財団法人労働科学研究所ホームページ出版労働の科学61巻8号

 労働の科学  労働科学  書籍・雑誌のご注文&ご案内

61巻(2006年)
8号目次

 

涼を売る 
砂山
恵美子

特集:社会で人を育てる 〜OJTを後押し〜

<俯瞰(ふかん)>渡辺邦明[(株)神戸製鋼所]:製造現場における安全衛生面での人材育成ポイント

酒井崇行[経済産業省]:産学連携による高度な産業技術人材の育成
唐沢正義[日本作業環境測定協会]:日本作業環境測定協会によるオキュペイショナルハイジニスト(仮称)の養成
小泉昭夫[京都大学]:社会健康医学における人材育成
武藤睦治[長岡技術科学大学]:長岡技術科学大学の専門職大学院<システム安全専攻>
産業安全保健エキスパート養成コース〜第1期受講者の声<2>〜

<産業医学いまむかし(39)>野村 茂:歯の糖蝕症と酸蝕症
<労働科学と私(20)>肝付邦憲:道標を求めて
<短期集中連載:なぜ鳥インフルエンザが労働衛生なのか(2)>川田諭一:リスクから現実へ
<トピックス>永濱利廣:2006年クールビズ〜昨年の経済効果と今年の予想市場規模〜
<労働の科学Q&A>笹生 稔:米国における防じんマスク
<新しい働き方を探る(21)>水野基樹:キャリア・プラトー
<知りたい てくのロジー(17)>増田忠英:持続可能な資源として注目される「竹」〜建材や衣服から工業製品まで,進化する“竹テク”〜

<大原コレクション散策>『アルプスの真昼』ジョヴァンニ・セガンティーニ・作/柳沢秀行・解説
<Cinema>百瀬しのぶ:キャリアウーマンとお堅いエリートが求めた真の幸せとは?――『幸せのポートレート』
<からだにいい“いいからかん”料理(5)>長須美和子・小田島玉恵:やさいをたべよう にらたまご
<Information and news>
労働科学研究所実務セミナー:2006年版「人事・総務担当者のためのメンタルヘルス対策」開催のお知らせ
ワークサイエンスニュース
維持会月例研究会開催のお知らせ:「安全バカ」が伝授する安全衛生活動の要点
<Books>
吉川 徹:医療機関での産業保健の手引き


<俯瞰(ふかん)>製造現場における安全衛生面での人材育成ポイント  渡辺邦明

 近年、製造の現場で「経験の少ない若年層」と「50歳前後の実年層」の災害が目立っている。このうち「経験の少ない若年層」の被災は、安全衛生教育や技能伝承が十分にできていない中で発生していると感じている。そこで今回、弊社での状況などを参考としながら、安全衛生面での人材育成について考えたいと思う。
 2007年問題などもあって,人材育成の重要性が改めてクローズアップされつつあり、さまざまな取り組みが行われているが、従来からの教育方法以外に画期的なやり方があるわけではなく、地道な取り組みを実施しているのが実状ではないであろうか。
 教育を行う場合に忘れてはいけないポイントがいくつかあると考えており、それについて自身の数少ない経験の中からいくつか紹介したい。
@自分で考えさせる
 与えられるものはどんな貴重な内容であっても忘れやすい。ルールと違うやり方をした場合に、どんなひどいことになるかを、事例などを引きながら認識させる。それには自身で考えさせるのが重要である。
A自分でやらせる
 伝えたい内容が正確に伝わったかどうかは、実際にやらせてみないと習熟度が判定できないので、それに応じて不足なところを補うことになる。「(一応)やれる」と「(指示どおり)できる」では大きく違う。
Bルールの背景を伝える
 往々にして、標準書などを丸暗記させ、そのとおりに作業する指導を行うことが多い。しかし、まず、ルール自体が本当に正しいのかを議論・確認したうえで、「なぜこのルールが必要か、なぜ作られたか、守らないとどうなるのか」などを、過去の災害事例などを引きながら、具体的に教え込むのが重要である。「3なぜ」なども有効。
CAT訓練はトラブルへの対応を主に
 AT訓練(Actual Training)では、現場で実際の設備を使用しながら、操作方法などを指導するが、「うまくいく手順」だけを教え、「うまくいかない場合の対応」を教えないことが多い。緊急事態での心構えや対応を理解させたうえで訓練しておかないと、処置を間違って災害につながる危険性が高い。「危険を体感する教育」も有効。
D「早く一人前にする」は禁句
 時間をかけて育てる必要があることは頭ではよく理解されていながら、現実的には一日でも早く即戦力にしたがる。しかし、十分な技術・マインドになったことを見極めないまま一人前扱いすると、思わぬ災害につながる。我慢して成長させることが肝要である。
E作業や危険のポイントを具体的に
 たとえば、バルブを締める場合は、「回転量で確認」や「ストッパーに当たるまで」といった具体的なポイントで判断させるべきである。またレンチを力まかせに回すと、レンチが外れてケガをする危険があるなどのことも、併せて具体的に伝えるべきである。
F「しかって、ほめる」
 「しかれる」ようなよいコミュニケーションが取れる関係となり、厳しい中にも、よくやれたときは「ほめてやる」のも重要である。
 「正確な知識を具体的に教えて」「自分で考え,実践できる人材に育てあげる」という目標を達成することにおいて、ここで述べた小生の稚拙な情報が読者の方々の参考になれば幸甚と考えます。
(わたなべ・くにあき=(株)神戸製鋼所人事労政部・担当部長)

 
 


労研出版物のご注文はこちらへ労研の出版物のご注文について