特集:労働科学と国際協力
<俯瞰(ふかん)>得本輝人[(財)国際労働財団理事長]:これからの国際協力
小木和孝[労働科学研究所主管研究員]:国際協力における労働科学の役割
井上枝一郎[労働科学研究所国際協力センター長]:労働科学研究所の進める中国との国際協力
劉 英学[上海市職業安全健康協会副理事長]:中国における安全生産事情
労働科学研究所の産業安全保健技術国際協力
(1)チャラムチャイ・チャイキティポン:マヒドン大学と労働科学研究所との長く強い協力関係
(2)鈴木宏二:労働科学研究所と国際労働財団(JILAF)のPOSITIVEプログラムについて
(3)北川哲夫:日本経団連国際協力センター(NICC)の国際協力活動
(4)仲尾豊樹:東京労働安全衛生センターの国際協力活動
編集部:企業の海外進出と安全衛生ニーズ〜アンケート集計結果より〜
<労働科学と私(18)>山村行夫:職業病としての金属中毒を求めて
<トピックス>泉 博之:腰痛防止対策の再設計〜チェックリストの活用〜
<労働の科学Q&A>稲井 巡:有機ガス用吸収缶のガスの種類による吸着能の違いは?
<話題>編集部:機械安全リスクアセスメントの実践事例を紹介
<知りたい てくのロジー(15)>増田忠英:いよいよペーパーレス社会が到来する? 〜紙とディスプレイの長所を併せ持つ電子ペーパーの技術〜
<新しい働き方を探る(20)>水野基樹:エスカレーション現象
<大原コレクション散策>『受胎告知』エル・グレコ・作/柳沢秀行・解説
<Cinema>百瀬しのぶ:妻の遺志を継ぎ,大手製薬会社の陰謀を暴く夫の,壮大な愛の物語――『ナイロビの蜂』
<からだにいい“いいからかん”料理(3)>
長須美和子・小田島玉惠:とってもお得! もやしとたまごのお味噌汁
<Information and news>
作業環境測定士登録講習会のお知らせ
労働科学研究所維持会月例研究会 開催報告「石綿(アスベスト)の最新事情が見える」
2006年国際女性の日フォーラム〜女性と意志決定〜
ワークサイエンスニュース
2006年版「人事・総務担当者のためのメンタルヘルス対策」
<Books>
赤堀正成:働きすぎの時代
原 一郎:アスベスト関連疾患日常診療ガイド アスベスト関連疾患を見逃さないために
<俯瞰(ふかん)>これからの国際協力 得本輝人
経済のグローバル化は、国境を越えた企業間の競争を激化させ、その影の部分が失業・貧困の増大を招き、世界の平和を脅かす大きな要因となっている。
政・労・使三者で構成されている国際労働機関(ILO)は、21世紀の目標をディーセントワーク(人間尊重の労働)の確保――つまり労働者の権利が保障され、十分な収入を得、適切な社会的保護のある生産的な仕事の確保としている。
そのためにILO新宣言として、基本8条約に盛り込まれた中核的労働基準(団結権・団体交渉権の保障、児童労働や強制労働の禁止など)を、世界各国が批准するよう求めている。
このことは、開発途上国をはじめ各国が、健全な経済・社会発展を成し遂げるためには、労働者の基本的権利を保護し、そこに自由と民主主義を機能・定着させることが重要であることを意味する。これが国際協力の基本に据え置かれなければならない。
また、ディーセントワーク確保のために、安心して働ける職場環境づくりが必要であり、安全衛生面の役割は非常に大きい。
企業行動においては世界的にCSR(企業の社会的責任)が求められている。このことは日本企業の海外進出、多国籍化が進んでいる今日、企業が国内でも海外でも自己の利益のみを追求するのではなく、企業に関係するステークホルダー(利害関係者)つまり社会全体の利益を追求していくことが、結局は自己の利益の向上、企業の永続的発展をもたらすということにほかならない。
労働安全衛生面でわが国は,高成長時代の生産第一主義から安全や環境に配慮する人間優先へと、政・労・使が努力し前進させてきた。
その過程で、企業の中に労働者の参加のもと「安全に勝る生産なし」と安全を最優先する一種の「安全文化」の考え方が浸透してきた。しかし、近年重大災害の頻発などにみられるように、労働安全衛生活動が形骸化しているとの反省や、メンタルヘルスの重要性など新しい課題を抱えている。
改めて労働者の参加のもとに、予防を中心としたマネジメントシステムの再構築による「安全文化」の定着・発展が求められている。
国際労働財団は国際協力のNGOとして、ナショナルセンター・連合により設立され、安全衛生分野では労働科学研究所の協力のもとにパキスタンをはじめ9ヵ国で労働組合による参加型安全衛生改善トレーニング・POSITIVE(Participation-Oriented
Safety Improvement by Trade union InitiatiVE)活動を展開してきた。
開発途上国では残念ながら、労働者の参加のもとに労使協力してマネジメント体制の確立、ならびに政府の法整備の面で未だ不十分である。今後の国際協力の重点を「安全文化」を国内と同様、途上国においても定着させていくという観点での幅広い協力活動がますます重要である。
(とくもと・てるひと=(財)国際労働財団理事長) |