財団法人労働科学研究所ホームページ出版労働の科学58巻11号

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表紙「麒麟」drawing by itaru itard

58巻

11号目次

特 集:どう進めるか 労働安全衛生マネジメントシステム

<俯瞰(ふかん) > OSH-MSをすすめるために:小木 和孝

坂  清次:企業の社会的責任と労働安全衛生マネジメントシステム
西野 方庸:労働組合にとっての労働安全衛生マネジメントシステム
原  邦夫:化学物質のリスクアセスメントの実際
木田 哲二:OSH-MSの初期導入時の規格 〜Prime-OSH2003〜

<話題>『製造現場のためのメンタルヘルス』発刊にあたって  〜鈴木安名・労働科学研究所特別研究員インタビュー
<産業医学いまむかし(11)> 野村 茂:健康保険法の登場
<トピックス>百田 康紀:中国進出日系企業および帯同家族の健康管理
<ポイント>成定 宏之:健康診断と生活習慣の捉え方 〜マルチリスク者へ移行しないために〜
<熟練技能のヒューマンファクター(2)> 鳥居塚 崇:きんつばづくり 〜あんこ職人の技能〜
<働く女性を取り巻く環境(2)> 中村 艶子:女性たちの就労意識と安全網
<Talk to Talk>肝付 邦憲:現代を映す実像
<防災シミュレーショントレーニング(4)> 平能 哲也:防災マニュアルのポイント〈上〉
<IT産業の舞台裏(10)> サトウヨシフミ:あの人は今?
<Letters to the Editor> 宮崎 修行:『現代環境会計』をめぐって…3
<シリーズ・防護服(1)>「 防護服」と「作業着」……どこが違うの?(井口成美)
<cinema>ある日突然,余命2カ月と宣告されたら? ─『死ぬまでにしたい10のこと』(百瀬しのぶ)
<music>日本の夏,ロックフェスの夏 (しかのあきこ)
<労働科学のページ>夜勤時の覚醒水準維持に必要な仮眠の取得時間と時刻条件(松元 俊)/ネパール王国の労働組合における対策指向型労働安全保健トレーニングプログラムの開発と実践(吉川 徹 ほか)/プッシュプルブース換気装置の換気性能(金原清之 ほか)/介護保険制度と農山村の高齢者福祉問題−新介護システムは如何にして「社会保障改革の橋頭堡」たり得たか−(栗田明良)
<books>対外関係史研究のあゆみ(野沢 浩)/人口大事典(内海健寿)
<information and news>第10回日本行動医学会学術総会/第37回日本産業衛生学会中小企業安全衛生研究会全国集会/第125回日本医学会シンポジウム

巻頭言<俯瞰(ふかん)>OSH-MSをすすめるために: 小木和孝

 わが国でも,アジア諸国でも,OSH-MS(労働安全衛生マネジメントシステム)を事業場に確立する動きが広まってきた。従来の国別の法基準に従った予防活動と大きく違うのは,国際的に共通した要素をもつシステムづくりを目標にしている点にある。広く各産業に導入する動きをとる国が多い。だから,アジア各国の普及状況にも目が離せなくなった。
 しかし,産業への幅広い導入が始まって数年たったところで,マネジメントシステム普及をすすめるには,しっかりした方向づけが必要なこともわかってきた。それは,一つは大企業も含めて従来行われてきた事業場内安全衛生活動をどう見直すかの「戸惑い」があることと,もう一つには中小規模事業場への普及の推進方針にまだ「障壁」があることによる。この点はOSH-MS普及が早かった2,3の国で中堅企業への普及がすすんでいることを除けば,どの国にも共通している。
 この大企業を含めた「戸惑い」は,法基準をクリアして事業場独自の体制で職業性の災害と疾病を予防でき,快適職場形成もすすめられるのに,形式的な新システム導入や文書化が果たして必要かという疑問によるようだ。他方の中小規模事業場の「障壁」として,新たなシステムを経営管理に重ねて導入し,責任を強化する効果や必要性についての理解が一般に不足していることによる。
 このことは,OSH-MS推進による「実効性」への疑問が大企業にも中小企業にもあることを物語っている。OSH-MS導入により安全衛生活動が活性化した事例が少なくないことからみて,この疑問に適切に応え,「実効性」あるOSH-MSのすすめ方を具体的に示していくことが,今急務となっている。特にわが国で,システムの方向づけをしっかり図って普及に努める必要が強く感じられる。
 OSH-MSが「実効性」をもつのは,(a)リスク管理に必要な情報が事業場内にわかりよく伝わることと,(b)それによるリスク低減策実施の意思決定がきちんと行われるようになる点とにある。
 このためには,(a)のリスク情報面で,対策の必要な危害要因が職場ごとに洗い出されていて,必要な追加対策が指摘されていることが根幹となる。よい情報の流れはグループ討議でつくられるという教訓がここで生きてくる。他方(b)の追加リスク低減策の意思決定面では,同じような危害要因をもつ作業域ごとに管理者と労働者が意思決定に参加する場を設けることが根幹となる。この両面の推進が意識的に図られるなら,大企業でも中小企業でも,戸惑いや障壁は十分克服できるとみたい。克服した良好事例の報告が相次いでいることがそれを裏づけてもいる。
 もう一つわが国で大事なのは,安全リスク管理と健康管理を,この意味の事業場内リスク情報の流れとリスク低減意思決定とで一元化する努力であろう。
 わかりよいリスク情報の洗い出し,同じような危害要因をもつ作業域単位の追加策意思決定をグループ討議と参加型で行うことが,OSH-MSをすすめる試金石とみたい。
(こぎ・かずたか=労働科学研究所主管研究員)

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