| 労働の科学 労働科学 書籍・雑誌のご注文&ご案内 |
59巻(2004年)
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<俯瞰(ふかん)>社会的責任と安全 黒田 勲
濱口桂一郎:EUにおける企業の社会的責任をめぐる政策
吉田 昌哉:企業,政府,労働組合の社会的責任
佐久間京子ほか:エティベル・グループにおける企業の労働・人権面の調査・評価方法
鶴田 啓之:「人と,地球の,明日のために〜東芝のCSR活動〜
杉本 寛子:GRIガイドラインにおける労働分野
<産業医学いまむかし(23)>野村 茂:ヨロケ・珪肺・じん肺
<産業保健の新潮流 〜自主・自律の時代へ〜(8)>野田 悦子:「労働者」にとっての自律的産業保健<2> 〜二軸を考えた場合の産業保健スタッフの関わり〜
<労働衛生コンサルタント事務所の窓辺(14)>木田 哲二: 答え合わせ
<ポイント>佐藤 恵美ほか:EAP活動 〜相談ツールの特性と使い分け〜
<Talk to Talk> 肝付 邦憲:夕暮れ
<新しい働き方を探る(11)>水野 基樹:セカンドキャリア
<話題>有光 洋一:「死にたい」という思いにとらわれるとき
<cinema>ジョンウェイン不朽の名作を再び――『アラモ』(百瀬しのぶ)
<労働科学のページ>韓国で行われている労働者の疲労感調査について(金 鎮赫ほか)/労働と高血圧 (内山集二 ほか)/化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)(城内 博)/48時間断眠状態におけるヴィジランスパフォーマンスの変動−不安定状態仮説の検証を中心に−(久保智英 ほか)/蛍光灯器具用コンデンサーの破裂事故によるPCBs曝露事例(熊谷信二 ほか)/視覚障害者用道路横断帯の標準的敷設法に関する研究(2)(大倉元宏 ほか)
<information and news>ILOフォーラム「企業の社会的責任とディーセント・ワーク」「仕事における安全・健康文化」開催される
労働科学研究所実務セミナー<いますぐ使えるメンタルヘルス対策>
労働科学研究所実務セミナー<第1回安全セミナー>
作業環境測定士登録講習会のお知らせ
寄付金のお願い
<letter to the editor>中川裕一「教員」の仕事とこころのあり方について 〜8月号特集「教員の仕事とこころ」を読んで〜
<books>編集部:名経営者が,なぜ失敗するのか?
最近,世界的流れを受けてCSR(Corporate Social Responsibility;企業の社会的責任)が熱心に論じられている。本年4月には経済産業省に「企業の社会的責任に関する懇談会」が設置され,7月に中間報告(案)が公表された。
CSRに関する問題が論議されたのは決して新しいことではなく,日本では江戸時代から,企業の社会に対する存在責任が「家訓」「社訓」として残されている。特にこの問題が国際的にクローズアップされたのは1960〜70年代の世界的経済変動,公害問題が大きな問題とされた頃で,米国ではコンコルドに対抗する超音速旅客機の開発が成層圏の汚染を起こすとして中止せざると得なかったし,当時,環境汚染に関わる企業の順位リストも出版されていた。
1970年代後半から,イタリア・セベソ,インド・ボパールやスイス・バーゼルでの大規模化学工場の事故や広域環境汚染により,化学産業のレスポンシブル・ケア(RC)の問題が世界規模で論じられ,日本でもその体制つくりが行われた。1986年に旧ソ連・ウクライナで発生したチェルノブイル原子力発電所事故での主要原因として「安全文化」の問題が原子力分野だけでなく,広く産業安全で論議され,その研究・対策が講じられるようになった。
産業,経済,貿易の国際化,バリアフリー化,情報の国際化などに伴って,品質管理についての国際基準化としてISO 9000ファミリー,環境基準としてISO 14000ファミリー,労働安全衛生マネジメントシステムとしてILO-OSH2001がすでに設定されている。
しかし,20世紀末期には各国とも科学技術システムの重大な事故や不祥事が頻発し,技術者倫理はもちろん,企業の社会的存在理由や安全哲学が改めて問われるようになった。
CSRとは「企業が法律遵守にとどまらず,企業自ら市民,地域および社会を利するような形で,経済,環境,社会問題(トリプル・ボトムライン)においてバランスのとれたアプローチを行うことにより事業を成功させること」と定義されている。そのためには具体的行動として企業の総合管理機能を挙げて対応する必要がある。
欧米にあっては企業のCSRレベルによって投資家の評価が大きく支配され,SRI(Social Responsible Investment;社会責任投資)として,ステークホールダー(消費者,投資家,従業員,地域社会などの利害関係者)の評価基盤として重要視されている。このため,EUにおいては国が主体となり,企業存在基盤としてのCSRの基準化に熱心である。2004年6月にはISOで国際会議が持たれ,基準ではなくガイドラインとして,国際協力の下に,具体的項目を設定しようと決議された。
わが国においては,まだCSRについてのコンセンサスが十分に形成されていないが,経済産業省としては,世界の一般社会で高まりつつある「企業の社会責任」への希求に対応するため,企業の自律的で,持続的発展を支援するための環境整備,普及啓発,インフラ整備を行おうとしている。
(くろだ・いさお=日本ヒューマンファクター研究所)