システム安全
研究員
- 主任研究員 細田 聡 (博・行動科学)(グループ長)
- 主任研究員 施 桂栄 (博・人間科学)
- 研究員 余村 朋樹
- 研究員 落合 信寿
- 研究員 藤掛 和広 (博・情報科学)
- 研究主幹 井上 枝一郎
- 特別研究員 菅沼 崇
研究グループの特色
ヒューマンファクタの観点から現場の安全問題解決を志向すると共に、研究成果の現場へのフィードバックを以下のような形で行っております。
- 研究・調査の立案段階から現場の人たちとチームを組んで取り組む
- 得られた成果は現場にフィードバックし、その妥当性を検証する
- 成果の明示・浸透・定着化のために進んで現場教育を実施する
- 常設的に現場とチームを組み、今後の動向と将来像の議論を行なう
- 短期的問題解決のため常設窓口を設けコンサルティングにあたる
人と機器の接点(マン−マシンインタフェース)の問題
最近のシステムおよび機器は、入出力接点においてのみ人間との関わり合いをもつかのごとく設計され、その内部メカニズムはブラックボックス化しています。したがって、これに起因したトラブルは、通常のオペレータにとっては対処困難な事象となります。こういった作業システムのあり方により、メンタルスキル・操作スキルの獲得および伝承の点において、いくつかの問題が発生しています。また、システムの論理が優先されるあまりに入出力インタフェースに関し、人の感覚・知覚・認知等に馴染みの薄い設計が顕在化しています。このような職場環境と作業従事者の生理・心理的世界とのミスマッチの問題を追究しています。
人と人との接点(マン−マンインタフェース)の問題
高度に自動化されたシステムに関わる情報は、冗長性や自由度を削ぎ落としたものが多くなっています。したがって、システム的コンテキスト(仕事のシステムに沿った文脈)を共有しない限り、情報伝達エラーが発生しやすくなっています。世代・キャリア・教育などの共通性が確保されないメンバー間ではいつでもコミュニケーションエラーが発生する可能性が内在しています。この問題にも早急な対策が必要とされています。
人の内面(マンヒムセルフ)の問題
高度成長期を経た現代の若者は、価値観多様化の時代背景もあり、独善的・自己中心的風潮の中で育ってきたと言われています。また同様な要因は、一方で自己の殻にこもりがちな個人をも生み出しています。彼らが伝統的なロジックで動いている職場に配置されている今日、彼ら自身のみならず受け入れ側においても様々なフラストレーションが発生しているとされています。これは世代観・労働観などを含めて、多面的なアプローチが必要とされるテーマとなって浮かび上がってきています。
組織・マネジメントの問題
上述の「安全」に対するヒューマンファクタの観点に加え、最近では、システム全体をマネジメントする組織上層部の機能的問題(経営・管理的問題)についても併せて取り組んでいます。組織の中に潜んでいるリスクを上層部がどの様に検知するのか、検知されたリスクに対してどう処置すべきであるのか。このような組織としての問題解決や意思決定のメカニズムの問題も非常に重要な視点としてクローズアップされてきています。現在、このような経営・管理的な問題によって引き起こされる事故は、特に「組織事故」と呼ばれています。
重点研究課題
ヒューマンファクタの視点に立った安全確保のためのシステム構築
従来から行われてきた技術的対策と人的対策により、確かに産業事故は飛躍的に低減しました。しかし、未だその種の対策では低減しえない部分が取り残されており、新たな視点の導入が模索されています。このような状況の中、最近では組織を取り巻く外部環境や組織の文化、さらには組織の経営管理上の問題などにも焦点を当てることの必要性が指摘されはじめています。なぜならば、このようなマクロな組織内外要因こそが設備の不具合やヒューマンエラーといった顕在的な過誤を誘発していることが分かってきたからです。このような議論をふまえ、この研究課題では組織の安全文化レベルを測定するためのツールの開発や広範な組織内外要因により引き起こされる産業事故の発生プロセスを明確化するとともに、産業分野の特殊性やシステムごとの特性をふまえた事故分析手法の確立を目指します。そして、これらの検討プロセスを経て、安全管理の新たな枠組みを提供し、実効性の高い安全対策の立案手順を提言したいと考えています。
- 組織の安全文化評価支援ツールの実用性の検討
- 産業事故発生プロセスの解明のための組織信頼性評価とその方法の検討
- 業務特性を踏まえたトラブル・インシデントに関する情報収集・分析システムの実効性の検討
最近の主な研究課題と研究成果
- プラントオペレータのチームワーク力向上の施策立案
- 緊急時におけるヒューマンファクタの認知心理学的研究
- ロシア原子力発電所運転員の安全教育教材の開発と実施
- ヒューマンファクタに関する教育プログラムの開発と実施
- 組織開発および安全文化に関する教育プログラムの開発と実施
- 災害防止に関わる情報収集と解析手法の開発と実施
- ヒューマンエラーによるトラブル事例の原因調査分析と対策の立案
- 安全文化評価支援ツールの開発と実践
- 組織事故モデルの開発と実践
参考文献
1. 井上枝一郎, 細田聡「組織と個人とヒューマンエラー」大山正他編「事例で学ぶヒューマンエラー」麗澤大学出版会.2006.
2.井上枝一郎,「組織文化の醸成と事故・災害の防止」電気評論,2006;91(5):
3.井上枝一郎「企業倫理と安全文化」労働の科学、2006;61(12)
4.菅沼 崇、細田 聡、施桂栄、井上枝一郎「組織事故モデルによる事例分析の試み」労働科学、2006;82(2)
5. 井上枝一郎、「労働科学研究所が進める中国との国際協力」労働の科学;2006:61.
6. 余村朋樹、細田聡,施桂栄、奥村隆志、三島斉紀、小山、井上枝一郎,「原子力発電所の職場における繁忙感について」第22回産業組織心理学会大会論集 2006.
7.奥村隆志、余村朋樹、細田聡,施桂栄、三島斉紀、小山、井上枝一郎,「産業組織体における安全文化の経時変化の把握」第73回日本応用心理学会大会論集 2006.
8.菅沼崇、細田聡、施桂栄、井上枝一郎「組織事故モデルによる事例分析の試み」、労働科学、2006、82(2).
9. 井上枝一郎、「最近の労働災害の特徴について」法政大学大原社会問題研究所雑誌2005(549).
10. 井上枝一郎(編著)、細田聡、「心理学と産業社会とのかかわり」八千代出版、2003.















