財団法人労働科学研究所ホームページ出版労働の科学63巻5号

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63巻(2008年)
5号目次

 

佃の路地にて
いのまたかずお

特集:脱・慢性過労

<俯瞰(ふかん)>村上 文[(財)21世紀職業財団]:仕事と私生活の充実をめざして
鷲谷 徹[中央大学]:労働と生活〜ワーク・ライフ・バランスの視角〜
大重光太郎 [獨協大学]:ドイツにおけるワーク・ライフ・バランスの取り組み
鈴木安名 [労働科学研究所]:過重労働・メンタルヘルス対策における人事部の役割と課題
佐々木司 [労働科学研究所]:ホワイトカラー過労障害事例にみるワーク・ライフ・バランスの崩壊
松元 俊[労働科学研究所]:慢性疲労研究成果シンポジウム報告 慢性疲労の発現・進展・回復プロセスの機序解明と予防に関する労働科学研究
<労働科学と私(41)>上畑鉄之丞: 若手研究者時代の出会い
<まさかの化学物質による健康障害と対策(2)>大前和幸・中野真規子・田中昭代・平田美由紀: インジウム
<安全・環境の視点で斬る新テクノロジー(3)>村田徳治:バイオ燃料と環境問題〈3〉
<し・ん・ど・う の科学(5)>前田節雄: 手腕振動の評価<1> 計測の計画と実施
<ILOこぼれ話(14)>川上 剛:ラオス〜ラムウォン踊りの輪の中から〜
<知りたい てくのロジー(38)>増田忠英:地下の熱で冷暖房を実現 〜地中熱利用の技術〜
<産業安全保健エキスパート養成コースNEWS>産業安全保健エキスパート養成コース〜第4期受講者の声〈1〉〜
<企業に生かすスポーツ心理学(2)>水野基樹:スポーツにおけるコーチングとリーダーシップの関係
<Talk to Talk>肝付邦憲:何にも替えがたい
<米国の産業看護活動と日本の産業保健・看護の過去・現在・未来(5)>三橋祐子・湯淺晶子: 産業・環境看護の実践範囲 〈1〉
<大原コレクション散策>『グレヴィルの断崖』ジャン=フランソワ・ミレー・作/柳沢秀行・解説
<cinema>百瀬しのぶ: イラク戦争に派遣された妻の死,父親は娘たちにどう伝えるのか?――『さよなら。いつかわかること』
<からだにいい“いいからかん”料理(26)>長須美和子・小田島玉惠: フライパンでアツアツ チーズかつ!
<books>肝付邦憲: にっぽんの知恵


<俯瞰(ふかん)>仕事と私生活の充実をめざして  村上 文

 最近、ワーク・ライフ・バランス(WLB)という言葉が有名になり、「官民トップ会議」において「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」と「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が策定されるなど、大きなテーマとなってきている。注目されるようになったのは、少子高齢化、人口減少、グローバル化をはじめとする大きな社会の変化の中で、従来の働き方のままでは、個人も、企業・組織も、社会も持ちこたえることができなくなる恐れがあるからである。
 ことに少子化問題は深刻で、これまでも育児休業法や次世代育成支援対策推進法などに基づきさまざまな施策が講じられ、企業の子育て支援策も充実が図られてきているが、出生率の回復はいまだ目処がたっていない。そこでこれまでの取り組みでは不十分で、男性も含めた働き方そのものを見直す必要があると考えられるようになってきた。また働く側の変化も大きい。働く女性が増加し、勤労者家庭の過半数が共働き世帯になっており、価値観も多様化してきている。子育て、介護のみならず、地域活動、自己啓発など仕事以外にもやりたいこと、やらなければならないことがある人が増えてきている。しかし実際は正社員の労働時間は高止まりしており、特に子育て期の30歳台の男性の就業時間は長く、週60時間以上働く人が2割以上いる。これでは仕事以外の生活を楽しむことが難しく、長時間労働による心身の健康への悪影響が懸念される。このようなことから、性別、年齢にかかわらず、すべての人についてWLBを考慮する必要性が認識されるようになってきた。
 また雇用対策と生産性向上の面からも、WLBは企業の重要な経営戦略となってきている。グローバル化の進展の中で、企業活力、競争力を確保、強化していくためには、社員のニーズを踏まえた人材育成が必要である。社員一人ひとりが、働きがいと生きがいを感じることができるよう、業務を見直して、効率化を図っていかなければならない。WLBは、時間を大切にし、メリハリをつけて、段取りよく仕事をすすめることが前提となる。よく働き、私生活も充実させることが大切である。リフレッシュすることにより、社員一人ひとりが、新しい発想を持ち、能力を十分発揮することで企業全体としてのイノベーションも期待できる。またWLBの実現により、「社員を大切にするエクセレントカンパニー」として、優秀な社員の確保、定着につながっていく。
 WLBを実現するために、企業はどういう取り組みをどの程度実施すればよいかの道標を示すべく、R21世紀職業財団では、WLB企業診断指標と認証基準を開発し、WLB企業診断・認証事業を開始した。指標と認証基準は当財団のホームページ(http://www.jiwe.or.jp)で公開している。少しでも多くの企業が指標と認証制度を活用し、「社員を大切にする企業」としてのPR材料としてほしい。
(むらかみ・あや=R21世紀職業財団・専務理事)

 
 


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