特集:オフィスのリスクアセスメント〜衛生委員会を生かす〜
<俯瞰(ふかん)>久谷與四郎[労働評論家]:衛生委員会活性化に必須の三点セット
吉川 徹 [労働科学研究所]:ツールを使ってみよう!〜衛生委員会は対策指向で〜
上野満雄 [全日本自治体労働組合]:メンタルヘルスと衛生委員会の課題
城戸尚治 [ヤフー(株)]:新興IT企業における産業保健活動の導入と衛生委員会の活用
白石知子 [東海大学]清水久枝[(株)テクノ中部]:産業看護職が関わる衛生委員会活動
曽根田英雄 [大分県]:大分県における安全衛生委員会活動
藤本恵多 [奈良県平群町]:奈良県平群町の衛生委員会活動
<労働科学と私(45)>大橋信夫:“鈍” “根” “運”〈2〉
<まさかの化学物質による健康障害と対策(5)>千葉百子・高石雅樹: タリウム
<安全・環境の視点で斬る新テクノロジー(5)>村田徳治:ニセ技術と税金
<ILOこぼれ話(18)>川上 剛:ILOのインターン制度
<し・ん・ど・う の科学(9)>前田節雄:手腕振動ばく露軽減対策方法〈1〉〜工具のラベリング〜
<知りたい てくのロジー(42)>増田忠英:IT・環境型社会を支えるエネルギー源〜「二次電池」の仕組み〜
<Talk to Talk>肝付邦憲:問い続けたい働き方と働かせ方
<企業に生かすスポーツ心理学(6)>小川千里:内的キャリアをめぐる試論
<産業安全保健エキスパート養成コースNEWS>産業安全保健エキスパート養成コース〜第5期受講者の声〈1〉
<米国の産業看護活動と日本の産業保健・看護の過去・現在・未来(9)>野崎律子・伊藤美千代: 産業・環境看護師の役割〈1〉
<大原コレクション散策>『風景』ポール・セザンヌ・作/柳沢秀行・解説
<cinema>百瀬しのぶ: 「死」に関わる仕事に就いた,それぞれの男たちの物語――『おくりびと』『イキガミ』
<からだにいい“いいからかん”料理(30)>長須美和子・小田島玉惠:お酢でシャキッと! 野菜の中華あんかけ麺
<books>瀬尾尚聡:人を育てる時代は終わったか 揺らぐ職場の人材育成
<俯瞰(ふかん)>衛生委員会活性化に必須の三点セット 久谷與四郎
トンネル工事火災の人死亡など、3年間になんと人もの作業員を死なせたゼネコンがあった。「小さな不具合は隠す」「事故は仕方がない」そんな体質が蔓延する最悪の会社だった。そのひどさに息をのんだ。ところが、その会社がなんと十数年後に、品質管理では最高の栄誉とされる「デミング賞」を受賞、災害発生率も劇的に下がったと知って、また息をのんだものだ。
会社や組織というものが、果たしてそんなドラマチックに変われるものだろうか? その秘密が「人柱の上に経営は成り立たない」と社長自らが主導して、全社挙げて行った企業体質改善の運動だった。
安全衛生に関するいろんな問題発生の背景には、その時々の社会情勢があり、企業の体質がある。遠回りのようだが、そのような体質を変えることが、一番の早道なのである。
昨今の労働災害の状況を見ていると、突発的な事故や化学物質などによる疾病がなくなったわけではないが、ホワイトカラー職場での過労死や精神疾患といったところへ、戦線が拡大してきている。従来の労災とは違って、目に見えるものがほとんどない形で、その病状は進行している。
では、こうした問題をどのように解決していくか。企業、そして労働組合にとっても大きな挑戦だ。まず、そのことを労使双方が認識することが重要だ。そのうえで、トップが衛生委員会に参加し、職場改善を含めた決断など、トップにふさわしい役割を委員会で果たすことが第一の要件であろう。
衛生委員会をそのように変えていくキーパーソンは、おそらく産業医であろう。何といっても、医学的な知見を豊富に持っているのは産業医だ。多忙なトップを衛生委員会に出席するよう説得できるのも産業医だ。医学的に裏づけられた事実情報と判断が、衛生委員会の討議の場に適切に提供されれば、委員会として打ち出す対策や行動は、より的確なものとなり得る。そういう意味で、衛生委員会の活性化への第二の要件として、産業医の委員会審議への積極的な参加を挙げたい。
第三の要件は、職場の状況についての正確で具体的な情報が委員会審議の場に提供されることである。過労死や精神疾患の背景になりうる職場状況が、情報として衛生委員会に正確に届くことが重要だ。それには、労使双方の委員の、職場での日常的な注意深い観察・点検がものをいう。事務局の事前準備や運営方法の工夫も大事だ。
多忙なトップには、労働災害の背景となるような、いわゆる「裏の情報」は届きにくいことが多い。衛生委員会はトップがそうした情報に接する格好の機会となるはずだ。
トップが変われば状況も変わる。産業医と現場の委員からの情報が、トップの認識を変える要素となろう。「トップ」「産業医」「情報」の3点の具備は、衛生委員会を活性化させ、今日の職場状況改善へ導くための必須の条件である。
(くたに・よしろう=労働評論家) |