財団法人労働科学研究所ホームページ出版労働の科学61巻3号
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61巻(2006年)
3号目次

 

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砂山恵美子

特集:医療事故対策 〜人間工学的アプローチ〜

<俯瞰(ふかん)>黒田 勲:医療事故対策と人間工学
土屋文人 :医薬品の医療事故を防ぐ
嶋森 好子:ヒヤリ・ハット事例から見た事故防止対策と医療安全に向けて患者に期待される役割
小松原明哲 :医療機器のユーザビリティ設計
河口 豊:安全な病院設計
園田 努:医療事故防止対策〜医薬品メーカーの取り組み〜ト

<産業医学いまむかし(38)>野村 茂:産業医のはたらき
<労働科学と私(15)>堀口俊一: 労働衛生学研究の道を歩んで
<トピックス>石井まこと:企業のグローバル化と欧州労働組合〜進む労使関係のEU化〜
<話題>永濱利廣 :花粉症が日本経済に及ぼす影響
<地球との共生をめざして(2)>鷲谷いづみ:「ミレニアム生態系評価」が明らかにした現状
<労働の科学Q&A>岡山正昭:空気呼吸器着用の注意点は?
<From Lab(14)>職場環境リスク研究グループ: 「リスク」って……?
<知りたい てくのロジー(12)>増田忠英:次世代型ディスプレイとして期待される「有機EL」〜より薄く,低消費電力で,高画質な理想のディスプレイ〜
<産業安全保健エキスパート養成コースNEWS>編集部:前期研修が終了!!
<Talk to Talk>肝付邦憲: 汗まみれ
<Cinema>百瀬しのぶ:初恋,友情,母への思い……あのころの気持ち,思い出してみませんか?――『僕が9歳だったころ』
<労働科学のページ>2連続模擬夜勤時にとる仮眠の睡眠構築に及ぼす影響(佐々木司ほか)/救急出場件数の増加が救急隊員の勤務中の生活活動時間に及ぼす影響に関する調査研究(元橋綾子ほか)/男女賃金差別と年功賃金 森ます美『日本の性差別賃金』の検討(岩佐卓也)ほか
<Books>藤川美枝子: リスク・パーセプションと人間行動


<俯瞰(ふかん)>医療事故対策と人間工学  黒田 勲

 1990年代後半から非加熱血液製剤による多数のエイズの感染の対策から諸種の薬剤の副作用の問題がクローズアップされ、年には横浜市立大学付属病院の手術患者取り違え事故を発端とする大規模病院の続発する医療事故に対して、2001年、厚生労働省は「医療安全対策検討会議」を発足させ、医療安全の重要な問題として全国的対策検討に乗り出した。
 医療業務は同一疾病であっても年齢や個人差が大きく、また病状の進行状態によって異なった病態を示し、対応方法も異なる。このため長い間、医療業務は医療者の技能や注意力に大きく依存する労働集約型業務が行われてきた。しかし医療技術の急速な進歩と拡大に伴う手技の精緻化と複雑化、広範化されたシステム医療の導入、細分化された専門分野、薬剤の進歩と多様化、薬効の特異性、さらには国民の高齢化による疾病形態の変化など、医療を取り巻く業務環境が大きく変貌してきている。また社会における情報革命も加味されて、医療安全の問題が大きな社会問題として取り上げられるようになった。
 上述の検討会議においては精力的に事故事例やインシデント事例を集め、その分析を実施して、医療業務における不具合の介入する業務や存在箇所に関する知見が積み上げられてきた。しかし前述のように人間の注意力に頼った、複雑で、多様な業務への有効な対策の困難さが解決を遅らせている。
 確かに一般装置産業のような自動化を、医療分野に導入することは不可能であるが、従来、産業分野においていろいろとヒューマンファクターの視点から創意、工夫して導入され、その成果が得られている対策の研究や試みが検討される必要がある。
 本号の特集記事にも検討されている、人間の情報処理、判断、操作に関連する、いわゆる人間工学的視点からの対策が系統的に行われる必要がある。たとえば、「人間―もの」インターフェイスとしての薬剤や医療機材使用のわかりやすさ、使いやすさ、誤認・誤操作の防止方策など一般産業での長い実践の歴史に基づいた対策が必要である。また患者、薬剤や薬量の同定という基本的な、しかし重要な問題はもちろん、患者の病歴、使用薬剤、アレルギーや禁忌特性の確認のためのICカードなどの広い活用が検討される必要がある。
 インシデント分析から得られる医療・看護現場における、錯綜した、時間的に変動する情報の量と流れ、他業務の介入によるトラブルなど、情報の質的、量的流れと品質、またコミュニケーションの精度とワークロードの整理が必要であろう。
 さらに患者の個人情報の保護に留意しながら、情報科学や認知科学の視点から基準化され、しかも企業規模に見合う柔軟性を持った電子カルテシステムのあり方、医療技術の有効性評価、医療費の経済性評価などにも伸展できる情報システムも必要になるだろう。
(くろだ・いさお=日本ヒューマンファクター研究所・所長)

 
 


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