財団法人労働科学研究所ホームページ出版労働の科学61巻10号

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61巻(2006年)
11号目次

 

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砂山恵美子

特集:人間工学をいかす〜製造現場における使い方〜

<俯瞰(ふかん)>大久保堯夫[日本人間工学会会長]:人間工学技術の発展
神代雅晴 [産業医科大学]:製造現場の高齢労働対策事例から見た人間工学の活用
北島洋樹 [労働科学研究所]:「現場の知」と人間工学のインタラクション〜人間工学の古くて新しい試み〜
中西弘毅 [トヨタ自動車(株)]:“見える化”の人間工学
畠中順子[(社)人間生活工学研究センター]:人間特性データの産業界への活用
<特集関連トピックス[1]> 藤田祐志[(株)テクノバ]:人間工学専門資格制度を活かす
<特集関連トピックス[2]>堀江良典[日本大学]:国際人間工学会(IEA 2006)参加記
<特集関連トピックス[3]>松田文子[労働科学研究所]:日本人間工学会大会参加記

産業医学いまむかし(42)>野村 茂:産業衛生技術者の活動
<労働科学と私(23)>大平昌彦:衛生学の研究と教育の中で
<労働の科学Q&A>渡辺光史:保護帽の種類,材質,構造,形状,サイズ
<Talk to Talk>肝付邦憲:覚めやらぬ夢,一つ
<地球との共生をめざして(6)>鷲谷いづみ:生物多様性と生態系を脅かす外来生物(2)
<話題>井奈波良一:遺跡発掘現場の労働負担 〜夏期の熱中症対策〜
<知りたい てくのロジー(20)>増田忠英:世界最速の“夢の超特急”は実現するか〜「リニアモーターカー」の技術〜

<大原コレクション散策>『頭蓋骨のある静物』パブロ・ピカソ・作/柳沢秀行・解説
<Cinema>百瀬しのぶ: タバコ業界のPRマンが明かす,アメリカ産業界の内幕――『サンキュー・スモーキング』
<からだにいい“いいからかん”料理(8)>長須美和子・小田島玉恵:簡単! 本格お味噌でマーボー
<Information and news>
作業環境測定士登録講習会のお知らせ
労働科学研究所主催セミナー「緊急事態マネジメントの方法」(仮表題)開催のお知らせ
<Books>
水野基樹:熱狂する社員 企業競争力を決定するモチベーションの3要素


<俯瞰(ふかん)>人間工学技術の発展 大久保堯夫

 人間工学に関わる専門技術は,その黎明期においては主としてヒトと関係するハンドルなどの操作機器や道具,設備,メータの表示器,温度や騒音などの物理的環境の設計や改善に適用された。
 その後,マイクロエレクトロニクス革命により自動化,システム化,装置化が進み種々の製品製造機器の開発や改良が進む中で,操作しやすい機器条件のために人間工学の技術が用いられるとともに,これと関連する工場製品の使いやすさや,これら製品を作る工場における労働時に容易に疲労しないようにするためや安全や能率をより高めようとするための人間の役割を求める際に利用された。
 さらに,これらの変化に併行して技術システムの巨大化・高度化が進み発展する中で,人間工学的な考え方も専門家の間では定着したが,他方,発電所,航空機,列車などに代表される種々のシステム運用に際しての不具合がヒューマンエラーを引き起こし,これが大事故につながり,これを予防するための人間工学からの研究が盛んに行われ,単調,安全,生産(製造)管理などの課題にもチャレンジすることとなった。
 近年における工業化社会から情報化社会への急激な移行に伴い,自動化,コンピュータ化,知能化,システム化などを基盤としたさらなる情報システムの巨大化,複雑化,高度化により,ヒトがこれらを正確,迅速かつ容易に使用できるための人間工学技術がソフト人間工学として活用されている。ここでは個々の作業者がモチベーションやモラール高く使用でき,使いやすくストレスや疲労少なく安全かつ快適に働くことを可能にするための種々な人にやさしいハード,ソフトシステム設計に関わる問題解決のため人間工学が利用されている。
 以上で概略をさせていただいたように人間工学はヒトのあらゆる生活に直接的,間接的に密着した実践的科学であり,このような視点から見ると人間工学は医学,心理学,生理学,一般的工学,システム工学,情報工学,社会工学,ロボット工学など,広くて多様な学問領域との緊密な連携が必要かつ不可欠である。具体的には前述の人間工学技術の歴史的な発展過程の中で出現する種々な知的活動の基本には,前述したほかの学問領域と多く共通する課題があり,たとえば,人間特性の計測,評価,理解,推定,人間・機械・環境システムの機序の解析,開発,製品,空間,設備の設計などはその好例であろう。
 最近では生活の質を重視するという価値観の高まりや暮らし方変化に応じて個人生活や家庭生活,職場外での社会生活の種々な課題にも人間工学技術が応用され始めており,たとえば,健康管理,くつろぎ空間としての誰でも安心して暮らせるバリアフリー街づくり,アミューズメントやエンターテインメント要素も包含したヒトに幸福感や明るさを与えるハードやソフト作り,コミュニケーション技術,学習,教育,防災,異文化受容,安全マネジメントなどその課題と技術応用の分野は,少子高齢化や女性の種々な職場への就労者増加とも相まってますます広がりをみせている。
 他方,国際的な動向についてみると,経済活動の国際化とともに人間工学に関わる専門知識および技術水準や,人間工学専門家資格の標準化が進められており,2003年に日本初の[日本人間工学会認定人間工学専門家]が誕生して以来,153名の[人間工学専門家]が各分野で活躍し,その成果が注目を集めている。
 また,従来のように作業システムの最適設計のためのISO(国際標準化機構) TC159(人間工学)分野の諸規格の制定のみでなく,日常生活で用いられる製品や生活環境の改善に関わる製品の人間中心設計(ISO13047)などについても規格化がすすめられており,人間工学技術活用の必要性が増している中で,これに関係する人たちの真摯な取り組みと,産学官のより緊密な連係が従来にも増して期待されている。
(おおくぼ・たかお=日本人間工学会・会長)

 
 


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