財団法人労働科学研究所ホームページ出版労働の科学63巻7号

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63巻(2008年)
8号目次

 

ドックの帆船
いのまたかずお

特集:のんびりを楽しむ休暇

<俯瞰(ふかん)>斉藤良夫[中央大学名誉教授]:休養の積極的意義を考える
編集部:「したくなる」ことを探そう〜柳生真吾さんが教えてくれた園芸・自然に親しむコツ〜
下山房雄 [九州大学名誉教授]:フランスのバカンス
西野 仁[東海大学大学院]:人間的に過ごす「閑かなる暇」を
茂原 治[(財)和歌山健康センター]:“深いやすらぎ”へ〜熊野自然森のスピリットとともに〜
西村孝司 [北海道大学]:NPOイムノサポートセンターが推進するイムノリゾート構想 〜体内環境の改善をめざしたヘルスツーリズム〜
李 卿 [日本医科大学]:森林浴の抗がん免疫機能への効果
<労働科学と私(44)>大橋信夫:“鈍” “根” “運”〈1〉
<まさかの化学物質による健康障害と対策(4)>太田久吉: カドミウム
<「水俣学」と持続可能な社会の再構築(4)>宮北隆志:「環境首都」をめざす水俣と産廃処分場建設計画〈2〉
<し・ん・ど・う の科学(8)>前田節雄:手腕振動の評価〈4〉〜試験規則:宣言値の導出方法〜
<ILOこぼれ話(17)>川上 剛:ILO第187号条約のインパクト
<知りたい てくのロジー(41)>増田忠英:「体に触れる」だけで通信が可能に〜「人体通信」の技術〜
<米国の産業看護活動と日本の産業保健・看護の過去・現在・未来(8)>佐々木美奈子・錦戸典子・土屋典子: 産業・環境看護師のコンピテンシー
<企業に生かすスポーツ心理学(5)>水野基樹:目標設定とモチベーション
<大原コレクション散策>『マドンナ』エドヴァルト・ムンク・作/柳沢秀行・解説
<cinema>百瀬しのぶ: 不法移民への就職斡旋に手を染めた,あるシングルマザーの物語――『この自由な世界で』
<からだにいい“いいからかん”料理(29)>長須美和子・小田島玉惠:たっぷり夏野菜の カチャトーラ!
<information and news>ワークサイエンスニュース
<労働科学のページ>チームリフティングにおける筋骨格系負担−作業姿勢と足場の高さの違いが作業負荷に与える影響−(瀬尾明彦ほか)/ブース式フード内の流れ―作業者および作業台が流れに及ぼす影響―(福原驍ほか)看護師が16時間夜勤時にとる仮眠がその後の疲労感と睡眠に及ぼす影響(松元俊ほか)ほか
<books>本郷 仁孝: 数学で考える


<俯瞰(ふかん)>休養の積極的意義を考える   斉藤良夫

  “休養する”という言葉は、なにか消極的なイメージを与えるものである。たとえば、スポーツ選手が休養するという話を聞くと、われわれは、その選手はスランプに陥っていつもの好成績を上げられなくなり、しばらくの間試合に出られないだろう、と想像する。映画で観たかぎりのことであるが、アメリカの会社では、優秀な部下が上司の期待する業績を上げられなかったとき、上司はその部下にしばらく休養するように命令して、業務からはずすことがあるようである。
 しかし、とても興味あることには、休養することによって、人間はたいてい従来どおりのよい業績を出したり、ときにはそれ以上の業績を上げることができるようになることである。このように、休養には、人間の心身を休養直前の状態からその人の普通の状態に戻す働きがあって、これはわれわれにとってきわめて積極的な意義があることである。それを、業績が下がったから休む、という最初の部分だけをとらえて休養の意味を考えるから、その本質的な意義を誤ることになるのである。
 働く者が休養することを考えてみよう。働く者が毎日職場で行う労働は、きわめて拘束の強い活動である。彼は、まず、どういう目的をどのような方法で達成するかという点で拘束されている。さらに、彼の労働は時間的・空間的にも拘束されていることは言うまでもない。時間の拘束については、労働時間の長さ、勤務時刻、そしていつまでに成果を出すかの時間制限という三重の拘束がある。
 このような拘束の著しい労働を、働く者は毎日、職業人としての強い責任感とそれから生まれる高いモチベーションで行っている。しかし、労働が長い期間繰り返される間に、その高いモチベーションも低下するときがあり、また精神的に不調な状態に陥るときもある。そのようなときには、働く者は積極的に休養をとって、再びいつもの職業人に戻ることが必要である。
 休養している間に、働く者をいつもの職業人に戻す働きをするものは何であろうか。筆者は、それは、働く者がもつ職業人とは異なった人間の側面である “自由な個人としての自分”である、と考えている。彼は、休養期間中に自分が基本的に自由な個人であることを再確認する。その再確認をするまでに、彼はさまざまな点で自由な自分を確認することになる。まず、労働から時間的・空間的に自由になっている自分を確認し、活動の主体としていつ・どこで・どういう活動を行うかが自由である自分を確認し、そして、行った活動の成果を自分にとってプラスの方向に評価できる自由な自分を確認する、などである。それらの確認を通して、彼は、個人として生きてきた自分が今後も自信をもってそのように生きることができることを確信する。そして、彼が再び職場に戻ったとき、その個人として生きる自信が職業人として労働を行う自信に転化して、以前の、さらにはそれ以上の業績を上げる結果を生むことになるのである。
 本誌の特集「のんびりを楽しむ休暇」で紹介されるいくつかの休暇のすごし方では、筆者がいままで述べた休養の積極的意義が実現されるはずである。
(さいとう・よしお=中央大学名誉教授)

 
 


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