財団法人労働科学研究所ホームページ出版労働の科学59巻12号
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59巻(2004年)
12号目次

表紙「something new」
drawing by itaru itard

特集:ヒューマンケアサービスと人間工学

<俯瞰(ふかん)>介護と人間工学 青木 和夫

車谷 典男ほか:介護をする人の作業関連運動器障害 〜予防と対策の基本〜
山崎 信寿:身体ケアの新発想
山羽 和夫:福祉ロボットの現状と可能性
ダーグ・クリングステッド: スカンジナビアにおけるユニバーサルデザイン 〜社会的責任と人間工学的な発想の歴史〜
松田 文子ほか:介護福祉機器の人間工学 〜国際モダンホスピタルショウ2004から〜

<産業医学いまむかし(24)>野村 茂:占領下日本の労働衛生
<産業保健の新潮流 〜自主・自律の時代へ〜(9)>野田 悦子:「労働者」にとっての自律的産業保健(3)〜専門家教育の課題〜
<ポイント>川口 孝泰:看護における人間工学の活用
<木をみて,森をみる(6・最終回)>諏訪 良子:「健やかな木」「豊かな森」を育てたい
<話題>東山 正子:「コレステロール低下教室」と全体キャンペーンの効果
<ILOインフォメーション>ILO駐日事務所:2004年総会の成果と2005年の予定
<労働衛生コンサルタント事務所の窓辺(15)>木田 哲二:安全衛生委員会<1>
<海外だより>長須美和子:Mekong Delta 2004に参加して
<シリーズ・環境問題と社説(6)>肝付 邦憲:社説を教育の場に(Editorials in Education)

<cinema>全世界が待ち望んだ幻の映画いよいよ公開――『2046』(百瀬しのぶ)
<information and news>
労働科学研究所実務セミナー<第1回安全セミナー>
作業環境測定士登録講習会のお知らせ
ワークサイエンスニュース
<books>
内藤堅志:医療におけるヒューマンエラー ―なぜ間違えるどう防ぐ―


<俯瞰(ふかん)>介護と人間工学 青木 和夫

 わが国の要介護認定者は増加し続けており,今や400万人になろうとしている。このような要介護者の増加とともに介護者も増加しているが,腰痛など介護者の労働負担に関してはその実態や問題点など,まだ十分に調べられていないのが実情である。
 人間と,その人間が関わるもの(人間も含む)やシステムとの関わりを最適化するという人間工学の観点から見ると,介護作業は,介護者−要介護者,介護者−介護機器−要介護者,要介護者−介護機器というように三つの関係に分けられる。
 介護者と要介護者が直接接する関係は,清拭や体位交換,移乗などの場合に生じ,人間と人間の関係となる。しかし,要介護者の体位交換や移乗などの作業は腰痛の原因となることから,作業方法の改善や介護者の負担を軽減するための介護機器が使用される。この場合には,介護者−介護機器−要介護者という関係になる。このような介護負担軽減のための適切な作業方法や機器を設計作成することは,労働負担を低くするための人間工学の大きな役割である。
 一方,要介護者の側から見ると,このような介護機器は不愉快であってはならない。不愉快というのは身体的に痛みや不快感などがあってはならないということ以外に,人間としての尊厳を傷つけるような精神的不快感を与えてはならないということである。このような観点からの介護機器の設計や評価も人間工学の役目であるが,まだ多くは行われていない。しかし,介護者側の都合だけで介護機器を設計してはならないということは,肝に銘じておく必要がある。
 近年では,数多くの介護機器が開発され,市販されるようになった。これらの機器の情報はインターネットなどで手軽に知ることができる。しかし,これらの介護機器をきちんと使うことができるように指導したり,教育したりすることがまだまだ不十分であると思われる。そのため誤った使い方をして事故を起こしたりする例も少なからず見られる。どのような介護機器をどのように使ったらよいかを学習できるシステムがまだまだ不足していると考えられる。
 また,介護労働者自身が健康をどのように守っていくかについての教育もほとんどなされていない。英国ではHSE(Health and Safety Executive)という政府機関が腰痛などを予防するための介護作業のガイドブックを出している。このようなガイドブックを作成して,わが国でも介護者養成機関で十分に自分の健康を守る方法を身につけてゆくことのできるような体制が整えられなければならないと考える。
(あおき・かずお=日本大学大学院理工学研究科・教授)



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