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59巻(2004年)
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<俯瞰(ふかん)>安全技術の伝承 坂 清次
飯田 裕康:安全技術をどう継承するか
浅見 芳男:生産現場からみた安全技術力の伝承
千葉 清則:新日鐵における安全技術の伝承
葛城 三郎:技術者に求められる専門性と総合力〜安全技術向上へ二兎追う企業〜
<Talk to Talk>肝付 邦憲:安全は熟練技能からの贈りもの
<産業医学いまむかし(19)>野村 茂:職業性炭疽症のこと
<産業保健の新潮流 〜自主・自律の時代へ〜(4)>荒木 郁乃:製造現場における労働安全衛生マネジメントシステム
<現代英国労働の現在(2)>石井まこと:英国労働運動の復活? 〜公共サービス部門の争議活性化をめぐって〜
<働く女性を取り巻く環境(6)>中村 艶子:働く理由〜男女共同参画社会に関する国際比較調査(内閣府男女共同参画局)より〜
<新しい働き方を探る(9))>水野 基樹:チームビルディング
<海外だより> 原 邦夫:大きく変わる中国を感じた
<話題> 施 桂栄:「緊急セッション 大災害化を防げ!」を聴いて
<調査レポート> 小林 謙一:介護事業の経営主体と人事・給与管理 〜法人などの種類別比較〜<中>
<労働衛生コンサルタント事務所の窓辺(11)>木田 哲二:パパの仕事って何?
<cinema>激動の人生を生き抜いたオモニの姿に感動――『HARUKO』(百瀬しのぶ)
<労働科学のページ>プロトコル分析による自動車運転時の判断過程の分析(北島洋樹 ほか)/日本で市販されている保護手袋における4種類の有機溶剤に対する浸漬試験と透過試験結果の比較(英文)(宮内博幸 ほか)/生力学モデルによる草刈り作業時の人体負荷解析(奥本泰久 ほか)/粉塵衛生のあゆみ(第2報)―1960年(昭和35年)以降―(木村菊二)
<books>上司と部下の深いみぞ パワー・ハラスメント完全理解(新甫條利子)
<information and news>寄付金のお願い
産業事故の多発が社会の関心を集め,新聞などマスコミ報道・論調が原因に言及している。果たして事故の多発は偶発現象なのか,あるいは今後の動向を暗示する根本問題なのか。ある経済誌は「ニッポンの現場が危ない―苦悩する工場長227人の本音」と題した特集号で,現場力の低下の背景に安全技術の伝承と教育体制の不備があるとし,経済産業省の「産業事故調査結果の中間取りまとめ」,産業事故災害防止対策推進関係省庁連絡会議の「産業事故災害防止対策の推進について―関係省庁連絡会議中間取りまとめ」および厚生労働省の「大規模製造事業場における安全管理に係わる自主点検結果について」のいずれも安全技術の伝承に着目している。この問題を考えるヒントを提供したい。
安全技術を5W1H,とりわけWhat,Who,WhereおよびHowから考察しよう。
まず安全技術とは何か。形式知なのか暗黙知か,とかく話題になるマニュアルの問題か,それらの実際の場面への適用または応用なのかはっきりさせる必要がある。
つぎは誰の問題なのか。現場労働者なのか,技術者なのか,経営トップなのか。製造業における生産労働者の構成が変化し,中間層の減少と団塊世代の高齢化に伴う伝承に原因を求めている論調が多い。しかし,ベテランが事故に関わっていることも事実である。退職は昔からあることであり,大量退職にしても予見可能なことがらである。財務上では退職金引き当ては常識であり,同じように人的資源の維持・確保は当然経営トップの責務である。
そこで場と方法が問題になってくる。技術上優位なベテランから比較的劣位な若手への,一方向的な伝達に問題点があろうか。否,ベテランも若手とともに学ぶ,技術伝承の場として教育的職場環境の醸成が重要である。それにより組織としての安全技術の共有とレベルアップが可能となる。
圧倒的な技術格差を背景とした優位性のある側から劣位集団への伝承は,ふつう技術移転といわれるが,この場合においても互いに学ぶことを通じた共感が良好な環境を作り出す。伝承すべき技術は,静的なものではなく,教え学ぶ双方向的作用による動的なものである。成長産業では,組織は拡大を続けるために絶えず新人を受け入れ,促成ともいえる環境で技術が伝承されている。そこでは,全体としては一見技術は希釈ないしは低下の怖れをはらみながら,実は進歩・成長しているのである。逆に成熟ないしは停滞した組織では,維持という名の下に退行減少が生じ,ベテランが事故を起こす例が散見されるのである。
少ない偶発現象から,一般論ないしは予断を持って即断することは危険である。OHS-MSの中でリスクを精査し,起きた事故などの真因を究明・調査することにより,真の事故防止が図られよう。当事者による地についた事実認識をベースに,経営トップから第一線に至るまでPDCAサイクルの中で,安全技術の伝承も含めて対応するしかない。
(さか・きよつぐ=(財)労働科学研究所・協力研究員)