特集:産業安全保健エキスパートの創造2
<俯瞰(ふかん)>井上素行[東京電力(株)]:安全・品質の基盤を支える人づくり
特集:産業安全保健エキスパートの創造2
酒井一博[労働科学研究所]:産業安全保健エキスパート養成コースの実績評価と今後の展開
安福愼一[新日本製鐵(株)]:産業安全保健エキスパート養成コースの意義〜企画運営委員として第1期を振り返る〜
永田久雄[(独)労働安全衛生総合研究所]:産業安全保健分野のシステムインテグレータをめざして
産業安全保健エキスパート養成コース〜第1期受講者の声〜
<労働科学と私(19)>角田文男:労働衛生を学んで半世紀,この道遙かなり
<短期集中連載:なぜ鳥インフルエンザが労働衛生なのか(1)>川田諭一:リスクとつき合う
<地球との共生をめざして(4)>鷲谷いづみ:生物多様性と健全な生態系を取り戻す
<労働の科学Q&A>田中通洋:耳栓と耳覆いについて
<トピックス>諸永裕一:人間生活技術戦略の策定
<話題>村山義夫:海上労働科学研究所の果たしてきた役割と今後
<知りたい てくのロジー(16)>増田忠英:21世紀の都市交通は路面電車が担う!? 〜郷愁のチンチン電車から,人にも環境にも優しいLRTへ〜
<Talk to Talk>肝付邦憲:紫陽花は雨にぬれても
<大原コレクション散策>『オーヴェルシーの運河』ポール・シニャック・作/柳沢秀行・解説
<Cinema>百瀬しのぶ:35歳・独身・無職……元バリキャリヒロインと4人の男たちとの不思議な日常--『やわらかい生活』
<からだにいい“いいからかん”料理(4)>長須美和子・小田島玉恵:我が家の簡単ポテトサラダ
<Information and news>
作業環境測定士登録講習会のお知らせ
労働科学研究所実務セミナー:2006年版「人事・総務担当者のためのメンタルヘルス対策」開催のお知らせ
維持会月例研究会開催のお知らせ:「安全バカ」が伝授する安全衛生活動の要点
<Books>
森田美佐:壊れる男たち-セクハラはなぜ繰り返されるのか-
<俯瞰(ふかん)>安全・品質の基盤を支える人づくり 井上素行
産業界ではここ数年さまざまな事故・トラブルが続発し、安全意識の低下や業務の品質管理の不徹底が指摘されている。このような中で企業にとって安全は事業運営の最重要基盤であり、最優先に取り組むべき課題であることが改めて強く認識されるようになっている。
企業は各種の設備を多種・多様なかたちで設置し、社内外の関係者の協力の下に広範な事業活動を行っている。これらの設備の運用・管理や事業活動が,そこで働く人々さらに地域社会の安全に直結しており、それぞれの企業は従業員のみならず、協力会社の関係者、公衆の安全確保に万全を期さなければならない。
わが国においては本格的な競争の時代を迎え、競争に打ち勝つことが眼目となっている。「コストの削減」や「設備機能やサービスレベルの維持向上」に徹底的に取り組んでいるが、その前提に安全の確保がある。従来相反すると考えられがちであった要求事項を同時に満たす取り組みが現在求められているのである。
安全や品質は現場で造り込まれるものであるから、当然この取り組みは現場に焦点を当てたものになり、災害のリスクや職場の問題点を評価し、改善を図って適切に実行する現場力とともに、現場の取り組みを後押しし、組織全体の改善に向けて施策を策定・展開するトップ・ミドルのマネジメント力が不可欠である。このためには、深い経験と知識に基づき問題の本質を見抜く眼力、改善に対する強い情熱と責任感、人の意見に耳を傾け学びとる謙虚さ、指導力を有する人材が必要となる。
一方、各企業では業務のアウトソーシング化が進行し、社員が直接に現場の第一線で悩み、試行錯誤する訓練の場が少なくなっている。また、危険に対する直接的な経験も極めて限られたものになっており、安全意識の低下や安全・品質管理能力の低下が懸念される状況になっている。さらに、自動化・省力化や集中化の進展などにより、設備状態や業務内容がブラックボックス化し、異常の兆候や環境の変化などを直接体で感じることが少なくなっている。このため、異常時の対応力や改善力が身に付きにくくなっている。加えて、業務の分業化の進展によって業際問題に対する総合的な改善力の低下や、ベテラン技術者・技能者の世代交代に伴う技術・技能の継承も課題となっている。
企業や人材を取り巻く環境が大きく変化している中で、トップから現場の先端まで一人ひとりが考え行動する、そして、現場とトップが問題点を共有し,一体となって安全を含めた課題解決を図っていく組織的な取り組みが重要である。
このような中で、第一線の現場を訪れたときに、トップから一般社員や協力会社の関係者まで一人ひとりが親しく声をかけ合い、また、職場の問題点について組織を超えて意見を出し合い、それらの改善について真剣に話し合っている姿に触れると、心がつながり合い、力を合わせて仕事を成す組織の活力や発展の可能性を感じることがある。
時代の変化を受け止め、組織の強い体質を作り上げるために、各階層の役割、必要な能力は何か、これを満たすためにどのような人材が必要か、いかにして育てるか、今一度組織全体の人材養成のシステムを再点検する必要がある。
(いのうえ・もとゆき=東京電力(株)品質・安全監査部安全監理グループ・マネージャー/部長) |