| 59巻(2004年)
2号目次
特集:女性の働き方 これから……
<俯瞰(ふかん)>堀内 光子:ジェンダーの主流化
浅倉むつ子:女性差別撤廃条約 〜CEDAWコメントをめぐって〜
中野 麻美:女性労働をめぐる法的諸問題
久本 憲夫:多様な正社員を求めて
竹信三恵子:女性労働の実態と今後の展望 〜次々作られる「平等の外」の働き手 行き詰まり打開する間接差別の規制〜
秋山 典子:女性の能力開発への取り組み 〜事例1:損保ジャパンのウィメンズコミッティ活動〜
高澤 知子:女性の能力開発への取り組み 〜事例2:GEグループのウィメンズ・ネットワーク・ジャパンの活動〜
<産業医学いまむかし(14)>野村 茂:産業医学と軍医たち
<トピックス>城内 博:GHS(化学品の分類と表示に関する世界調和システム)への期待
<労働者の健康増進策のニューウェーブ(6・最終回)>久野 譜也:地域および職域の健康づくり
<木をみて,森をみる(1)>諏訪 良子:保健師の1日
<男女共同参画社会に向けて(4)>中村 義彰:自治体消防職場における女性消防職員の参画
<シリーズ・環境問題と社説(1)>肝付 邦憲:社説を通して環境問題を共有する その1―序章
<労働衛生コンサルタント事務所の窓辺(6)>木田 哲二:誤解
<シリーズ・防護服(4)>生物・化学テロ対応の気密形防護服と化学薬品・粉塵対応の密閉形防護服(井口成美)
<cinema>リストラされた元エリートが保育園をオープン!――『チャーリーと14人のキッズ』(百瀬しのぶ)
<music>ロシア VS 中国 娘。編(しかのあきこ)
<books>隅谷三喜男著作集(内海健寿)
<information and news>ワークサイエンスニュース
ジェンダーの主流化
堀内光子
「ジェンダーの主流化」とは,ジェンダー平等を推進するための,グローバルに受け入れられた戦略である。したがって,ジェンダーの主流化はそれ自体が目的ではなく,目標達成の戦略,アプローチ,手段と言えるものである。1995年に北京で開催された第4回世界女性会議で,初めて変革のための戦略として確立された。それまでは,女性の地位向上(90年代初めからジェンダー概念が登場する)のための制度(法制度も含めて),組織の確立・整備(制度の場合には,実効ある推進も)が戦略であった。97年,国連経済社会理事会で,その定義がなされるとともに,全国連機関の活動のガイドとして採択された。すなわち,「ジェンダー視点の主流化とは,あらゆる領域・レベルで,法律,政策,およびプログラムを含む計画されているすべての活動で,男性および女性への関わりを評価するプロセスである」。EU(欧州連合)も先立つ96年,ジェンダーの主流化戦略を採択していた(ILOは99年策定)。
この戦略の効果の一つは,ジェンダーが分野横断的課題との認識が高まったことである。たとえば,国連の場でも今までジェンダー問題として取り扱われなかった分野にも取り組みがみられるようになった。その一好事例として,PKOへのジェンダーの組み入れなどを要請した2000年の安全保障理事会決議がある。この決議を受けて国連軍縮局は,03年4月にはジェンダーの主流化行動計画を策定している。もう一つは,意思決定レベルへの女性の参加の促進がより積極的に進められるようになったことである。たとえばILOでも1999年,2010年までに事務局内での専門職の50%を女性が占めるという目標が掲げられた。
では,どうやってジェンダーの主流化を図るのか。まず,ジェンダー格差および不平等についての現状とその原因を明らかにし,改善のために取るべきアプローチとそのための機会の究明という,すなわちジェンダー分析を行わなければならない。このための前提として,男女別データ・情報が必要であるが,開発途上国では客観的情報欠如が大きな制約となっている。さらに,政策についても,男女でのインパクトの違いなどのジェンダー分析が必要であることは言うまでもない。
第二に,各組織での制度的整備やキャパシティ構築が不可欠である。すなわち,ジェンダーの主流化の理解とコミットメント(特に幹部,トップ層での),ジェンダー分析能力やスキル,担当部署の設置,政策などへの参加型のメカニズム,情報・データ,調査の保持などである。キャパシティを高めるために,職員のジェンダー訓練は重要である。
第三に,モニタリング。最後に,ジェンダーは女性問題ではないし,生物学的な「男女の性」を問題にしているのでもない。男女の社会的に構築された違い(多くは格差と言える),を問題にしているのである。その意味で,ジェンダーの主流化は,きわめて幅の広い分野に男女の視点を取り入れる野心的な戦略と言えよう。
(ほりうち・みつこ=ILO駐日代表) |