財団法人労働科学研究所ホームページ出版労働の科学63巻2号

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63巻(2008年)
2号目次

 

早春賦
いのまたかずお

特集:過労運転を防ぐ

<俯瞰(ふかん)>三戸秀樹 [関西福祉科学大学]:職業ドライバーの働き方を考える
安部誠治 [関西大学]:デフレ経済下の運輸事業の規制緩和と輸送の安全
中川登志雄[全日本トラック協会]:トラック業界が取り組む過労運転防止対策
三橋一郎 [ロジ東京協同組合]:中小企業におけるドライバーの安全と健康
鈴木一弥 [労働科学研究所]:添乗調査からみたトラックドライバーの負担と過労
高橋正也 [労働安全衛生総合研究所]:不安全なトラック運転に関わる要因はなにか
長野潤一 [トラックジャーナリスト]:重大事故の防止とIT技術の活用
<労働科学と私(38)>二塚 信:労働現場に立った振動障害研究
<「水俣学」と持続可能な社会の再構築(1)>宮北隆志: いまこそ,「失敗の教訓」を将来に生かすとき
<トピックス>佐橋紀男: 2008年のスギ・ヒノキ科花粉飛散予測
<し・ん・ど・う の科学(2)>前田節雄: 人体振動の国際規格〈1〉
<ILOこぼれ話(11)> 川上 剛:広場としてのジュネーブ 〜ILOインフォーマル経済シンポジウムから〜
<労働者のための睡眠衛生学(11)>佐々木司: 労働者が知っておきたい睡眠の理論〈2〉〜〜睡眠禁止帯と覚醒維持帯〜
<米国の産業看護活動と日本の産業保健・看護の過去・現在・未来(2)>高橋悦子・伊藤美千代・錦戸典子・:産業看護職職能団体の発展に焦点をあてて
<知りたい てくのロジー(35)>増田忠英:温泉で発電! 〜開発が進む地熱エネルギーの利用技術〜
<大原コレクション散策>『広告“ヴェルダン”』佐伯祐三・作/柳沢秀行・解説
<cinema>百瀬しのぶ:温暖化の一途をたどる地球に,私たちは何ができますか?――『earth アース』
<からだにいい“いいからかん”料理(23)>長須美和子・小田島玉惠:アツアツ炊きたて牡蠣ご飯
<information and news>
ワークサイエンスニュース
<books>肝付邦憲:格差社会ニッポンで働くということ 雇用と労働のゆくえをみつめて


<俯瞰(ふかん)>職業ドライバーの働き方を考える  三戸秀樹

 全自動車事故における事故類型別では,最も多い事故の型は追突事故である。その構成比は31.5%(2005年)であった。貨物トラック事故の多さ,しかもその大多数が追突事故である点,さらに高速道路死亡事故の多くが貨物トラックと絡んでいることに鑑み,高速道路走行時の最高速度制限,高速道走行レーン規制,貨物トラック後尾への反射板取り付けなどを実施してきた。しかし貨物トラック追突事故を顕著に減らすことは成功していない。
 大阪府警本部では府下の過去1年間の追突事故データから,その追突事故を起こした車のタイプ別に追突事故の起こりやすさを,追突件数を被追突件数で割って追突指数として表してみた。この結果,大型貨物トラックは5.3,バス2.8,小型貨物トラック2.6,普通乗用車0.9であった。大型貨物トラックとバスは,その車幅,運転席の位置,おなじキャブオーバー型(運転席がエンジンの上にある形式の車両)である点などを思えば,似かよった運転感覚で運転できる。しかし追突指数が示す結果は,大型貨物トラックはバスの2倍近い追突リスクを示していた。これは車両のもつ構造的特徴というよりは,そのトラックの運行の仕方,すなわち大型貨物トラックドライバーの働き方につながってくるのだと考えられる。したがって大型トラックにおける前方不注意事故と処理された中には,長時間過密労働からくる眠気をもよおした運転による追突事故も含まれていると思われる。
 長時間で過密な運転や交代勤務による運転とその夜間運転ほかからくる事柄が,この職業運転労働において安全問題を引き起こしているのだろう。この事故実例は新聞報道からも枚挙にいとまがない。このような運転労働状況を背景に,2007年4月から全運送事業者(貨物軽自動車運送事業者は除く)に対して,国土交通省は,「運輸安全マネジメント」制度を導入した。国土交通省はこれまでの許認可行政の柱である「規制」から一歩踏み出し,「改善」を促すという動きを示した点は,遅きに失したとは言え評価できる。加えて本制度は,その取り組み不十分な場合,営業停止や車両使用停止処分などの行政処分を含む厳しいものである。しかしこの制度に血を通わせるのか,そうでないかは,運送事業者のやり方にかかっている。運送事業者のホームページ上に「輸送の安全に関する基本的な方針」を見ることもでき始めた。しかしながら,「何をしておけば行政処分の対象とならないのか?」と問う事業者も多く,問題回避する意識のみが強く,「運輸安全マネジメント」新制度の本来的意味と目的を理解していない。
 事故に関する現象的要因の追及にとどまっていては,すなわち事故の型別解析をして,前方不注意に行き当たり,「前をよく見よう」といった指導にとどまるだけでは,なかなか事故を減らすことができない。この型別事故解析の裏に隠れている,事故を起こす本質的要因を追求することが大切だ。どうして追突に,前方不注意になったのかを問うべきだ。そこには,運転労働の負荷の与え方において,追突,前方不注意にならざるを得なかった要因がなかったのかどうか……である。
(みと・ひでき=関西福祉科学大学・教授)

 
 


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