「労働の科学」64巻10号
64巻(2009年)
10号目次
特集:メンタルヘルス不調者の職場復帰
俯瞰(ふかん)
島 悟[神田東クリニック]:メンタルヘルス不調者の職場復帰
鈴木安名[労働科学研究所]:職場復帰のポイント
峰 隆之[第一協同法律事務所]:職場復帰と法律問題~私傷病休職規定について~
村上 稔[労働衛生コンサルタント]:産業医にとっての復職判定
山岡直人ほか[三和シヤッター工業(株)]:人事担当者中心のメンタルヘルス対策
鈴木一郎[一職場復帰者]:一職場復帰者の証言
職場で色を考える(3)
真家和生:色覚変異に対する職場での適切な対応
ILOこぼれ話(30)
川上 剛:ああフランス語!
学会レポート
高橋悦子・吉川 徹・仲尾豊樹・Myung Sook Lee:参加型改善活動の展開と普及にむけて~日韓参加型産業保健トレーニングワークショップ開催報告~
産業医徒然語り(10)
ツァンイェイ:健康管理サービスのクライアントって?
オランダだより(7)
長須美和子:カルチャー・ギャップ
知りたい てくのロジー(55)
増田忠英:廃熱から電気をつくる~「熱電発電」と「スターリングエンジン」の技術~
企業に生かすスポーツ心理学(19)
水野基樹:チームの和と集団浅慮
話題
岩田恭:大学職員のためのメンタルヘルス教育の重要性
産業安全保健エキスパート養成コースNEWS
産業安全保健エキスパート養成コース~第7期受講者の声〈3〉~
大原コレクション散策
『コップと瓶』ホワン・グリス・作/柳沢秀行・解説
Cinema
百瀬しのぶ:イスラエル発,衝撃のアニメーション・ドキュメンタリー――『戦場でワルツを』
からだいい“いいからかん”料理(43)
長須美和子・小田島玉惠:揚げたて・アツアツ ガーリック・ポテト!
Information & News
ワークサイエンスニュース
Books
織田 進:医師が患者になるとき
俯瞰(ふかん):うつ病者の社会復帰をめぐる諸問題 島 悟
うつ病者の社会復帰に関しては、大きく二つの課題があります。第一は、「うつ」「抑うつ状態」「うつ病」などの概念や診断が混乱しているという問題です。第二の社会復帰については二つの課題があります。現在職についてない方が新たに職を得るという「就労」と、現在休業中の方が職場復帰するという「復職」という二つの課題です。最近、精神障害者の雇用が徐々に進み、うつ病者が障害者枠で新規雇用される事例が増えています。こうした複数の課題がありますが、この特集では、「うつ病」者の「職場復帰」について検討しています。
職場復帰については、2004年に厚生労働省は「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を示しました。その後、大企業を中心とする職場ではこの手引きを参考にして職場復帰支援プログラムを作成してきました。2009年3月には改訂版(http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei28/ index.html)が出されています。心の健康問題により休業している労働者が増加しているとする現状があり、休業後の職場復帰支援がスムーズに進まないという状況があるとの現状認識に基づいて、改訂作業が行われました。最近、復職支援を行っている某機関で、昨秋以来復職率が極端に低下してきているという話を聞いています。復職者を受け入れる職場が門戸を厳しくしているのではないかと懸念しています。上記の手引きは、復職支援の段取りを示したものであり、事業者にとっても、労働者にとっても、有益なものであると考えていますが、その運用の仕方によっては、復職へのハードルを高くも低くもできる可能性があります。産業医など事業場の専門家が、手引きが適切に運用されるように事業者美および労働者に助言指導されることを期待するところです。
うつ病において、当然ながら、その前提となるうつ病およびアルコール依存症などの併存障害の正しい診断と適切な薬物療法や心理療法が行われることが重要です。また当事者が自分の状態と問題を主治医に十分に伝えて、治療を遵守することが大切です。さらに当事者は主治医と相談しながら、職場復帰に向けて、自ら主体的にリハビリテーションを行うことが求められます。休業期間の前半はしっかり療養すること、後半は職場復帰に向けて訓練をしていただきたいものです。
さらにうつ病になった契機として職場関連の要因があれば、職場で復職に向けて対応していただく必要があります。仕事や生活の仕方に課題があるとすれば、当事者が専門家の助けを借りて修正することが望まれます。
職場復帰支援は、「精神科リハビリテーション」と「職業リハビリテーション」の流れを適切に踏まえた包括的なものであると考えています。最近、障害者職業センターなどさまざまな機関で、復職支援(リワーク)プログラムが提供されるようになってきました。しかし残念ながら、二つのリハビリテーションの観点を併せ持つプログラムは少ないのが現状です。また復職においては事業場内資源(特に産業医など産業保健スタッフ)との連携が非常に重要ですが、不十分な場合が少なくありません。復職を成功裡に導くには、事業場外資源と事業場内資源の継続的・有機的連携が最も大切であると考えています。
(しま・さとる=京都文教大学臨床心理学部・教授,神田東クリニック・院長)
















