財団法人労働科学研究所ホームページ出版労働の科学60巻7号
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60巻(2005年)
7号目次

表紙「The Hydrant(給水栓)」
スナヤマエミコ

特集:アスベスト対策 〜「石綿障害予防規則」をふまえて〜

<俯瞰(ふかん)>アスベスト対策の充実へ向けて 櫻井治彦
名古屋俊士:石綿に関する行政の動きの歴史
名取雄司:石綿(アスベスト)関連疾患〜現在・今後・予防〜
米谷秀子:解体工事におけるアスベスト対策
宮本 一:アスベスト〜現場のニーズと活動〜
村田 克:今日のアスベスト無害化技術

<国際会議レポート>村山武彦:2004年世界アスベスト東京会議に参加して
<産業医学いまむかし(30)>野村 茂:日本の「職業がん」のこと
<労働科学と私(7)>青山英康:労働現場の要求を研究課題として
< 労働の科学 Q&A> 笹生 稔:有機ガス用パッシブサンプラー
<From Lab(7) >労働社会生活研究グループ:ディーセント・ワークの実現に向けて 〜労働科学における社会科学的アプローチ
<知りたい てくのロジー(4)>増田忠英:省電力,長寿命,コンパクト 環境に優しい“21世紀の明かり”「LED」
<安全・安心(2)>余村朋樹:JR 西日本は変われるのか 福知山線脱線事故についての一考察
<労働衛生コンサルタント事務所の窓辺(20)>木田哲二:メンタルヘルス・長時間残業理想型
<新しい働き方を探る(15)>水野基樹:パワー・マネジメント
<シリーズ・環境問題と社説(9)>肝付邦憲:エネルギー利用と環境問題<1>

<巻頭コラム・二十一世紀は「心」の世紀(7)> 林雄二郎:地球規模でのリサイクル機能
<cinema>百瀬しのぶ:孤独を抱える老トレーナーと女性ボクサーの崇高な心の絆の物語――『ミリオンダラー・ベイビー』
<information and news>
作業環境測定士登録講習会のお知らせ
労働科学研究所維持会特別月例研究会「オトコの働き方を変える〜男女共同参画社会への道〜」
<労働科学のページ>階段降段時のヒールクリアランスと主観量からみた危険性の低い歩行ピッチ(大西明宏)/全身振動の生体影響研究の進歩と許容基準改訂の課題(西山勝夫)ほか
<books>薩佐久仁子:現場発 スローな働き方と出会う


<俯瞰(ふかん)>アスベスト対策の充実へ向けて

 今般7月1日から施行される石綿障害予防規則は、特定化学物質等障害予防規則の中に含まれていた石綿への対策を別の省令として独立させたものであり、今後のアスベスト対策として関連する事業者に対して従来よりも厳しい規制を課している。
 永年きわめて有用な物質として使用されてきたアスベストであるが、昨年、ジョイントシートやシール材のような一部の製品への例外的な使用を除き、製造や使用などが禁止され、今後はすでに使用されたアスベストへの対策が主な課題となったわけである。
 しかし、アスベストの有用性の基盤であった耐久性の高さゆえに、建築物などに使われているアスベスト繊維は永年にわたって存続する。そのため解体や修理のときに労働者がばく露する可能性が高いし、吹き付けられたアスベストは解体・修理のみならず、常時飛散してリスクを高めている恐れもある。このようなばく露による肺がん、中皮腫などの健康障害を予防するために、アスベスト対策を今後少なくとも数十年の長きにわたって継続していかねばならないであろう。
 職業病予防の歴史の中でも、このように過去に使われた物質による健康障害の予防に、国を挙げて大々的に取り組む必要が生じたことはない。それも、過去のばく露による健康障害の早期発見が目的ではなく、将来のばく露を防止することによって、健康障害を予防しようとする点に特異性がある。これは、まだ発生していないばく露を防止するところに目的の中心があるから、やりがいのある仕事であり、わが国の労働衛生の大きな課題として取り組んでいかなければならない。
 石綿障害予防規則では、今後起こりうるばく露の防止を中心として事業者が講ずべき措置を具体的に規定しており、さらに禁止されずに残った製品についてもアスベストを含有しない製品に計画的に代替化していくことを事業者の努力義務として第1条中に明記している。禁止されなかった部分は全アスベストの数パーセント程度といわれており、使用の場でのアスベストばく露は少ないと思われる製品形態になってはいるが、今後の代替化の早急な進展が望まれるところである。
 対策が求められている作業は、@建築物や工作物の解体等の作業、Aアスベストが吹き付けられた建築物での作業、Bアスベスト含有製品の製造や取り扱い作業の3種類である。特に、これからの対策の主な対象である@Aの作業の多くは非定常作業であり、アスベストの有無を知るのが難しい、複数の事業者が混在する可能性が高い、作業者の認識が低いなど――そこでのばく露防止対策には困難が多いことが予想される。
 アスベストの有無を知ることが対策の基本であるため、規則では建築物や工作物の解体、破砕などの作業を行うときは、アスベストの使用の有無を事前調査することを義務づけている。さらに調査でも不明の場合は、分析によってアスベスト使用の有無を明らかにすることも義務づけている。
 このような対策を十分に実効あるものとするには各方面の大変な努力が必要と思われるが、是非とも成果が得られることを心から期待している。
(さくらい・はるひこ=中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センター・所長)



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