| 労働の科学 労働科学 書籍・雑誌のご注文&ご案内 |
59巻(2004年)
|
<俯瞰(ふかん)>キャリア形成に向けた職業訓練 八幡 成美
乾 彰夫:若者の〈学校から仕事へ〉の移行をめぐる困難と職業訓練
逢見 直人:「日本版デュアルシステム」の推進
厚生労働省:「日本版デュアルシステム」の導入について
北條 哲男:“ものづくり”教育による“テクノロジスト”の育成
今井 拓:建設業における新しい職業訓練の必然性と矛盾〜「東京建築カレッジ」の実践を通じて考える〜
<Talk to Talk>肝付 邦憲: 静寂の中の語らい
<産業医学いまむかし(21)>野村 茂: 化繊工業と二硫化炭素中毒
<産業保健の新潮流 〜自主・自律の時代へ〜(6)>仲尾 豊樹:地域での“参加型トレーニング”の展開〜中小零細事業場の中から〜
<現代英国労働の現在(3)> 石井 まこと:英国における雇用保障と働き方の多様化〜「柔軟な企業」モデルの現在〜
<新しい働き方を探る(10)> 水野 基樹:ストレス・マネジメント
<学会レポート>久保 智英:よりよく疲れてよりよく眠るために〜第18回 APSS会議に参加して〜
<労働衛生コンサルタント事務所の窓辺(12)>木田 哲二: 学会レポート(……夜の)〜日本産業衛生学会その1〜
<cinema>母に捨てられた子どもたちの漂流生活――『誰も知らない』(百瀬しのぶ)
<information and news>
労働組合と安全衛生国際フォーラム
労働科学研究所実務セミナー<大学・研究機関の労働安全衛生管理のすすめ方>
労働科学研究所実務セミナー<いますぐ使えるメンタルヘルス対策>
寄付金のお願い
第39回人類動態学会開催
若年失業率が高水準で推移している。あらためて言うまでもなく,長期不況の影響が最も大きいのだが,その背景には労働力需給のミスマッチがある。つまり,企業はグローバル化や技術革新に対応し,企業業績を維持できるだけの生産性を確保する必要から,その手っ取り早い手段として総額人件費の抑制に走る企業が多い。世界的な傾向ではあるが,規制緩和の追い風に乗り,雇用形態を多様化したうえで,需要変動への柔軟性を確保しようとの動きが強まっている。それが派遣,パート,契約社員など非典型雇用を拡大させ,これが一方で,正規雇用の求人を著しく減少させ,求人・求職の不適合を拡大させている。なかでも,新規学卒者の採用抑制が長期にわたり続いたことから,大卒就職率は55.1%(2003年)にまで低下し,若年無業者の増加が続いている。
少子化の中でも,高学歴志向が相変わらず根強いのだが,若者の勤労観,職業観の未熟さ,職業人としての基礎的資質・能力の低下などが指摘されている。それは,就職試験に直面するまで,現実の産業や職業,労働市場についての知識を学ぶ機会が少ないことから,現実のショックに適応できないことにも原因がある。一方,アルバイトとして働いてもそこそこの生活は維持できることから,卒業後も自分探しを続ける若者が相変わらず多い。キャリア探索の理念と現実との間の情報ギャップが大きく,これを埋めるべきキャリア教育を軽視してきたツケでもあろう。近年になってやっと,学校から職場への移行について社会的関心が高まり,インターンシップや実務経験を組み込んだ日本版デュアルシステムなどまで広げたキャリア教育関連の施策が強化されてきており,その効果が期待される。
従来型の職業教育・訓練では,専門的な知識・技能の習得のみに重点がおかれ,個人のキャリア発達を支援するとの観点が不十分であった。社会人・職業人として自立し,時代の変化に力強くかつ柔軟に対応していける人材を育成するには,プレゼンテーション能力,コミュニケーション能力や職業倫理など,幅広い知識・能力や職業的規範の形成を支援するキャリア教育にする必要がある。
現実の社会で求められる職業能力は,実際に仕事ができる能力であり,職業資格は入職口でのレベルを示すものにすぎない。もし,損益計算書が読めたとしても実務経験がなければ経営分析やコンサルティングの仕事はできないのである。そう考えると,長期的なキャリア形成を支援する職業教育・訓練とは,単なる知識・技能の習得に加えて,持続的なイノベーションを可能とする問題解決・改善能力,創意工夫の能力,思考力などを生涯にわたり磨いていくことと言え,職業訓練のシステムもそのような部分を強化していく必要があるだろう。
(やはた・しげみ=法政大学キャリアデザイン学部・教授)