財団法人労働科学研究所ホームページ出版労働の科学57巻9号
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57巻(2002年)

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表紙集

<表紙版画>高橋幸子「虫の声」

57巻9号

特集:使える! リスクアセスメント

巻頭言<俯瞰(ふかん)>「リスクはクスリ」(伊藤 昭好)

 職業柄,「リスク」という言葉を使うことが最近とみに増えてきた。これはわが国でも普及が進められている労働安全衛生マネジメントシステムの核となるのがリスクアセスメントであることにもよるし,また当研究所には「職場環境リスク研究グループ」が存在し,筆者もその一員でもあることによる。
 ところが,同じ研究所内でも,研究分野が違えば,「リスク」という言葉のもつ意味が少しずつ異なっていることが最近わかった。そのため,研究者同士でリスクという用語の定義や使い方をめぐって討議をする機会を設けて盛んに議論した。
 一方で,産業現場で使う際にも,リスクといえば,経済や保険のリスクの意味が広く浸透しているので,なかなかピンときてもらえないことが多い。安全衛生の分野では,ISOやJISにおいてリスクやリスクアセスメントという用語の定義を定めたので,これからは共通の概念で使用されていくことになるとは思う。早く定着してもらいたいところであるが,カタカナのままでは落ち着かないというのであれば,ジグ(jig)に「治具」を当てたように,うまい漢字はないだろうか,さしずめ「利少」くらいか?
 なぜこんなことを書いたかというと,リスクアセスメントを実施する主体は誰か,ということに起因する。当然ではあるが,リスクアセスメントは当該現場の人間が行うものである。外部から専門家がやってきて口を出すようなものではない。そうであればなおさら,リスクやリスクアセスメントの概念が,現場の人間の頭の中できちんと理解されていなければならない。
 実はそのことを現場の方々にわかりやすく説明してポイントを掴んでもらうのはなかなか骨の折れることである。具体的でわかりやすいツールが必要となる。
 たとえばKYTも一つのツールといえる。われわれが職場環境改善の際に活用している対策選択型のアクションチェックリストも,リスクアセスメントのための有効なツールの候補である。それぞれの職場ごとに使いやすいツールを選択して,現場に適合したリスクアセスメントの方法を工夫していくことが重要である。
 すべての職場にリスクはある。産業活動が行われている以上,リスクがゼロになることは決してない。ただ無視できるレベルにまで低減することは可能であるし,むしろ,どのようなリスク対策がとられていようとも,つまり残存しているリスクがどのようなレベルであっても,現場の人間が,そのリスクを認識しているか否かが問題となる。リスクに常に気づいていることこそが強みといえるだろう。
 その意味で「リスクはクスリ」なのだと思う。この言葉は,当研究所で協力研究員をお願いしている坂清次氏が,リスクアセスメントの講演でよく使われるフレーズであるが,誠に言い得て妙である。(いとう・あきよし=労働科学研究所 教育・国際協力部長)

9号目次

特集:使える! リスクアセスメント

巻頭言<俯瞰(ふかん)>伊藤 昭好:リスクはクスリ
細田 聡:過去の教訓をリスクマネジメントにどう活かすか〜組織事故から何を学ぶのか〜
原 邦夫:化学物質のリスクアセスメント
酒井 一博:人間工学によるアセスメントと職場改善
木田 哲二:中小企業のリスクアセスメントのポイント
伊藤 昭好:リスクアセスメントを活用した研修の取り組み

<現場の産業保健ノート(4)>堀江正知:リスク・コントロールの実施責任者と労働衛生法規
<新しい働き方を探る(1)>水野基樹:360度評価制度
<トピックス>松田元:派遣労働者における労働衛生問題
<話題>伊藤正人:脳・心疾患予防のための職域モデル〜CPAP(CoronaryheartdiseasePreventiveAssistProgram)の紹介〜
<TalktoTalk>肝付邦憲:横並び意識と,賢人と,
<参加と工夫:快適な自治体職場づくりその21>中村良治:私たちの取り組み「ふれあい収集」に向けた活動
<人事部門における障害者雇用方策(3)>水谷一生:定着率向上のキーポイント
<社会の目>野呂咲人:中高齢者のIT化対応職務の能力診断のあり方
<ポイント>遠藤雄一郎:企業の人事戦略・目標管理制度と労働者のストレス
<保護具なるほど博物誌(2)>防毒マスクの巻(1)(田中通洋)
<cinema>百瀬しのぶ:労働者階級とサッカーの切ない関係
<music>ワールドカップの音は国境を越えることができたのか!?(しかのあきこ)
<books>OLの創造―意味世界としてのジェンダー―(荻野佳代子)
    「心の専門家」はいらない(坂本真士)


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