「労働の科学」65巻6号
65巻(2010年)
6号目次
特集:地球温暖化とCSR
俯瞰(ふかん)
宇沢弘文[日本学士院会員]:持続可能な社会と地球温暖化対策
末吉竹二郎[国連環境計画・金融イニシアティブ]:企業の低炭素化への取り組み ~社会的責任から法的義務へ~
小島寛之[帝京大学]:環境に調和する経済学の構築をめざして
寺島修[関西電力(株)]:低炭素社会実現に向けた関西電力の取り組み
篠原道雄[本田技研工業(株)]:駆動力電動化加速の必要性と持続可能性
渡邊邦明[(株)神戸製鋼所]:神戸製鋼における新鉄源プロセスの進化
あの事故を斬る!(2)
細田聡:チャレンジャー号爆発事故
海で働き海で生きる(6)
大橋信夫:日本からギリシャまでの航海経過〈2〉シンガポール~ジブチ
企業に生かすスポーツ心理学(27)
水野基樹:「褒める」と「叱る」のメカニズム
ILO こぼれ話(38)
川上剛:ランカスカの女王 ~進むアセアン地域内協力~
トピックス
木下壽國:孤独死と向き合う〈下〉
障害のある女性の社会参加 ILO:“Count Us In!”翻訳(3)
Nature & Humans監訳:〈第3章〉インクルージョンを実現するシステムづくり〈1〉
オランダだより(15)
長須美和子:日本へ一時帰宅して
知りたい てくのロジー(63)
増田忠英:工場で野菜づくり ~普及が進む「植物工場」の技術~
産業安全保健エキスパート養成コース NEWS
産業安全保健エキスパート養成コース ~第9期受講者の声〈1〉~
大原コレクション散策
『マティス嬢の肖像』アンリ・マティス・作/柳沢秀行・解説
Cinema
百瀬しのぶ:昭和から平成へ~ 3代の女性たちの「選択の瞬間」とは?~―『FLOWERS』
からだにいい“いいからかん”料理(51)
長須美和子・小田島玉惠:ちょっぴりほろ苦・旬の味 そら豆の砂糖煮
Information & news
ワークサイエンスニュース
Books
肝付邦憲:CO2 削減はどこまで可能か 温暖化ガス-25%の検証
俯瞰(ふかん):持続可能な社会と地球温暖化対策 宇沢弘文
地球温暖化は、大気という、地球全体にとって大切な社会的共通資本をどのようにして管理するかという問題に関わる。このとき、経済的合理性と国際的公正という視点を充分考慮に入れて、大気均衡を安定的に保ち、しかも各国の持続可能な経済発展を実現するためにもっとも有効な政策的手段が比例的炭素税の制度である。 社会的、経済的な観点から炭素税のもっとも望ましい水準は、大気の帰属価格に他ならない。大気の帰属価格は、大気中の二酸化炭素の蓄積が自然的、ないしは人為的要因によって限界的に一単位だけ増えたときに、大気がもたらす自然的恩恵や人間の経済的、社会的、文化的側面での価値の限界的減少を評価したものである。大気中に排出された二酸化炭素は長い期間にわたって大気中に留まるから、現在から将来にかけての長い期間にわたって、この限界的評価を予測し、適当な社会的割引率で割り引いた割引現在価格を取らなければならない。このような限界的価値がもともと計測可能か、否かについても経済学者の間で見解の相違がある。ましてや、遠い将来のことについてはっきりした予測をすることは不可能である。しかし、社会的共通資本の理論を適用するとき、持続的経済発展の下における大気の帰属価格が一人当たりの国民所得に比例することを証明することができる(H. Uzawa. Economic Analysis of Social Common Capital, Cambridge University Press, 2005)。 比例的炭素税の制度の下では、化石燃料の消費に対して、排出される二酸化炭素の量に応じて炭素税を掛けると同時に、森林の育林に対しては、吸収される二酸化炭素の量に応じて補助金が交付される。 しかし、戦後60年有余を通じて、先進工業諸国と発展途上諸国の間の経済的格差は拡大する傾向をもち、南北問題はますます深刻化しつつある。もともと炭素税自体、発展途上諸国の経済発展を妨げるものであって、比例的炭素税の制度をとったとしても、南北問題に対して有効な解決策とはなり得ない。 地球大気の安定化をはかり、地球温暖化を効果的に防ぐとともに、先進工業諸国と発展途上諸国の間の経済的格差をなくすために、有効な役割をはたすことを期待されているのが、大気安定化国際基金の構想である。 大気安定化国際基金は、比例的炭素税の制度を使ったものである。各国の政府は、比例的炭素税の税収から育林に対する補助金を差し引いた額のある一定割合(たとえば5%)を大気安定化国際基金に醸出する。大気安定化国際基金は、各国の政府からの醸出金を集めて、発展途上諸国に配分するが、その配分方法は各発展途上国の人口、一人当たりの国民所得に応じて、ある一定のルールにしたがって行われるものとする。
(うざわ・ひろふみ=日本学士院会員)

















