財団法人労働科学研究所ホームページ出版労働の科学61巻5号
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61巻(2006年)
5号目次

 

心機一転 
スナヤマエミコ

特集:こころのメンテナンス術

<俯瞰(ふかん)>小川 宏[アナウンサー]:うつ病は完全に治る

笠原 嘉 [名古屋大学名誉教授]:サラリーマンのうつ病
井口英治 [国土交通省]:悲観的にではなくうつ病を発展的にとらえる
鈴木安名 [労働科学研究所]:人事担当者と上司による職場復帰者への対応
栗岡住子[住友金属工業(株)]:企業でのメンタルヘルス対策の実際

<労働科学と私(17)>塩沢美代子:困ったときの労研だのみ
<トピックス>矢野友三郎: CSR(企業の社会的責任)の国際規格策定
<安全衛生マネジメントシステム構築講座(2)>木田哲二:労働安全衛生組織
<海外だより>吉川 徹:ツナミから1年後のインドネシア:安全衛生の取り組み〜POSITIVE導入セミナー開催される〜
<労働の科学Q&A>常森和男:農薬散布時に使用するマスクは?
<地球との共生をめざして(3)> 鷲谷いづみ:人類の近未来をシナリオで占う
<知りたい てくのロジー(14)>増田忠英:クルマも充電する時代がやってくる?〜性能向上で再び注目を集める電気自動車(EV)〜
<Talk to Talk>肝付邦憲:残したもの
<産業安全保健エキスパート養成コースNEWS>編集部:安全向上は品質アップにつながる〜宇佐美聰・三菱電機常任顧問
<大原コレクション散策>『睡蓮』クロード・モネ・作/柳沢秀行・解説
<Cinema>百瀬しのぶ :潜水士という仕事に命をかけた男の物語――『LIMIT OF LOVE 海猿』
<労働科学のページ>
アンケート調査による慢性疲労の出現頻度と特徴について(前原直樹ほか)/平井毓太郎教授と乳幼児の鉛毒性脳膜炎に関する史的考察(堀口俊一)/柔軟な床マットが8時間の模擬立ち作業における下腿周径の変化量と下肢違和感に及ぼす効果(鈴木一弥ほか)/中規模な地域一般病院での看護実践にあった効果的な医療事故防止教育(注射・与薬教育)プログラムの開発―実態の把握と教育内容の提案―(内藤堅志)
<からだにいい“いいからかん”料理(2)>長須美和子・小田島玉惠:“良いかげん”に作るロールしないキャベツ
<Information and news>
維持会月例研究会開催のお知らせ:石綿(アスベスト)の最新事情が見える
作業環境測定士登録講習会のお知らせ
<Books>水野基樹:HRMマスターコース 人事スペシャリスト養成講座


<俯瞰(ふかん)>うつ病は完全に治る  小川 宏

 1992年秋,激しい倦怠感と不眠に襲われた。生活エネルギーが全部なくなった感じだった。病院で検査を受けても,糖尿病以外は異常がない。
 翌年の3月16日(月)早朝,目が覚めた。その日自殺しようと決めた。
 2005年1月,厚生労働省の発表では,月曜日に命を落とす人が断然トップ。男性は早朝,女性は正午前後だという。気がついたら線路の横に立っていた。自殺する寸前,「自殺は愚か者の結論」という名言を思い出して助かった。
 私のように倦怠感,睡眠障害,自殺願望など5項目以上の症状が2週間以上続いたら,うつ病を疑って専門医(神経科,神経内科,心療内科など)を訪れたほうが早道である。重いうつ病と診断され,3ヵ月入院した。
 翌年,『徹子の部屋』(テレビ朝日)でうつの話をしたところ,自宅に電話が殺到し3日間対応に追われた。この病にまだ偏見がある。ストレスからくる現代病ならば,ストレスを解消すればよい。好奇心を持つ,自分の時間を作って好きなことをする,睡眠時間の確保,散歩,肩書きを捨てる,メモをする,笑う,カラオケで声を出す――それもマイクを独占しない(「カラオケを歌う天国聞く地獄」という川柳さえある)。
 人間関係もストレスをためる。「丸い卵も切りよで四角」「ものも言いよで角が立つ」――言葉の使い方を考え,相づちを打って聞き上手になる。相づちは人の心の真実をくみ出す誘い水。人をほめる。プロ野球・千葉ロッテをシリーズ31年ぶりに優勝させたバレンタイン監督はよくほめたという。ジョーク,洒落,ユーモアは笑いを誘う。ユーモアは人と人の心を結ぶ握手であろう。
 話は前に戻るが,入院して1ヵ月たったころ,前よりも症状が重くなった。主治医に言うと「それは治っていくための一つの通過点ですからご心配なく」と言われ,ひと安心したことがあった。
 そのころNHK時代の親友から病院あてに1通の手紙をもらった。「いま辛いだろうが,あと一息で,〈辛+一=幸〉になるよ」。これを見て,処方箋にはない薬のような感じがした。
 いよいよ3ヵ月の入院生活に別れを告げるときがきた。その日,6月の風はさわやかであった。「六月を綺麗な風の吹くことよ」(正岡子規)
 入院で教えられたことが多々あった。当時,私は66歳。これまで一人で生きてきたのではなく,多くの方のお力添えで,生かされてきたと思えるようになったこと,病気は生活上の苦しみで人生の挫折ではない,それは次元が違うからだ。いま生きている喜びを感じることが心を生き生きとさせてくれること,そして「病は心を洗う」心境にもなれた。
 「うつ病」は,言ってみれば長いつきあいの“悪女”のようなもの,いつのまにか“悪女”は私のそばから去っていった。
 ある新聞に「うつ病」についての俳句が掲載されていたので「うつ」が漢字でかけるようになった。講演をしていて漢字で書けた人は一人の男性だけだった。
 「鬱の字の二十九画梅雨まかせ」
(おがわ・ひろし=アナウンサー)

 
 


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