財団法人労働科学研究所ホームページ出版労働科学第78巻
労研出版
 労働の科学  労働科学  書籍・雑誌のご注文&ご案内

勞働科学

78巻(2002年)

1号
2号
3号
4号
5号
6号
「労働科学」 隔月発行についてのごあいさつ

78巻1号掲載論文抄録

木村菊二.電動ファン付き呼吸用保護具(PAPR)の性能に関する実験的研究
労働科学 2002;78(1):1〜8
Experimental Studies on the Performance of Powered Air Purifying Respirators.
 実験には半面形面体の付いた面体形PAPRを使用した。性能の評価は試験用人頭に面体を装着して人工呼吸装置を用いた実験及び被験者による曝露実験によって行った。その結果,面体内の圧力が外気に対して常に陽圧に保たれておれば面体と顔面との間に若干の隙間がある場合でも面体内に粒子が漏れ込むことはないことがわかった。
 面体内の圧力をチェックする目的で面体内圧力チェッカーを試作した。このチェッカーによれば面体内の圧力を発光ダイオードの緑色(陽圧)あるいは赤色(陰圧)によって肉眼的に容易に確認することができる。
 さらに,呼吸に伴う吸引流速の変化がろ過材の捕集効率に与える影響についても検討を加えた。(図10)(自抄)

金原清之,桜井 寛,福原 驍,辻 克彦.換気装置からの漏れによる室内汚染と室内換気効率
労働科学 2002;78(1):9〜19
Workplace Pollution Caused by Leakage from a Ventilation System and Ventilation Efficiency.
 近年,地球環境保全等の観点から種々の省エネルギー対策が求められている。労働の場においても,例えば良好な作業環境が保たれることを条件に局所排気装置の排風量を低減させる特例措置が認められている。また,発生源対策としてプッシュプル型換気装置が実用化されている。これらの装置について,一定の性能を確保しながら風量の節減をどこまで行い得るか,換気装置の必要排風量から風量を低下させて室内に有害物を漏らした場合の換気効率を求める方法により検討を行った。その結果,原則として,少しの風量を惜しむよりも,必要排風量を確保して有害物を完全に補足し吸引・排出する法が得策であるとの結論を得た。(図13・表1)(自抄)

関 由起子,前原直樹,宮城恵理子,清水準一,石垣今日子,鈴木民子.医療事故防止対策立案に向けたインシデント事例収集の課題 ―事例の分析結果から―
労働科学 2002;78(1):20〜36
The Problem of the Incident Reporting Method for Planning Medical Accident Prevention : Results of case analyses.
 某総合病院の4つの病棟で報告された与薬業務に関するインシデント事例分析から,事故防止対策に役立つ事例収集について考察した。2週間の間に提出されたインシデントレポート14事例について面接調査を行った。その結果,レポート報告された事例には,インシデントが他者によって発見された事例が多く,間違いの内容も患者への与薬実施過程に限られる傾向があった。また事例分析を行った結果,レポート報告者への面接だけでは与薬業務全体に関わるインシデント発生要因を分析できず,根本的な対策立案には不十分であった。与薬業務全体を検討するためには,既存の業務過程の把握とニアミスを含めた事例収集,事例に関与した複数の人々の視点を踏まえた事例分析が必要である。 (図4・表1)(自抄)

[↑top]

78巻2号掲載論文抄録

吉川 徹,原 邦夫,伊藤昭好,酒井一博.2 つの異なるシャンプー台使用時の美容師の作業姿勢からみた作業負担の軽減効果
労働科学 2002;78(2):57〜65
Yoshikawa, T. et al. Reducing Working Posture Loads of Hairdressers at Two Different Shampoo Tables.
 本研究では,2つの異なるシャンプー台使用時の美容師の作業姿勢からみた作業負担の軽減効果について検討した。
 作業観察と体幹傾斜角モニターを用いた体幹傾斜角の評価からは,後ろ立ち台作業は横立ち台作業に比べ,(1)深い前傾姿勢を保つ傾向にない,(2)同一姿勢,とくに深い前傾姿勢の平均連続保持時間が10分の1と静的な姿勢負担が小さく,また動的な姿勢負担も小さい,(3)体幹伸展動作が約63%,(4)有害作業である「ひねり姿勢」が5分の1であった。また,質問紙票調査からも,後ろ立ち台の導入により身体負担感の減少があったことが明らかであった。このことから,後ろ立ち台の導入はシャンプー作業における作業負担の軽減を介して,筋骨格系健康障害の発生リスクを減少させることが期待できる。(図5・表1)(自抄)

吉田俊明,松永一朗,南 豊彦,井野千代徳,原 一郎.職業性のシックハウス症候群を呈した一例 ― 職場環境を中心に ―
労働科学 2002;78(2):66〜71
Yoshida, T. et al. A Case of Sick Building Syndrome in a Model House - Organic compounds in indoor air -.
 新設の住宅展示場への勤務によりシックハウス症候群を呈した45歳の女性症例を経験し,職場内空気中の41種の化学物質濃度を測定した。n-ヘキサン,トルエン,ホルムアルデヒド等の濃度が比較的高かったが,いずれも日本産業衛生学会の勧告する許容濃度よりも遥かに低いレベルであった。しかし,測定物質の積算濃度は,総揮発性有機化合物の室内濃度暫定目標値として厚生労働省が定める値とほぼ同レベルであった。上記物質の多くは塗料や接着剤等の溶剤として使用され,建材から発生する可能性が高く,竣工直後ではさらに高濃度の曝露が推定された。勤務を離れると症状が改善され,職業性シックハウス症候群を呈した一例と考えられた。 (図1・表1)(自抄)

[↑top]

78巻3号掲載論文抄録

赤堀正成.「野蛮な横断的労働市場」 の可能性 ― 木下武男『日本人の賃金』の検討 ―
労働科学 2002; 78(3):111〜133
Akahori, M. Toward the Progress in Trade Unionism in Japan.
 木下武男 『日本人の賃金』 は,新自由主義改革が 「規制なき 19 世紀型の野蛮な横断的労働市場」を「形成・拡大」することを不可避とみて,それがこれまで社会の安定帯として機能してきた既存の労使関係を動揺させることに着目する。 そして,それが労働者にとって既存の社会のあり方を変えていく好機だ,と主張する。
 本稿は,『日本人の賃金』が主張する,当為としての,職務給別の横断的労働市場を追求すべしという提案とは異なり,好むと好まざるとすでに存在する横断賃率を手掛かりとして,それを当面は企業規模別,ブルー・ホワイト別,年齢別の横断賃率の設定に向けて,とくに若年者の部分で水準を引き上げていく運動が追求されてよいと考える。(図 4)(自抄)

高橋 誠,河合有希子.女性による非雇用型在宅ワークの仕事と生活に関する実態調査
労働科学 2002;78(3):134〜144
Takahashi, M. et al. A Field Survey on Work and Life of Non-employed Women Doing Home-based Work.
 非雇用型在宅ワークを実施している女性を対象に質問紙調査を行い,仕事と生活への影響を分析した。対象者96名の分析結果から,在宅ワークを始めた動機には,専門的技能の発揮,仕事と家庭生活の両立,あるいはこれらの両者を目指したものなどがあった。しかし,継続的な仕事の確保が困難で専門的技能を生かせない仕事が多いこと,納期の余裕がなく深夜作業をせざるを得ないなどの課題があることが示された。仕事と家庭生活の両立が困難なケースも少なくなく,特に就学前の子どもを有す在宅ワーカーでは目指していた育児や家庭生活の充実が得られていないことが多かった。しかし,休日や時間的ゆとりの増加というよりも,専門的知識や技能を向上させ,より高収入の仕事が可能な在宅ワークが望まれていた。(表7) (自抄)

[↑top]

78巻4号

<追悼・藤本 武博士>

前原直樹.藤本 武先生は労研を選び,労研も先生を必要とした
鷲谷 徹.藤本 武博士と労研

掲載論文抄録

高橋 誠,河合有希子.女性による非雇用型在宅ワークにおける健康影響とその要因
労働科学 2002; 78(4):189〜202
Takahashi, M. et al. Health Effects and Relevant Factors in Home-based Work by Non-employed Women.
 女性の非雇用型在宅ワーカーの健康状態,仕事と生活の諸要因と蓄積的な身体的疲労,精神的疲労との関連性を分析した。その結果,在宅ワーカーの約 1/4 が蓄積的な身体的疲労を,1/3 以上が精神的疲労を訴えていた。身体的疲労を従属変数とした重回帰分析の結果,長時間作業,生活の時間的ゆとりのなさ,グレアがあったり静かな環境で仕事ができないといった環境要因が,身体的疲労に結びついていることを示唆する結果が得られた。同様に精神的疲労については,仕事の納期が1週間もなく数日といった短さ,自分の希望する仕事内容と異なること,機器・設備の不十分さや作業場が狭いといった環境要因が精神的疲労に結びついていることを示唆する結果が得られた。(図 1・表 8) (自抄)

原 邦夫,中明賢二.室内で気中に噴霧された化学物質の気中濃度変動に及ぼす揮発性の影響
労働科学 2002;78(4):203〜208
Hara, K. The Effect of Chemical Volatility on Fluctuations of Airborne Concentrations of Chemicals Sprayed in the Air in a Room.
 室内で気中に噴霧された化学物質の気中濃度の空間的・経時的な変動を調べるために,容積 25.4m3の人工気候室内で,市販の家庭用エアロゾル製品を使用した。その結果,揮発性の高い噴射剤は換気による希釈効果に対応した影響がみられたが,比較的揮発性が低い溶剤および有効成分は換気の影響以上に濃度減衰が生じた。沸点および蒸気圧から推測される揮発性の違いが室内挙動に最も影響を及ぼしたものと考えられた。室内で使用される化学物質に関して健康リスクアセスメントを実施する際には,揮発性が高い物質は主に気中濃度に着目し,揮発性が低い物質は気中濃度および壁・床の表面濃度も考慮する必要があると考えられる。(図 4・表 1)(自抄)

[↑top]

78巻5号掲載論文抄録
伊藤昭好, 渡辺明彦.
産業用安全帽の通気性能試験に関する検討
労働科学 2002;78(5):243〜253
Ito, A. et al. A Study on the Ventilation Testing of Industrial Safety Helmets.
 通気孔を頭頂部に開けた改良型安全帽を用いて産業用安全帽の通気性能試験について検討した。人工気候室内で,6名の被験者に自転車エルゴメーターによる筋負荷を 70 分間の熱曝露の間に行わせた。帽体内外の温度,湿度と被験者の心拍数を測定し,頭部蒸暑感を線分法で,全身の温熱感,湿度感,不快感を質問紙を用いて調べた。その結果,帽体内の温度上昇や,被験者の生理的反応には被験帽間での差は認められなかったが,帽体内の発汗に伴う湿度上昇や,頭部蒸暑感には,通気孔のあるものとそうでないものの間に差が認められた。この帽体内外の湿度差は,頭部蒸暑自覚感と相関関係にあり,安全帽の通気性能を反映する物理量とみることができる。(図19・表 1) (自抄)


粟津俊二.
熟練旋盤工の技能・技能獲得過程について ― 研究課題の提案 ―
労働科学 2002;78(5):254〜262
Awazu, S. Skills of an Expert Lathe Operator and His Skill Acquisition Process : A Proposal of Research Themes.
 産業競争力や作業安全は作業者の技能が基盤となっている。これまで,技能は実務を通して自然に獲得されてきたが,自動化や作業の少人数化などの変化により,技能育成を支援することが求められるようになってきた。新しい技能育成方法を開発するには,高技能者の技能獲得過程と先行研究の知見を比較して,技能獲得における未解明の問題を抽出することが第一歩である。本稿では,1名の町工場の熟練旋盤工に対して行った聞き取り調査の内容を紹介する。熟練旋盤工の技能と,聞き取り対象者が技能を獲得した過程に見られる4 つの特徴について過去の心理学・認知科学・労働科学などの研究を踏まえて考察した。最後に,今後の筆者の研究課題について述べた。 (自抄)

[↑top]

78巻6号掲載論文抄録
佐々木司.
オフィス労働のIT化と労働者の疲労
労働科学,78(6),301〜309,(2002)
Sasaki, T. Characteristics of the Worker's Fatigue Posed by the Information Technology at Offices.
 本研究では,日頃からIT機器を用いて業務を行う6名の男性オフィス労働者を対象として1ヶ月間の生活時間調査と活動量の測定を行ない,オフィス労働のIT化の実態把握とそれが労働者の疲労に及ぼす影響を検討した。その結果,疲労感が強い日は労働時間が有意に長く,特に職場外でのIT労働時間が長かった。また職場外でのIT労働が自宅で夕方から夜間に行われる時に疲労感は有意に増大していた。一方,労働者は疲労感が強い日に有意に早く就寝し,長時間睡眠を確保する傾向がみられた。さらに職場外で行うIT労働は,その後にとる睡眠時間の質を有意に低下させた。これらのことからオフィス型IT労働の疲労対策には,労働時間管理に加え労働時刻管理の必要性が示唆された。

大倉元宏・浦川龍平・寺本宏明・佐藤上太・近藤学哉・池上敦子・中川幸士・箭田裕子・田内雅規・村上琢磨・北野正夫.
視覚障害者用道路横断帯の標準的敷設法に関する研究(1)
労働科学,78(6),310〜316,(2002)
Ohkura, M. et al. Guidelines for Installing Tactile Guiding Lines to Assist Blind Pedestrians in Crossing Intersections (Part 1).
 視覚障害者の道路横断を支援する横断帯(通称エスコートゾーン)における利便性を向上させるために,エスコートゾーン直前の歩道上に触覚的手がかり(以下サインブロック)を置くこととエスコートゾーン拡幅の効果についてフィールド実験により検討した。ある駅前の横断歩道にサインブロックとエスコートゾーンに関して3つの敷設条件を設定し,単独歩行に慣れた3名の視覚障害者にそれぞれの条件下で3回ずつ横断を求めた。
 実験の結果,サインブロックの設置,エスコートゾーンの拡幅とも,被験者の横断パフォーマンス(歩行軌跡や横断所要時間)を向上させた。エスコートゾーンの敷設法において極めて重要な知見と考えられる。

村田 克・木村菊二.
個人曝露粉じん濃度のリアルタイム表示および警報システムの開発
労働科学,78(6),317〜320,(2002)
Murata, M. et al. A Personal Dust Monitoring System to Inform and Warn about Real-time Exposure Levels.
 作業環境中の粉じんについて,現場の管理者と同時に作業者自身も,作業中にその場で濃度レベルを把握できる測定システムを作成した。本システムは携帯型の相対濃度粉じん計に,電圧計測ユニットとデータ取得と表示用のコンピュータ類から成る。作業者は粉じん濃度上昇時の警告音を聞くことができ,また同時に時々刻々の曝露濃度が無線で接続した外部コンピュータ画面に表示される。本測定システムの適用試験を鋳鉄作業場において行い,現場の関係者全員が有毒物への曝露状態をリアルタイムに知ることにより,作業方式変更等の対策の提案などをその場で効率良く進められる可能性が示唆された。

[↑top]


労研出版物のご注文はこちらへ労研の出版物のご注文について

↑最上端へ
財団法人労働科学研究所ホームページ出版労働科学第78巻