特集:格差社会の中の若者
<俯瞰(ふかん)> 調整弁にされる若者たち 斎藤貴男
山田昌弘:夢見るフリーターの将来
木下壽國:正社員になりたい
赤堀正成:フリーターとニートの距離
二神能基:若者の再出発支援の現場から
新実 修:若年雇用へのトヨタ自動車の取り組み〜技能職採用に関して〜
<産業医学いまむかし(35)野村 茂:VDT作業者と健康と
<労働科学と私(12)>下山房雄:労研で創ったもの・労研で学んだこと
<慢性疲労研究に挑む〜脳科学研究の新展開を迎えて〜(5)>大橋恭子ほか:慢性疲労の身体活動パターンを探る
<From Lab(12)>ヒューマンケアサービス研究グループ:医療・介護・教育分野の安全と健康をお手伝いします
<労働の科学Q&A>篠宮真樹:静電ろ過材(マイティミクロンフィルター)の交換時期について
<トピックス>鈴木敏哉:自由時間の拡大と暮らしの充実 認知度着実に高まる〜第2回北海道サマータイム導入実験を終えて〜
<ILOインフォメーション>ILO駐日事務所:2005年総会の成果と2006年の予定
<知りたい てくのロジー(9)>増田忠英:循環型社会を実現するバイオマスエネルギー〜有機性廃棄物や作物を資源に変える技術〜
<シリーズ・環境問題と社説(11・最終回)>肝付邦憲:環境は何にも代え難い共有の宝
<労働衛生コンサルタント事務所の窓辺(25・最終回)>木田哲二:一般健康管理<その3>
<巻頭コラム・二十一世紀は心の世紀(12・最終回)>林雄二郎:地球的な場でのCSR
<cinema>百瀬しのぶ:若年性アルツハイマーに侵された妻を愛した男と,暴力的で天然系の青年を演じ分けた最後の大物韓国スター,チョン・ウソンの話題作――『私の頭の中の消しゴム』『トンケの蒼い空』
<information and news>
ワークサイエンスニュース
作業環境測定士登録講習会のお知らせ
<books>鈴木安名:うつ病からの生還 うつ病とは,こうして闘え!
<俯瞰(ふかん)>調整弁にされる若者たち 斎藤貴男
「人はどうしても自分自身の体験を基準に判断してしまう。それだけでは通用しない時代なんだと、ようやくわかってきましたよ」
連立与党の大物政治家が苦笑した。憲法絡みの取材中、脱線してフリーターやニートの問題に話が及んだときのことである。
少し前の参議院予算委員会を思い出す。若者の雇用不安について野党議員が質問したら、与党席から「正社員になればいい」の野次が飛んできた。彼女は振り向きざま、「なりたくてもなれないのが問題なんですよ」と怒鳴り返したと、後で本人に聞かされた。
政治家に限らない。現在の世の中で一定以上の地位にある人々と若者とでは、職業を持つことに対する意識が天と地ほども違う。まだしもチャンスが開かれていた時代に育つことができた者は、「ニートの立場に甘んじるような奴は怠け者」などと受け止めたがる。
あまり友だちになりたくない若者がいないとは言わない。だが圧倒的多数派は、将来を真剣に考え、悩んでいるにもかかわらず、人件費のカットを至高の価値として戴くようになった企業経営者たちによって、まともに働く場さえ与えられない。単に労働力の調整弁にされている。
彼らは同時に企業社会の金ヅルだ。一億総中流の共同幻想の名残りで、キャッシュもないのに物欲を抑えられない。一方でメディアが消費を煽る。サラ金のイメージキャラを兼ねたグラビアアイドルの甘い声に誘われて無人店舗に通いつめ、気づいた頃には暴力団に囲まれていた、などという悲喜劇が、珍しくもなんともなくなった。
すると今度は、「身のほどをわきまえないから」の声がとして湧き上がる。「希望格差社会」とまで形容されるに至った政治の責任は問われもせず、「持って生まれた才能もないのに、やたら夢や希望を肥大化させた方が悪い」と憤る政治家や官僚に引っ張られて、“お上”発の生き方規範が次々に打ち出されること夥しい。
そこでジャーナリストは、たとえば戦争を恐れるのだ。国民の価値観が統制される事態となれば、徴兵制の復活も容易な道理。おや、そしたらサラ金のカモが減って消費経済が立ち行かない? どれが右やら左やら。
それでも筆者は、希望を紡ぐ機会だけはどこまでも開かれていなければ、と考える。自分の限界は自分自身で思い知るのが筋であり、“お上”ごときに教えていただくものではないゆえに。
議論は続く。ニートの側に立つ大学教員の雑誌原稿に、こんなことが書いてあった。「生きていれば楽しいこともあるのに、あなたは本当は絶望しているはずだなんて言われたくない」云々。それもそうだ。では物書きで飯を食えている筆者も、いや、そう書いた大学教員だって、状況を高みから論じていることになるのだろうか。
正直,よくわからない。ただ,こうしてどうどうめぐりを重ねていけることこそが大切なのではあるまいか。我々」とともにあるか,しからずんばテロリストか式の善悪二元論などもう真っ平だ。「人生いろいろ」だなどと,多様な人生を讃える装いで,自らを否定したくない人々の心理にだけはつけ込んでくる小泉首相のやり口も。
(さいとう・たかお=ジャーナリスト) |