特集:若手を育てる職場
<俯瞰(ふかん)>森田英一[(株)シェイク]:辞める時代のマネジメント
八幡成美[法政大学]:企業の人材ニーズと人材育成策
荒井千暁 [日清紡績(株)]:若手労働者の変化とメンタルヘルス
川人博・山下敏雅 [川人法律事務所]:上司の暴言〜パワハラ自殺の労災認定を受けて〜
新井 國貴 [日本メンター協会]:企業におけるメンター制度と運用
<労働科学と私(40)>齋藤和雄:働く人の健康を求めて
<まさかの化学物質による健康障害と対策(1)>山野優子:臭化メチル
<し・ん・ど・う の科学(4)>前田節雄: 課題が残る手腕振動障害の実態
<「水俣学」と持続可能な社会の再構築(2)>宮北隆志:「環境モデル都市」から「環境首都」をめざす水俣市の取り組み
<ILOこぼれ話(13)>川上 剛:モンゴルの青い空
<トピックス>榊原洋子・久永直見・羽渕脩躬: TIG溶接由来の放射線内部被ばくに注意を!!〜危険有害要因が潜む大学における職場巡視の経験から〜
<企業に生かすスポーツ心理学(1)>水野基樹: スポーツを企業経営のメタファーとして考える意味
<知りたい てくのロジー(37)>増田忠英:「糖」を燃料にして電気ができる!?〜生物の原理を応用した「バイオ電池」
<米国の産業看護活動と日本の産業保健・看護の過去・現在・未来(4)>蔦木 美穂・佐々木美奈子:公衆衛生および地域看護領域における「産業・環境看護」実践
<大原コレクション散策>『ラ・フォルテ=ミロンの風景』ジャン=バティスト=カミーユ・コロー・作/柳沢秀行・解説
<cinema>百瀬しのぶ: 富豪の老作家,彼の妻の美貌の愛人……男ふたりの嫉妬を描く密室劇―――『スルース』
<からだにいい“いいからかん”料理(25)>長須美和子・小田島玉惠: 春キャベツと干しえびの和風炒め
<information and news>
労働科学研究所創立85周年記念事業[現代の労働と安全・保健マネジメント]連続セミナーのご案内
ワークサイエンスニュース
<books>肝付邦憲:日本人の精神と資本主義の倫理
<俯瞰(ふかん)>辞める時代のマネジメント 森田 英一
「3年3割」という言葉が定着して久しい。遠からず「3年4割」となるのではないかとも言われている。「第2新卒」市場の充実も、これを後押しする。
もっとも、「3年3割」は今に始まったことではない。調査が初めて実施された1987年当時から、この言葉は存在した。しかしその本質は変わった。以前は、職場に馴染めない社員やいわゆる落ちこぼれ社員が離職した。一方、今は、会社が手放したくない活躍社員から辞めてしまうのである。今や若手社員にもヘッドハンティングがかかる時代。中途採用も当たり前。転職は恥ずべきことではない。
こうした現状の中、せっかく獲得した優秀な人材を逃さないためにどうしたらいいのか。
最近は、新入社員から「私は褒められて育つタイプです」という言葉をよく聞く。叱られると委縮してしまうので、叱らないでほしいと言う。これでは大きく成長しない。それを指摘すれば、「私のことをわかってくれない」と壁をつくってしまう。
イマドキの若者が臆面もなくそうした言葉を発するのは、彼ら、彼女らに「叱るのは、そこに愛情があるからだ」という教育の本来のメカニズムを実感した経験がないからではないだろうか。自分を認めてくれている、自分を成長させようとしている、という信頼感があれば、指摘されてもそれを糧にして努力しようという姿勢も生まれる。しかし、最近の若者はそれすらも攻撃だと捉えてしまう。
そこには、いじめ問題も影を落としていると思われる。いじめに対し、今の子供たちは逃げることでしか身を守る術を持っていない。
さらに、彼らは社会人になるまで自分に合う集団、グループの中でしか過ごしたことがない。それは、グループ内だけのコミュニケーションしか知らないということである。その意味で、彼らは他者とどのように関わっていいのかがわからない。ほかのグループに属する人たちに対するコミュニケーションの術を知らないのである。
若者が辞める理由を整理すると、それは「存在意義の実感」「成長実感」「成長期待」という三つの要素の欠如である。
若者がこうした意識を持てないのは、上司と部下の関わりが不足しているからだ。グローバルな企業間競争の激化で仕事の効率化が追求され、マネジャーの多くがプレイングマネジャー(監督兼選手)となっている。
一方、転職が当たり前になり、辞めることが普通になっている。「辞める時代のマネジメント」は「辞めない時代のマネジメント」よりも数倍高度である。そんな中、実務で忙しいため、マネジャーが部下を育成する十分な時間を持てないという現実が、若手の孤立化に拍車をかけている。
企業にとって若手社員に対する上司の対応、コミュニケーション力は大きな課題である。
上司は、今こそ仕事に追われる日々から脱却し、「辞める時代のマネジメント」をより意識して、部下育成・コミュニケーションの精度を高めていくべきではなかろうか。
(もりた・えいいち=(株)シェイク・代表取締役) |