財団法人労働科学研究所ホームページ出版労働の科学59巻3号
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59巻(2004年)
3号目次

表紙「new horn/new spiral head」 drawing by itaru itard

特集:働くことと交通事故

<俯瞰(ふかん)>三戸 秀樹:交通災害低減への基本的視点
松永 勝也:自動車運転者の安全運転教育・指導法
小道野英二:日産自動車の職場を主体とした交通事故防止活動への取り組み
竹淵 久春:前川製作所グループの自動車安全運転指導法
篠原 一彰 ・松本 昭憲:ERからの提言 〜交通事故の実態調査から〜

<産業医学いまむかし(15)>野村 茂:労働とエネルギー代謝測定
<トピックス>田中 幸子:医療従事者の派遣開始 〜その課題〜
<話 題>上田 晴美:肥満対策を通して医療費抑制を目論む
<ロンドン見聞録(4)>鷲谷  徹:ロンドンの秋
<ポイント>初見 智恵:元気な女性の働き方・暮らし方・生き方
<働く女性を取り巻く環境(4)>中村 艶子:「ウィメンズフォーラム2003」シンポジウム『働く女性が日本を変える〜21世紀の企業と社会〜』より
<Talk to Talk>肝付 邦憲:納得ずくの働き方
<IT産業の舞台裏(12)>サトウヨシフミ:昼寝
<労働衛生コンサルタント事務所の窓辺(7)>木田 哲二:ある合意
<シリーズ・防護服(5)>労働災害から作業者を守る防護服 (井口成美)
<cinema>社会から阻害された男女の純粋な恋愛――『オアシス』(百瀬しのぶ)
<労働科学のページ>大型トラックによる夜間長距離走行時の眠気発生に伴う瞬目・眼球運動指標の変化(鈴木一弥 ほか)/医療事故防止を目的としたインシデントレポート書式の検討―現在のレポート書式の問題点と与薬のプロセスを明らかにする新書式の評価―(神戸美輪子)/新入社員の自覚疲労に関する研究(第1報)―立位作業姿勢を主とする新入高卒女性従業員における自覚疲労の推移(熊澤光正)/鉄骨建方作業の実態の記述(小松英海)
<books>睡眠学 眠りの科学・医療薬学・社会学(久保智英)
<information and news>寄付金のお願い

交通災害低減への基本的視点
三戸秀樹

 昨2003年におけるわが国の年間交通事故死亡総数は7,702人となり,死亡者数は減少していると言われた。しかし本当に,交通事故は減少傾向を示しているのだろうか。かつての交通戦争とまで言われた30余年前の1970年,交通事故死亡数は16,765人あった。しかし,1970年の交通事故死傷者数は997,861人であった。ところが1999年以降,死傷者数は100万人を越えており,決して減少傾向とは言えない。一体この年間,死者数減少に寄与したものは何だったのだろうか。
 わが国で使われる交通事故統計は,警察庁のもので,その死亡定義は,交通事故発生から24時間以内の死亡である。交通事故の被災者を24時間と1秒でも生かすことができれば,その交通事故は死亡事故件数としてはカウントされないのである。
 厚生労働省の採用している交通事故死亡は,24時間以内に制約されることはない。厚生労働省の把握していた1970年の自動車交通事故死亡数は21,250人であった。これは警察統計値に1.27倍すると厚生労働省の値となる。最近の2001年で計算すると,この倍率は1.42となる。つまり交通事故死者数低下において,30年間の救命救急医療技術の発達が大であったと考えられる。
 全産業における労働災害死亡のうち,交通災害死亡は30%余りを占め,労働災害の最大テーマとなっている。全産業における年齢階級別死亡構造は,バスタブ型で,中年層の事故・災害発生が最も少なく安定した年齢層であると言える。しかし自動車運転を生業とする,トラックドライバーの年齢階級別死亡構造は,逆バスタブ型を示している。安全に対して知識,体力,気力も充実している年齢層の人たちが,最も多く亡くなっているのだ。この死亡構造の特異な特徴は,一体何を意味しているのだろうか。
 中年トラックドライバーの多くは,プロの運転手である。しかしその事故調書に,「前方不注意」と記してあることは信じ難いことである。事故の恐ろしさを知っているプロが前方不注意,ではないのである。いつもの高速道の料金所で,ノーブレーキ状態の追突事故をおこし,調書には前方不注意と書いてあるのだ。プロは,運転免許持ち点の減点を多くしない答え方を知っている。これまでのような,交通事故の型別解析とその型別対策に終始している限り,職業ドライバーに対しては真の事故防止対策へ肉薄することができないのである。すなわち,現象的事故対策からより本質的事故対策へと,事故防止対策を移行させる必要性がある。ここにおいて,職業ドライバーの労働条件のなかへ,事故を誘発させる要因を掘り下げる必要性を感ずるのは私一人だけだろうか。
(みと・ひでき=関西福祉科学大学・教授)


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