財団法人労働科学研究所ホームページ出版労働の科学60巻1号
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60巻(2005年)
1号目次

表紙「国際こども図書館」
スナヤマエミコ

特集:労働安全衛生法のこれから

<俯瞰(ふかん)>労働安全衛生法を考える 井上 浩

小木和孝:国際的視野からみた労働安全衛生法への期待
高橋信雄:雇用・就業形態の変化と労働安全衛生法
西野方庸:労働安全衛生法改正に期待する「労働者の参加」確保
北浦正行:これからの労働安全衛生対策への視点
木田哲二:労働安全衛生法の進むべき道筋 〜移ろいゆく時代の中で〜

<労働科学と私(1)>野村 茂:医学の眼で労働をみてきて
<From Lab(1) >ヒューマン・テクノロジー・インタラクション研究グループ:人間・組織――による技術間の相互作用を研究
< 労働の科学 Q&A(1)> 木村菊二: 防毒マスクの有機ガス用吸収缶の破過を作業現場において推定する方法は?
<産業保健の新潮流 〜自主・自律の時代へ〜(10)>竹田 透:「労働者」にとっての自律的産業保健<4> 〜今後の事業場における健康管理と自律の意義〜
<Talk to Talk> 肝付邦憲: 働く場での存在感
<トピックス>小山 博已:粉じんの管理濃度の改正とそれに伴う測定装置
<ノクトビジョン> 島村 伊織ほか: 立位での作業姿勢への対応
<新しい働き方を探る(12)> 水野 基樹: キャリアカウンセリング
<話題>辛島 光彦:仕事前の音楽によりパフォーマンスアップ

<巻頭コラム・二十一世紀は「心」の世紀(1)> 林雄二郎: 便益とアイデンティティ

<cinema>長編社会派ミステリー奇跡の映画化――『レディ・ジョーカー』(百瀬しのぶ)
<information and news>
「欧・日労働環境の問題点と予防対策」開催
作業環境測定士登録講習会のお知らせ
<労働科学のページ >
情報化と雇用の多様化が司書の職務満足・不満足要因に与える影響(川崎千加)/森林管理レジームの転換期における林業労働者の状態 ―その就労条件と労働安全衛生―(早尻正宏)/職場における腰痛の予防 ―人間工学的対策の展開―(宇土 博)/テレワークと在宅就労者による「病気」の再概念化(W.A. スピンクス)/ 中小企業の安全衛生 ―組織と担い手に注目して―(柴田英治) ほか
<books>
竹内由利子:快適な職場をデザインする


<俯瞰(ふかん)>労働安全衛生法を考える 井上 浩

 1972年労働基準法から分離して労働安全衛生法が制定された。その後30年近い歳月が流れたが,その間労働災害が減少し,それなりに役割を果たしてきたと言えよう。しかし労働災害の絶対件数は統計上減少したとはいえ,重大災害は減少していないし,過労死などのように予防はもとより労災認定さえも困難な労働災害は増加してきている。特に作業関連疾患などの新しい型の労働災害については,現在の労働安全衛生法は無力に等しい。したがって改正が必要であるが,以下それについて若干の私見を述べてみることにしたい。
 現在の労働安全衛生法の内容は,大きく分けると,@安全衛生管理体制,A具体的な危害に対する安全衛生基準,B政府の行政――という三つの部分から構成されている。この中で最も量的に多いのは具体的な安全衛生基準であるので,まずそれから述べてみよう。
 この安全衛生基準は,労働者の業務による疾病を防止することが主目的であるが,それは心身の「身」のほうが主であって「心」の面については規定を欠いている。したがって,それらのことについて法律や政省令を改正する必要がある。
 しかし,危害防止の具体的基準についての法規だけの改正に頼っては,労働災害を防止することは不可能である。事業者の責任において自主的な活動を強化することが必要である。そのためには安全衛生管理体制の問題がある。次にそれについて述べる。
 労働安全衛生法に規定する安全衛生管理体制の最低基準は,事業の種類と常時使用する労働者数の多寡により緩厳がある。問題は,労働災害が多発している中小零細事業については弱体か皆無でよいことである。それと大企業であっても安全衛生管理体制があるだけで,あまり活動していない場合もある。したがって,現在は指針にすぎないマネジメントシステムを法令に取り込む必要があろう。その場合に注意すべきことは,とくに中小零細事業において実行可能なものとすることである。
 マネジメントシステムがよく機能している事業者には,労働基準監督の密度を考慮したり,国や地方自治体の商品購入や工事発注の際の優遇なども必要かもしれない。また,企業の社会的責任を考えて,決算書類などに労働災害の発生状況を付記させ,株主総会の討議対象とすることも考えられる。
 最後に安全衛生行政については,何よりも労働災害の当事者である労使の参加を認めるべきである。現在は労働政策審議会における意見聴取のみである。なお,安全衛生は労働条件の中の重要部分であるから,労働基準法第2条「労働条件の労使対等決定」の精神を尊重し,労働者の事業場内における安全衛生に関する発言権を認めるべきであろう。
(いのうえ・ひろし=元・行田労働基準監督署・署長,全国労働安全衛生センター連絡会議・顧問)



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