財団法人労働科学研究所ホームページ出版労働の科学57巻8号
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57巻(2002年)

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表紙集

<表紙版画>高橋幸子「ひまわり」

57巻8号

特集:感情労働と疲労

 「感情労働(Emotional Labour)」という言葉を目にして,読者諸氏は何をイメージされたであろうか。この私たちに聞き慣れない馴染みの薄い言葉は,合衆国の社会学者ホックシールド(Hochschild, A. R.)女史が1983年に上梓した著書“The Managed Heart”においてキー概念として登場する。
 彼女は本書において,航空機の客室乗務員や集金人の労働をつぶさに分析し,いまや多くの労働者が従事する対人サービス労働においては,身体や知識だけでなく,自分の感情をも職務の一部とせざるを得ないことを指摘した。そしてそれがもたらす精神的疎外状態の特徴を捉え,その種の労働を「感情労働」と名づけたのである。
 わが国において彼女のこの著書は,ようやく2000年4月に『管理される心』という題で全訳されている。その道のりは長かったが,訳出されるや否や,雑誌『現代思想』2000年8月号が特集を組み,関連図書も出版されて,にわかに感情労働論議が盛んになったきた。そこで小誌でも,「バスに乗り遅れるな」とばかりに,この新しい概念を取り上げてみようと考えた。その際,本特集のねらいとして二つの点を掲げてみたいと思った。
 まず第1点目は,「感情労働」という新しい概念がどのような背景で生じてきたか,また「感情労働」の本質は何かを,読者諸氏と共有したいということである。そのために「感情労働」についてすでに著作のある武井麻子氏(社会学)と鈴木和雄氏(経済学)にご登場いただき,それぞれのご専門からこの新しい概念を平易に概説していただいた。いわば総論ということである。
 第2点目は,第1点目の総論を受けて,では「感情労働」が現代ストレス社会の労働の特徴を的確に捉え得るのか,またその場合,わが国の労働実態に即して,説得力をもった概念となり得るのかを読者諸氏に問いたいということである。そこでお二方に「感情労働」の内容についてお示しいただいた。その際,カウンセラーの高塚雄介氏には,「感情労働」と「疲労」を関連づけて述べていただいた。また作家の波多野裕子氏には,ホテルの花形である接客業務の取材を通して,「感情労働」が円滑に機能している事例を示していただいた。
 これら二つの具体例は,「感情労働」がもつコインの裏表であり,それがゆえに読者諸氏が「感情労働」への理解をいっそう深め,かつ編集者の問いに答えを導く過分なヒントを含んでいるのではなかいと思う。

目次

特集:感情労働と疲労

<俯瞰(ふかん)>岡谷 恵子:援助関係としての看護の特質
武井 麻子:感情労働と現代社会
鈴木 和雄:接客労働の統制と感情労働論
高塚 雄介:カウンセリングと疲労
波多野裕子:「心」から,「心」へ 〜感情労働を担うホテル業務の現場から〜

特別企画:VDT作業に関する新ガイドライン

小松 克行,荒記 俊一:「VDT作業に係る労働衛生管理に関する検討会」の経緯について
斉藤  進:VDTを巡る国内外動向と新ガイドライン
吉武 良治:作業管理・作業環境管理にかかわるガイドライン
宮尾  克:健康管理にかかわるガイドライン
三浦 正義:新ガイドラインの活用法(その1) 〜新ガイドラインの職場での使い方とその視点〜
埋忠 洋一:新ガイドラインの活用法(その2) 〜それぞれの職場に合った労働衛生管理基準を〜

<保護具なるほど博物誌(1)>防じんマスクの巻(田中通洋)
<ポイント>城内 博:危険有害性情報に関する国際規格
<高齢者のバリアフリー(3)>八田 一利:高齢社会と住宅改修
<ノクトビジョン>鈴木 玲子外:体位変換時の介護者の負担〜ベッド高さによる比較検討〜
<現場の産業保健ノート(3)>堀江 正知:リスクアセスメントと労働衛生法規
<参加と工夫:快適な自治体職場づくり その20>小窪 敏雄:公共民間職場の取り組み〜働きがいのある快適職場づくりのためにオイル交換作業の改善と作業の効率化〜
<ILOの安全保健アジア地域技術協力(3)>川上 剛:成果のあがる技術協力をめざして
<IT産業の舞台裏 その3>サトウヨシフミ:エンジニアの文章に色気を
<社会保険労務士の目(14)>篠原 肇:リストラと労働者
<music>ウマノジュン:すべての音楽産業は,永遠に宇多田ヒカルにアタマがあがらないのか?
<books>派遣・契約社員働き方のルール―これだけは知っておきたい労働法―(野沢浩)
    女の能力,男の能力―性差について科学者が答える―(小泉智恵)
<column>講演「感情労働と看護」を聞いて(松元俊)


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