特集:安全のリレー2007
<俯瞰(ふかん)>野口和彦:安全の視点からみた2007年問題
岡上正明 :製造現場における技術と安全の伝承
小関智弘 :現場を変えてこその安全
糸山和年 :製造現場における安全の伝承 〜技術伝承データベースの構築〜
小川輝繁 :安全に関する教育機関の役割と取り組み
中川伸一 :安全衛生技術の継承の現状と対応
<労働科学と私(16)>輿 重治: 労働衛生との出会い
<安全衛生マネジメントシステム構築講座(1)>木田哲二: プライムシステム
<トピックス>藤垣裕子:科学技術と社会のよりよい関係を求めて〜STS(科学技術社会論)とは〜
<労働の科学Q&A>笹生 稔:使い捨て式防じんマスクの呼気による湿気について
<話題> 鷲谷いづみ:花粉症と生態系
<安全・安心(6)>赤堀正成: 事前介入による安全・安心の実現を
<知りたい てくのロジー(13)>増田忠英: 高セキュリティ社会実現の鍵を握る「バイオメトリクス」〜身体的・行動的特徴から個人を識別する技術〜
<新しい働き方を探る(19)>水野基樹:ダイバーシティ・マネジメント
<産業安全保健エキスパート養成コースNEWS>編集部:第1期研修が完結!!
<大原コレクション散策> 『和服を着たベルギーの少女』児島虎次郎・作/柳沢秀行・解説
< 大原コレクション散策・連載にあたって>野村 茂:大原美術館と労働科学研究所
<Cinema>百瀬しのぶ:さまざまな階層,さまざまな人種が抱える問題を描き出した傑作!――『クラッシュ』
<からだにいい“いいからかん”料理>長須美和子・小田島玉惠:手作り簡単イチゴジャム
< Information and news>
産業安全保健エキスパート養成コース受講生募集
ワークサイエンスニュース
作業環境測定士登録講習会のお知らせ
<Books>久保智英:ストレスと心の健康 新しいうつ病の科学
<俯瞰(ふかん)>安全の視点からみた2007年問題
野口 和彦
2007年には,団塊の世代が歳に到達し始める。日本企業の多くが定年制を採用しており,またその大半がその退職年齢を歳としているために,年から年にかけて,多くの定年退職者を迎える可能性がある。このことにより,さまざまな問題が発生することが懸念され,デフレから脱出しようとしている日本企業の先行きにとって大きな懸念材料となっている。
この対応として,厚生労働省は「改正高年齢者雇用安定法」を制定し,事業主に対して年4月までに,「定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入」「定年の定めの廃止」のいずれかの措置を講ずることを求めている。
したがって,2007年問題は,当初心配されていたような,社会や企業の多方面への急速な影響(必ずしも悪い影響のみとは限らないが)をもたらすことはないと考えられる。しかし,定年の5年延長により個人の収入問題は改善されるとしても,安全に関しては5年後に多くの経験者が退社するという構造は変わっていない。なぜならば,安全を担保するためには,単に担当の人数を確保すればよいというわけではなく,知識と技術と経験の引き継ぎが必要であるからである。したがって単なる定年延長では,将来大きな問題が発生する可能性があり,問題の先送りとなっているだけという状況になりかねない。やはり,安全の確保という視点からは,この段階で2007年問題を真剣に議論しておくことが重要である。
2007年問題は,安全の観点からは,経営の視点で考える場合と現場の視点で考える場合では違った問題点が浮かび上がってくる。
まず,経営の視点から考えると,改正高年齢者雇用安定法が制定されるまで,2007年問題に手を打たなかったという企業があれば,やはり経営の怠慢というしかない。年に多くの社員が定年を迎えることは以前からわかっていたことであり,準備の時間は十分にあったはずである。デフレを脱却するために十分な対応ができなかったということは考えられるが,安全対応の重要さや技術などの引き継ぎを考えれば,先送りにしてよい問題ではないことは,良識ある経営者であれば理解できていたはずである。
大切なことは,経営者が常に先々のことを考え,事前に対応を考えていく先見性を持つことである。必要な対策は法制度がなくとも,経営者の裁量で可能な対策は,積極的に打つことができる。必要な人材の定年延長または再雇用を行うことは,経営の裁量の範囲であり,社会的には何も妨げる障害はない。そういう意味では,優秀な経営者のいる企業では,安全対応に関する2007年問題は,本来存在しなかったはずである。2007年問題を考えることは,現場安全に,経営が大きな責任を持っていることを再認識するよい機会ともいえる。
一方,現場の視点でみると,別の問題点が浮上してくる。その知識を持った担当者は,いずれその職場を去っていく。その際に,その担当者の,知識,技術,経験を引き継ぐことが重要であり,そのためには個人の固有の「芸」として蓄積されたものを,第三者に伝えることが可能な「技術」に変換することが重要である。
(のぐち・かずひこ=(株)三菱総合研究所・研究理事) |