財団法人労働科学研究所ホームページ出版労働の科学61巻12号

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61巻(2006年)
12号目次

 

仕事納め 
砂山恵美子

特集:企業倫理と安全文化

<俯瞰(ふかん)> 末吉竹二郎 [国連環境計画(UNEP)特別顧問]: 社会が求める企業の安全文化
井上枝一郎 [労働科学研究所]:企業倫理としての安全文化
小柳 健 [新日本製鐵(株)]:安全文化構築に向けた安全意識の「見える化」
笠井昌美・榎本敬二[中部電力(株)]リスクマネジメントシステムによる安全・安心な発電所づくり
岩本充史 [安西法律事務所]:法令遵守と企業の社会的責任

<産業医学いまむかし(43)>野村 茂: 農村医学の歩み
<労働科学と私(24)>山本宗平:労働生理学の流れを追って
<トピックス>木村菊二:石綿粉じんに関する許容規準等の勧告等について
< ILOインフォメーション> ILO駐日事務所:2006年総会の成果と2007年の予定
<話題>井上 顕:自殺を予防していかねばならない今
<労働の科学Q&A>笹生 稔: 米国における防毒マスク
<知りたい てくのロジー(21)>増田忠英:「飲んだら動かない」クルマの実現に向けて〜「飲酒運転防止装置」の現状〜
<新しい働き方を探る(23・最終回)>水野基樹:リテンション・マネジメント
<産業安全保健エキスパート養成コースNEWS>三島斉紀:「ひとつ前へ」さかのぼっての安全衛生対策〜志村雄一郎・北都電機取締役名古屋支店長の話を聴講して〜
<大原コレクション散策>『Nの家族』小出楢重・作/柳沢秀行・解説 巻頭カラー
<Cinema>百瀬しのぶ:弟を思い殺人犯となった兄と,世間から差別され続ける弟の絆と再生の物語――『手紙』
<からだにいい“いいからかん”料理(9)>長須美和子・小田島玉惠:チャイ インド風ミルクティー
<Information and news>
作業環境測定士登録講習会のお知らせ
ワークサイエンスニュース
労働科学研究所創立85周年記念事業[現代の労働と安全・保健マネジメント]連続セミナーのご案内
<Books>肝付邦憲 :「しぐさ」に隠された日本人の心
<61巻総目次>


<俯瞰(ふかん)>社会が求める企業の安全文化 末吉竹二郎

 20世紀をリードした「大量生産、大量消費、大量廃棄」が行き詰まり、新しいビジネスモデルへの転換が始まっています。持続可能な社会をめざして、地球環境、生態系、そして「人間」へのより一層の配慮を伴ったものへの切り替えです。
 こうした流れの中、社会の中核をなす消費者が変わり始めています。買おうとする商品はどこで誰が、「どうやって」作ったのか、生産の裏側にある情報を求めています。関心の輪が商品の性能や価格から生産の過程にまで遡及しているのです。
 その動機は何でしょうか。もちろん、よくわかったうえで買いたいというのはあるでしょう。でも、もっと深い変化があるように思われます。それは、消費を通じて企業にメッセージを伝えるということです。欲しい商品であっても持続可能な社会をめざしたものでなければ買わない。めざしたものであれば、少々高くとも買って応援する。新しい消費者行動主義です。
 消費者の関心はエコロジーの保全から人権まで広範囲にわたります。働く人の安全と健康はその中核の一つです。どんなに素晴らしい商品でも、働く人の安全が危うい工場からのものは拒絶します。その典型例が児童就労による商品の排除であり、スウェット(労働者を酷使する)工場の製品の忌避です。消費者が賢くなることで働く人の安全や人権が守られる。これこそ世紀の消費者というわけです。
 ところで、欧米でのCSR(企業の社会的責任)の定着の背景には、social license to operateという考えがあります。企業は社会からのライセンスがあって初めてビジネスが許されるというものです。もちろん、このライセンスは目には見えないものです。でも、企業は社会からの期待に応えることでこの暗黙のライセンスの維持を図っているのです。
 こう考えると、CSRが広まってきたわが国の企業の安全文化も,新しい視点が必要になります。働く人を危険にさらさない、企業をリスクから守る「社内の安全」から、消費者の安全性や環境の保全など「社外の安全」へと対象が広がります。さらには、世界の人権問題や貧困などサプライチェーンやフェアトレードを通じて「地球的課題」にも取り組む必要が出てきました。
 企業の安全文化も、グローバルな「人間の安全性」を考える、そんな時代に入ったのではないでしょうか。
(すえよし・たけじろう=国連環境計画〈UNEP〉特別顧問)

 
 


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