理事長あいさつ
ごあいさつ
労働科学研究所理事長 塩谷隆英
去る10月1日付けで林雄二郎前理事長の後を受けて理事長に就任いたしました塩谷隆英でございます。伝統ある労働科学研究所の理事長に就任することは、まことに恐れ多いことではありますが、少しでも皆様方のお役に立つべく努力して参る所存ですので、よろしくお願いいたします。
私は、労働科学に関しては、専門家ではありませんが、研究所の理事長の経験は少し持っています。2000年2月から2006年1月まで総合研究開発機構(NIRA)の理事長を務めました。NIRAは、現代社会の諸問題を経済的、社会的、科学的な知識を総合して究明することを目的とした政府と民間が出資して作ったシンクタンクの振興機関でした。私が辞めたあと、小泉内閣の特殊法人等の改革の一環で政府出資が引き上げられて財団法人になりましたが、私がいたころは、特別の法律に基づいて設立され、内閣総理大臣によって認可された「認可法人」でした。その6年間には、いろいろな分野の学者、研究者と交流を深めました。国際シンポジウムを主催したり、海外のシンクタンクとの研究交流をしたりもいたしました。「学際性」、「総合性」という点では、当研究所とディシプリンにおいて共通するところがあり、全く別世界へ迷い込んだという気はしません。そうした経験が当研究所にも少しはお役に立つことがあるのではないかと思っております。
労働科学研究所のミッションの中心は、寄附行為にあるとおり、「事業経営の健全化、労働する者の福利の増進及び社会福祉の向上発展に資するために、各種事業場における労働の状況、条件及び環境並に労働者の資質、健康生活及び医事厚生に関する研究、調査等を行う」ことであると理解していますが、当今はやりの言葉で言えば、労働する者の「安全・安心」を確保するための手立てについて調査、研究することでしょう。
私は、2006年6月に出版した本に、「回転ドアやエレベーターの安全規制基準やマンションの耐震強度を総点検して生命の安全や生活の安心に関する規制基準の一段の強化を図る必要がある。安全率を一桁上げる方向で安全基準の見直しを図ることが必要である・・・」というようなことを書きました(拙著「経済再生の条件」(岩波書店)P229参照)。当研究所の研究テーマに即して言えば、「各種事業場における労働者及び労働環境の安全率を一桁上げる」ということになりますが、これが研究目標たりうるかどうか、一度所員の皆さんと議論してみたいと思っています。
この本を書いた当時は、小泉内閣の政策を引き継いだ安倍内閣の時代で、民営化、規制緩和一辺倒の風潮の中で、安全規制基準の安全率を一桁上げよという提言は、異端だったでしょうが、福田康夫内閣ができると「国民生活の安心・安全」が政策スローガンとなり「消費者庁」の設立まで進んだことは記憶に新しいところです。私は、民主党政権になって、この考え方は政策の中心に位置づけられたように思っています。その意味で、当研究所の役割も益々重要になってきたのではないかと考えますし、久々に「労研の時代」が到来したといっても過言ではないでしょう。しかしながら、公益法人を標榜する研究所たるもの、時の政権に右顧左眄するようなことは慎しまなければなりません。むしろ我々は、政権党の政策の重点変化をもたらした時代の変化をこそ注目すべきであり、時代の流れと世の中のニーズの変化に、常に敏感でなければならないということを強調したいと思います。
もとより、私は、科学者でも専門家でもありませんので、理事長としての私の役割は、研究者の皆様が心おきなく研究できるような環境を整えることだと思っております。そのために微力を尽くして参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
平成21年10月 塩谷隆英
歴任理事長あいさつ
林雄二郎(平成15年10月~平成21年9月)















