでの構想を持ち合わせていない。
 この間「終身雇用慣行」と「年功賃金制度」に変化が生じてきていることは明らかである。しかし個別企業はさておき,マクロレベルでは巷間言われるほどの大きな変化はない。本稿は,こうした状況を踏まえ,終身雇用慣行と年齢別賃金が対立軸として存在する根拠と可能性を論じ,それらが,企業社会成立以前の,戦後労働組合運動の遺産であることを指摘した。(表5・図6)(自抄)
江口淳子
除草時の作業姿勢の違いが腰部・下肢筋活動へ及ぼす影響
労働科学,79(4),219〜223,(2003)
Eguti, A. Influence of the Difference in Working Postures during Weedeng on Muscle Activities of the Lower Back and the Lower Extremities.
 本研究の目的は,除草作業時の姿勢の違いが腰部・下肢筋活動へ及ぼす影響を,表面筋電図を用いて比較・検討することであった。対象は腰部疾患のない健常男性12名とした。除草作業姿勢は中腰位,蹲踞位,右片膝立ち位,椅子座位の4つの姿勢とした。表面筋電波形は,腰部脊柱起立筋,大腿直筋,前脛骨筋,外側腓腹筋から導出した。各筋ごとの筋活動量を4つの姿勢で比較・検討した。その結果,どの筋も椅子座位で筋活動量が最も小さかった。従って,除草作業時には椅子座位が筋疲労をもたらしにくい最も好ましい姿勢ではないかと考えられる。(図1・表1)(自抄)

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79巻5号掲載論文抄録

追悼・小山内 博 医学博士
Obituary
熊澤光正
新入社員の自覚疲労に関する研究(第1報) ─立位作業姿勢を主とする新入高卒女性従業員における自覚疲労の推移─
労働科学,79(5),251〜260,(2003)
Kumazawa, M. Fatigue Feelings among New Employees(Part I): Weekly Changes in Fatigue Feelings among Newly Employed Women Doing Standing Work.
 繊維加工業に新たに就業した高卒女性従業員13名を対象に,入社直後から16週間にわたり,「自覚症状しらべ」を用い,自覚疲労について経時的調査を行った。作業姿勢は立位である。この結果,自覚疲労は,就業直後増加し,第1週3日目に訴え率は23.5%とピ−クをむかえ,2週間程度は高い値を示す。疲労のタイプからも,仕事への緊張感が示される。日内変化率も有意に高く,疲労の蓄積が見られる。その後は低下するが,ゴールデンウイーク休業後に再度,高値を示す。この結果,作業への適応は2週程度で行われるが,ゴールデンウイークによる自覚疲労の増加への適切な対処の必要性が指摘される。(図4・表3)(自抄)
小松英海
鉄骨建方作業の実態の記述
労働科学,79(5),261〜272,(2003)
Komatsu, H. Description of the Flow of Work in Steel Frame Erection.
 建設作業では,常に変化する環境に,安全設備を構築・解体しつつ作業が進められている。多様な職種の作業が平行して進められる建設現場において,「鉄骨建方」は建物の骨格を作る最も危険を伴う作業であると同時に,後続の作業のための足場など安全設備を確保する重要な役割を担っている。本論文では,のべ7日間にわたる2カ所の現場についての観察およびそのビデオ映像の解析から,鉄骨建方作業を中心に,関連諸作業も含めた上で実態を把握する中で,作業の効率あるいは危険状況との関連を考察する。地上階での事前の作業が安全・作業効率双方にとって重要である。(図8)(自抄)

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79巻6号掲載論文抄録

鈴木一弥,北島洋樹,飯田裕康
大型トラックによる夜間長距離走行時の眠気発生に伴う瞬目・眼球運動指標の変化
労働科学,79(6),299〜316,(2003)
Suzuki, K. et al. Changes in Oculomotor Measures Induced by Sleepiness during Overnight Truck Driving
 トラックドライバーの眠気の指標としての眼球運動測度の有効性を東名高速道路の実走行で検討した。川崎−岡崎間の往復走行を22 : 00−翌朝6: 00に実施し,眼電図による瞬目の頻度と持続時間およびサッカード頻度,主観的眠気,副次行動を分析した。復路に急遽仮眠が取得された2例では,その数十分前に主観的眠気の増加と頻繁な副次行動がみられ,瞬目持続時間の増加,サッカード頻度の低下傾向がみられた。瞬目の頻度に関しては増加傾向の一方で一時的な消失もあった。また,眠気の発生時の瞬目に頻度の増加のみが生じた例もあった。実走行の眠気の評価においては瞬目の持続時間と頻度,サッカード頻度などの複数指標の観察が必要と思われた。(図5)(自抄)
神戸美輪子
医療事故防止を目的としたインシデントレポート書式の検討
─現在のレポート書式の問題点と与薬のプロセスを明らかにする新書式の提案─
労働科学,79(6),317〜329,(2003)
Kambe, M. Forms and a Suggested Report Form Useful for Clarifying the Process of Drug Administration
 58病院の看護部から提供された53種類のインシデントレポート書式を検討した結果,1)事故との兼用や,患者対応の書式となっていたため要因や対策が導かれない,2)個人的要因を挙げてしまって組織の要因や改善点が見出されない,3)要因と対策が結びつけられておらず,いつも有効な組織的対策が導かれるとは限らない,4)ピンポイントのレポートで,当事者のわかる範囲に限定されて書かれるという4つの問題点が考えられた。これらの問題点をもとに作成した与薬インシデントレポートについて,看護師334名から得られた意見では,新たな要因の発見が26%あるなど,今後検討していくことで医療事故防止に有効なものになると考える。(図5・表1)(自抄)

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