特集:シニア運転の安全・安心
<俯瞰(ふかん)>
シニアドライバーへのメッセージ 増岡 浩
北島洋樹:高齢ドライバーの実態を考慮した新しい教育の方向性
藤田 勉:高齢者交通安全教育
〜行動分析学の立場から〜
渡辺雅巳:トラック運送事業における運転者の高齢化と安全確保
榎元紀二郎:胸突き八丁にさしかかった高齢者対策
舟川政美:高齢者にやさしい車
〜視覚における加齢の影響〜
<産業医学いまむかし(36)野村 茂:作業態様による健康障害
<労働科学と私(13)>東田敏夫:「労働科学・学習」は,生きがいでもあった
<地球との共生をめざして(1)>鷲谷いづみ:地球の限界を知る
<From Lab(13)>メンタルヘルス研究グループ:取り組みやすい手法を伝授
<労働の科学Q&A>石場義久:研磨作業時に着用する防じん眼鏡について
<トピックス>河口真理子: CSRの重要テーマ 労働のダイバーシティ<上>
<産業安全保健エキスパート養成コースNEWS>編集部:20名の精鋭集めスタート!!
<知りたい てくのロジー(10)>増田忠英: 海底下7,000メートルの世界への挑戦 〜技術の粋を結集した地球深部探査船「ちきゅう」〜
<話題>鈴木智子ほか: 海外赴任者に対する安全配慮義務について 〜医療スタッフができること〜
<Talk to Talk>肝付邦憲: 二度とない人生だから
<cinema>百瀬しのぶ:群れ社会に生きるオオカミが選ぶのはボスや仲間? それとも愛?――『あらしのよるに』
<information and news>
作業環境測定士登録講習会のお知らせ
<books>原 邦夫: 中国環境リポート
<俯瞰(ふかん)>シニアドライバーへのメッセージ 増岡 浩
世界で最も過酷といわれる自動車レース、「パリ〜ダカール・ラリー」。
筆者は,フランスの首都パリからアフリカのセネガル共和国の首都ダカールまで約1万キロ、15〜20日間に及ぶ壮大な自動車レースに出場し、過去2回、総合優勝している。
レースの舞台はサハラ砂漠。いまだに人が足を踏み入れたことのないような、広大な大地の道なき道を最高時速200キロの速度で突っ走り、毎日、主催者から渡される簡単な地図を手がかりに目的地をめざしてタイムを競い合う。もちろん、人より速くなければ勝てない。
コースの途中には,想像を絶する高さ100メートルにも及ぶ砂丘群やグランドキャニオンを思わせる大きな渓谷もあり、その都度コースの修正を要求されることもある。
1日で走る走行距離はおよそ600キロ。東京〜岡山間の距離に匹敵する悪路を毎日約6時間ノンストップで走破しなければならない。まして、エアコンの付いていない車内は50度を超える灼熱にさらされることになる。ゴールできる車の数は半分以下。大半はアクシデントや車両トラブルで戦列を去っていく。
この厳しいレースに毎年、世界中から500名を超える老若男女の挑戦者たちが集まってくる。参加者は20歳から70歳代までと非常に幅広く、年齢に関係なく完走という一つの大きな目的に向って突き進む姿は時に美しくもある。
その中で優勝を狙うドライバーは約10人ほどしかいない。いつの間にか、私も45歳になりその中の最年長ドライバーになってしまった。
普段の運転でも、レースであれ、運転という行為はスポーツと同じと考えている。目で情報をキャッチし、脳で判断し、それを手足に伝え強弱を加減しながらハンドルやペダルに素早く伝えコントロールするのである。人の運動能力のピークは20〜30歳代がピークと言われるが、逆に熟練ドライバーの強みは若年者より運転経験が豊かで、状況判断や予測の面で有利な部分もあり、何よりマイペースで走れることである。
運転で一番重要なのは目だと思う。年齢とともに視力の衰えや視界が狭まる傾向にある。
なるべく視線を遠方に移すことにより状況を早めに収集できる。私も、数年前からレース用の専用メガネを作り視力2・5を確保した。これにより300メートル前方の障害物を確認できるようになり、余裕を持って運転できるようになった。
動体視力を上げるための眼球運動も欠かさない。特に夜間や雨天時の走行には安全につながるので是非試してみる価値はあると思う。
それと集中力。最近、ニュースなどで報道される事故は単純ミスによるものが多い。ギアの入れまちがいやペダルの踏み間違いによるもので、熟練者ゆえの油断であろう。スタート前の運転に対する気構え、準備、確認作業をもう一度、初心に帰って徹底したい。
また、長距離ドライブでは早めの休憩を取ることが必要である。特に高速道路走行では身体が安静状態になり、酸欠気味になる。これは、睡眠前のリラックスモードと同じで判断力が鈍る。軽く身体を動かし酸素を十分取り入れ、水分補給も忘れずに。
レースがないときには、三菱自動車の新型車のテストドライバーを研究所で行っていて、誰でも安全に楽しく運転できる車づくりをめざしている。これからは携帯電話同様に、高齢者でも判別操作しやすいスイッチ類や走行安全装置の充実が進められている。環境問題しかりである。さらに企業努力により低価格にて安全提供する必要があると思う。
車ほど身近で便利な交通手段はありません。これからもどんな年代の方々もドライビングを楽しめるような環境が整っていくことを願っています。
(ますおか・ひろし=ラリードライバー) |