財団法人労働科学研究所ホームページ出版労働の科学64巻1号

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64巻(2009年)
1号目次

 

絵:バースの街並み
まだ魔法の解けていない男
前田 昌良

特集:第二幕の安全衛生マネジメントシステム

<俯瞰(ふかん)>小木和孝[労働科学研究所]:第二幕の安全衛生マネジメントシステム

町田静治[ILO]:世界における労働安全衛生管理の新たな潮流〜戦略的OSHマネジメントシステム活用〜
安福愼 一[新日本製鐵(株)]:企業におけるOSHMS導入の効果を考える
吉川 徹[労働科学研究所]:アジア諸国におけるOSHMSとベストプラクティス普及への期待
高岡弘幸[旭硝子(株)]:AGCグループのOHSMS〜リスクアセスメントの要点〜
江藤秀邦[(株)東京エネシス]:東京エネシスの統合マネジメントシステム〜安全作業標準に基づくリスクアセスメント〜
円子 裕[(株)東芝]:東芝の労働安全衛生マネジメントシステム 〜グループ・グローバル規模での展開〜

<労働科学と私(49)>中明賢二:現場から学ぶ労働衛生学
<海外だより>熊谷信二:イタリアの石綿管製造工場跡地を訪れて
<産業医徒然語り(1)>ツァンイェイ:やさぐれ産業医
<ILOこぼれ話(21)>川上 剛:国連の仕事を支える安全警備スタッフ
<ボストン発アメリカ労働事情(1)>兵頭淳史:サラダボウルで働く
<Talk to Talk>肝付邦憲:「美しい国」って
<企業に生かすスポーツ心理学(10)>水野基樹:成績不振の原因とは?〜スランプとプラトーの違い〜
<知りたい てくのロジー(46)>増田忠英:高効率・長寿命の蓄電装置〜「電気二重層キャパシタ」の技術〜
<産業安全保健エキスパート養成コースNEWS>産業安全保健エキスパート養成コース〜第5期受講者の声〈2〉〜

<大原コレクション散策>『耕到天』藤島武二・作/柳沢秀行・解説
<Cinema>百瀬しのぶ:ドイツとトルコを舞台に,すれ違う親子たちの再生の物語――『そして,私たちは愛に帰る』
<からだにいい“いいからかん”料理(34)>長須美和子・小田島玉惠:Cloe(クロエ)のフランス・アルザンス風Choucroute(シュークルート)と豚肉煮込み!
<Books>茂木伸之:社会企業家に学べ!



<俯瞰(ふかん)>第二幕の安全衛生マネジメントシステム  小木和孝


 労働安全衛生マネジメントシステムが、各国で共通して安全衛生管理制度の枠組みに取り上げられて、ほぼ10年になる。自主安全衛生管理が法制度のなかに取り入れられるようになったのは、かなり以前からであるが、従来の自主的な取り組み方式が国内法や、産業別の伝統、事業場ごとの特殊性を体現してきた時期が長かったのに比べて、この10年の進展は大いに注目される。国・産業をこえて国際標準準拠のマネジメントシステム構築が共通課題として定着してきたからである。
 この事実は、労働安全衛生マネジメントシステムがOSHMSの略語で共通語となってどの国でも語られ、国際的な動きが各国内に直接反映するようになったことからも裏づけられる。他方、そのOSHMSの普及には、なお制約も少なくない。産業別にみて、また事業場規模別にみて、進展に濃淡が目立つのが現状である。特に小規模事業場を含めての経営管理と一体化したPlan-Do-Check-Actを構成要素とする自主管理サイクルは、これから普及し成果を上げる時期にある。
 この濃淡のある「並走」状態からみて、これからのOSHMS推進には、国・地域や産業・規模の特性に見合った支援策が重要である。ILO(国際労働機関)のOSHMSガイドラインの役割は大きく、各国で国レベルの基準ないしガイドラインにより推進する体制が整えられているが、PDCAサイクルを用いたリスク管理には、現場で適用しやすい手順の提供が共通課題となっている。
 この10年間がOSHMS定着にとっての第一幕とすれば、今からの第二幕では、現場支援策として次の三つが欠かせない。一つは、各国・産業の「並走」が実質的にも安全衛生を一体化したシステム構築として同時進行していくように、中小企業を含めたOSHMS良好事例を検証し、提示していくことである。そして、第二に、包括的なリスクアセスメントが優先対策の指摘までの対策指向で行われるよう、現場条件に見合った具体的な方法を労使にわかりやすく提供することである。第三に、その優先策選定をもとに一次予防に主眼をおいた改善を労使で実践する参加型手順を横に広めることである。
 実は、この三面について、現場の良好実践事例が数多く報告されるようになった。巡視から改善実施までを組み込んだチーム活動、多重リスクにたいする対策選定・実施手順など、安全と健康を別次元扱いせずにリスク対策を洗い出し、効果的な職場改善に結びつけている報告が相い次いでいる。すぐれた参加型改善やリスクコミュニケーション例も報告されている。
 そうした支援をさらに効果的に行うための良好事例の発掘、チェックリストなどのツール開発、グループワークと現場トレーニング推進策、リスクコミュニケーション支援法が重視される。このような包括的で対策指向のリスクアセスメント手順を現場に応用して安全・健康を一体化した一次予防をすすめる人材の養成が、今、急務とみたい。そして、旧来の制約から脱していくうえで、アジア各国のOSHMS成功事例からも大いに学んでいきたい。
(こぎ・かずたか=労働科学研究所主管研究員,元ILO労働条件環境局長)

 
 


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