特集:見つめ直せ! 現場のリスク
<俯瞰(ふかん)>武田繁夫[三菱化学(株)]:作業環境を見つめ直す
小木和孝[労働科学研究所]:作業環境の見直しを改善につなげる
名古屋俊士[早稲田大学]:粉じん障害の課題と法改正
城内 博[日本大学]: 職場における電磁場ばく露
山田比路史[(株)重松製作所]:作業環境と呼吸用保護具の選択
梅岡竜子[(株)東芝]:「MSDS簡易版」の活用
<労働科学と私(43)>斉藤進:労研と私の関わり合い
<し・ん・ど・う の科学(7)>前田節雄: 手腕振動の評価<3> 日振動ばく露量を用いた影響評価方法
<安全・環境の視点で斬る新テクノロジー(4)>村田徳治:廃棄物焼却処理とエネルギー回収
<ILOこぼれ話(16)>川上 剛:アセアン諸国における安全衛生ネットワーク協力の拡大
<海外だより>山川路代・吉川 徹:日本の理学療法士から見たタイの病院事情 〜医療従事者の安全と健康に関する日タイ国際共同研究への参加を通じて〜
<企業に生かすスポーツ心理学(4)>水野基樹:成功・失敗の原因の認知
<知りたい てくのロジー(40)>増田忠英:低コストでフレキシブルな太陽電池をめざして〜「色素増感太陽電池」の技術〜
<産業安全保健エキスパート養成コースNEWS>産業安全保健エキスパート養成コース〜第4期受講者の声〈2〉〜
<米国の産業看護活動と日本の産業保健・看護の過去・現在・未来(7)>土屋典子・掛本知里・蔦木美穂
: 産業・環境看護の理念と実践の場
<Talk to Talk>肝付邦憲:働き方,働かせ方
<大原コレクション散策>『マルトX夫人の肖像 ボルドー』アンリ=マリー=レーモンド・ド・トゥールーズ=ロートレック・作/柳沢秀行・解説
<cinema>百瀬しのぶ: 久々に実家に集まった家族の心の交流や行き違いを丁寧にすくいとった物語――『歩いても 歩いても』
<からだにいい“いいからかん”料理(28)>長須美和子・小田島玉惠: ビールのお供に アボカド・チーズ!
<books>肝付邦憲: 労働CSR入門
<巻末特別付録CD-ROM> 化学製品のラベルを見よう! 化学物質の危険性を知り健康と環境を守るために
<俯瞰(ふかん)>作業環境を見つめ直す 武田繁夫
職場の作業環境管理には多くの課題があるが、ここでは三点紹介したい。
一点目は、職場にある健康に対する有害要因(ハザード)が、必ずしも適切に認識されていない点である。
職場では雇入れ時の安全衛生教育に始まり、いろいろな機会に危険有害要因などの教育を行ったり、作業標準を決める際に健康影響が起こらないよう配慮がなされるなど、有害要因について一定の認識があるものの、実態を見ると有害要因への認識や対応が十分とは言えない状況を見ることがある。
たとえば、化学物質の場合、製品になると化学物質という認識がなく、有機溶剤を含んだ浸透液などが、職場で使用している化学物質の一覧表に入っていなかったり、社内基準として機器近傍の騒音の上限を定めているにもかかわらず規格外の機器を導入するケースなどが見られる。
作業場における有害要因は、長期間のばく露によって健康への影響を及ぼすことが多いにもかかわらず、有害要因として認識されにくい理由として,毎日の業務の中では健康影響が認識されにくいことや、作業環境中の有害要因が化学物質のMSDSのように有害性の周知がなされていないことなどが考えられる。
作業環境管理を行うには、職場の管理監督者や労働者に職場にいろいろな有害要因があるという認識を持ってもらうことが必要であり、職場巡視の際などに職場の人たちと有害要因の確認を行ったり、アメリカなどで行われているようにひとつひとつの有害要因に危険有害性の程度を表示することなども有効ではないかと思う。
有害要因として認識されても、そのリスク評価が簡単に行えないことが二点目の課題である。
すべての有害要因に対してリスクの評価基準が定まっていないことや、評価基準があっても職場には簡単に測定を行う知識や機材などが必ずしも十分にそろっているわけではない。
このため、安全上のリスク評価は職場の労働者が参加して行うことが多いが、衛生面の評価は専門職だけで行われるケースも見られる。しかし、職場の労働者が参加しないと、すべての作業が把握できなかったり、対策が不十分になる恐れも抱えており、健康面のリスク評価を職場で簡単に行えるようにすることは重要と思われる。
三点目の課題として、リスク評価に基づく衛生工学的な対応を行うための知識やスタッフが十分にいないことが挙げられる。
衛生工学衛生管理者の資格を取得しても、これだけでは対策を行うには必ずしも十分ではなく、局所排気装置の設計や、騒音発生源への対応など、有資格者が関わって設備的な対策を行っても必ずしも十分な効果を挙げられていないこともある。ちなみに、設備対策の専門家がいれば、新たな設備を設置する際にも、事前評価に基づき必要な対策が検討、実施されることが期待されるが、必ずしもそういった状況にはない。
作業管理にはいろいろな課題があるが、こういった問題点を解消し、リスク対策に止まることなく、快適な作業環境を見据えた対応を行っていきたい。
(たけだ・しげお=三菱化学(株)人事部健康支援センター) |