財団法人労働科学研究所ホームページ出版労働の科学64巻2号

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64巻(2009年)
2号目次

 

絵:中世の街
立体:遠くへ行こう
前田 昌良

特集:異文化の中で働く

<俯瞰(ふかん)>福岡啓介[CSP労働安全コンサルタント]]:人の安全を気遣う心は大丈夫か?
施 桂栄[労働科学研究所]:日中間の仕事価値観の差異
須藤みか[フリーランスライター]:上海ジャパニーズの夢とゲンジツ
松本 学[高井法律事務所]:中国における日本の法律事務所の活動〜日系企業における労働問題を中心として〜
角田光淳[関東学院大学]:ミャンマーの水産物事情と衛生活動
撰 浩三[倉敷紡績(株)]:異文化を楽しみ尊敬する 〜インドネシア,英国での生産工場経験〜
丁野 良助[東レ(株)]:東芝の労働安全衛生マネジメントシステム 〜グループ・グローバル規模での展開〜

<まさかの化学物質による健康障害と対策(7)>河野公一・土手友太郎・臼田 寛・清水宏泰・山鳥江美:フッ素化合物
<産業保健の現場から(1)>千葉宏一:「老年期」の産業保健
<ボストン発アメリカ労働事情(2)>兵頭淳史:『運命の日』の舞台で
<ILOこぼれ話(22)>川上 剛:タイで働く日本人と産業保健
<産業医徒然語り(2)>ツァンイェイ:やさぐれ産業医〈2〉
<海外だより>高橋悦子:世界に広がる参加型改善活動〜メコンデルタ2008 in ベトナム〜
<企業に生かすスポーツ心理学(11)>水野基樹:「あがり」の原因と対処法
<知りたい てくのロジー(47)>増田忠英:触ると画面はなぜ動く?〜「タッチパネル」の技術〜
<産業安全保健エキスパート養成コースNEWS>産業安全保健エキスパート養成コース〜第6期受講者の声〈1〉〜

<大原コレクション散策>『アトリエの前田と里見』中山 巍・作/柳沢秀行・解説
<Cinema>百瀬しのぶ:国籍取得のための偽装結婚,その結末は……?――『ロルナの祈り』
<からだにいい“いいからかん”料理(35)>長須美和子・小田島玉惠:ハッピー・バレンタイン! Lucie(ルーシー)の簡単チョコ・トリュフ
<Books>久保智英:ストレス対処能力SOC



<俯瞰(ふかん)>人の安全を気遣う心は大丈夫か?  福岡啓介

 「冬の夜風が吹く 知らせの半鐘がジャンと鳴りぁ これさ女房わらじ出せ(中略)今宵ウチの人になァ 怪我のないように、(以下略)」。
 この大津絵(節)は、危険な火消しに出かける連れあいを送り出す女房の切ない気持ちをうたっていて、「火事と喧嘩は江戸の華」の裏側でさぞ多くの犠牲者が出たことだろう。
 日本の労働災害での死亡者数は、関係者の血と汗の努力で年々減少してきて、それでも平成19年年度は1,357人を数える。
 厚生労働省は第11次労働災害防止計画(平成20年度〜24年度)において、重点施策8項目の第1に「危険性又は有害性等の調査等」いわゆる「リスクアセスメント」の実施率の向上を掲げている。
 どんな仕事・作業にも固有の危険性または有害性の要因(ハザード)があって、作業とはそのハザードに接近する(何らかのリスクを生じる)ことを求めるものだから、必要な安全対策に不足があると災害が発生するという災害への道筋を示し、予防策として、災害事例やヒヤリハット体験などから職場に潜在するハザードを見いだし、その近辺にあるリスクを調査・特定し、リスクの大きさを見積もり、大きいリスクから順にリスクの解消・軽減措置を講ずることによって災害を防止しようとする手法を「リスクアセスメント」と呼んで、これの実施・普及を図ろうというのである。
 ここで重要なのは「どんなハザードがあるかを見いだすこと」を出発点としていることである。誰でも,「知っている・気がついた危険」に対してのみ対策を考えるのであって、「知らない・気がつかない危険」に対しては何もしないのである。
 先年来世間を騒がせた「瞬間湯沸器での中毒事故」は、燃料ガスが燃焼するときには空気中の酸素を消費するので、換気が不足すると不完全燃焼となって一酸化炭素を生じるというハザードを、関係業者も消費者も軽視(無視?・無知?)し、換気を確保するための安全装置を無効にしてしまうというリスクを冒したことに原因がある。
 さて、東南アジアの某発展途上国では石綿の危険性よりも経済性を重視していて何も規制していない、と数年前に来日した安全衛生の研修生が報告していた。「知らせない」のである。最近中国では「水で薄めた牛乳の窒素含有量を確保する目的」で「メラミン」を配合した結果、多数の乳幼児に健康障害が生じた。危険を知らない振りをしたか? 「幼児がこんにゃくゼリーをのどに詰まらせて死亡した」という事故は「危険を十分に知らせなかった」ことが問題視されて、生産を中止した。
 安全の確保のためには、「ところ」が変わっても、「危険を知る」「危険を知らせる」ことが出発点であるが、その前提の「人の安全を気遣う心・思いやる気持ち」が不足していると「安全」は危うい。
(ふくおか・けいすけ=CSP労働安全コンサルタント、(社)日本労働安全衛生コンサルタント会千葉支部・副支部長)

 
 


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