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58巻
9号目次
特 集:第10次労働災害防止計画への期待
<俯瞰(ふかん) >メンタルヘルスに寄せて:伊藤 庄平
山室 栄三:安全衛生担当責任者として10次防に期待するもの
重松開三郎:10次防をめぐって 〜経営者の視点から〜
西野 方庸:労働者の参画を促進する労働災害防止施策が必要 〜労働組合から〜
下川 強:労働衛生コンサルタントから見た10次防の視点
長井 聡里:産業医活動から見た10次防への期待
荒木 葉子:女性の視点から
古谷 杉郎:NGOの視点から
井上枝一郎:10次防に関する論点を質疑の形で 〜研究者から〜
川上 剛:国際的視点から
<労働衛生コンサルタント事務所の窓辺(4)>木田 哲二:パンドラの箱を開けたあと
<産業医学いまむかし(9)>野村 茂:工場監督官のはじめ
<トピックス> 廣江 晃:福祉施設における品質マネジメントシステムの展開
<Talk to Talk>肝付 邦憲:安全は無言の対話に
<IT産業の舞台裏 その9>サトウヨシフミ:品質管理って……(3)
<熟練技能のヒューマンファクター(1)>鳥居塚 崇:コーヒー焙煎マイスターの技能
<地球サミットから10年 地球市民めざして(6・最終回)>角田季美枝:地球市民として暮らす
<話題>張 振祥:中国の労働時間に関する法文の近年変化および施行の現状
<働く女性を取り巻く環境(1)>中村 艶子:子育て支援取り組みのなかで
<防災シミュレーショントレーニング(2)>平能 哲也:シナリオ作成?゙方に』(百瀬しのぶ)
<Letters to the Editor>宮崎 修行:『現代環境会計』をめぐって…1
<cinema>ハリウッド女優たちによる労働の哲学− 『デブラ・ウインガーを探して』(百瀬しのぶ)
<music>ドタキャンでカラオケボックス??(しかのあきこ)
<books>グローバル化と平等雇用(森田美佐)
巻頭言<俯瞰(ふかん)>メンタルヘルスに寄せて:伊藤庄平
8,275件−−これは,平成14年度に全国19の労災病院に設置している「勤労者心の電話相談」に勤労者や家族などの関係者から職場の悩みで寄せられた相談の件数。この事業は,職場のメンタルヘルスを支援するために平成12年度から開始したが,12年度3,721件(11病院),13年度5,398件(13病院)と毎年度50%前後の高い伸びを示している。原因を見ると,3年間変わらず,1位が上司との人間関係,2位が同僚との人間関係,3位がそのほかの人間関係。また,症状(精神的・体調などの自訴)の1位は,約3割を占める「将来に対する不安」であり,リストラに対する不安を内容とするものが多い。
ところで,職場において,指揮命令権を持つ上司から部下に対する嫌がらせを称して「パワー・ハラスメント」,すなわち「パワハラ」という言葉を聞く。
背景には,世界中の企業を競争相手に,業界の勝ち組として生き残るための激烈な企業間競争とそれに勝ち抜く人材を獲得し処遇しようとする成果主義人事制度の採用があるように思う。
成果を出した勤労者は,高く評価され,手厚く処遇されるものの,成果を出せない勤労者は,低く評価され,成果給が引き下げられる。ただ,成果主義は,勤労者個人だけではなく所属する課または事業部にも適用されるのが通例であるから,成果の出せない本人に対し,上司や同僚,後輩からの指導や励ましはあるだろう。しかし,それが,職務遂行能力の評価にすぎないにもかかわらず,人格評価に置き換えて,「成果が上がらないのは,協調性や気配りがないからだ」となれば,本人にとり非常なストレスになることは,容易に想像できる。それが,8,275件の相談件数とパワハラという言葉になっているのではないのだろうか。
私も含めて,人の上に立つ者は,部下を評価する仕事は大事であるが,人格評価が含まれていないこと,評価も今の職場との相性を示す相対的なものであり,本人の絶対的な職務遂行能力を決定するものではないことを肝に銘じる必要がある。また,評価にあたっては,部下を育てる立場を忘れ選別するだけの態度ではいかがなものだろうか。「早く一人前になってくれよ」という愛情が人を育て,高い職務評価を得る部下を増やすのではないだろうか。
メンタルヘルスは,事業場において重要な産業保健上の課題であるが,解決のために,勤労者個人の資質だけでなく,経営者や管理者は,いま一度,人事制度を含め職場や職務内容に目を向けてはどうだろうか。
(いとう・しょうへい=労働福祉事業団・理事長)
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